意味
「不見転(みずてん)」とは、手当たりしだいに、後先を考えずに物事を行うという意味です。
また、芸妓などが金しだいで相手を選ばずに身をまかせること、またその芸妓を指す語としても使われてきました。
語源・由来
この呼び方は、花札(花ガルタ)の遊び方を指す言葉として生まれました。
自分の持ち札や場の状況をよく見ないまま、手当たりしだいに札を出す打ち方をこう呼び、そこから転じて、後先を考えずに物事を行う様子全般を指すようになりました。
芸妓を指すもう一つの語義は、花札の「みずてん」の「てん」に、芸妓がひそかに売春することを指す「転ぶ」の「転」の字音を掛けたものだという説があります。
使い方・例文
現在使われるのは主に「後先を考えない」という意味で、軽率な行動をたしなめる場面で使われます。
- 彼は不見転で新事業に手を出し、大きな損失を出した。
- 深く考えもせず、不見転で契約書に判を押してしまった。
使うときの注意
「不見転」の二つ目の意味は、芸妓などを「金しだいで誰にでも身をまかせる女」と呼ぶ語です。
女性を性的なふるまいで値踏みし、身持ちが悪いと決めつけて見下す呼び名なので、実在の人に向ければ強い侮辱になり、現在の感覚では差別的な含みを持ちます。
この意味で使うのは、江戸時代以来の花柳界(=芸者などが働いた社交の世界)の慣習を説明するときや、この語が登場する古い文献を読み解くときなど、歴史的な事実として扱う文脈にとどめるべきです。
「後先を考えずに事を行う」という意味は今も使えますが、人、特に女性について「あの人は不見転だ」と言うと二つ目の意味に受け取られるおそれがあるため、「不見転で契約する」のように行動について使います。
類義語・関連語
この言葉と同様に、後先を考えない行動を表す言葉には、次のようなものがあります。
- 向こう見ず(むこうみず):
結果を考えず、大胆に物事を行う性質。 - 無鉄砲(むてっぽう):
結果を予測せず、思うままに行動すること。 - 行き当たりばったり(いきあたりばったり):
前もって計画を立てず、その場のなりゆきに任せること。
「不見転」と類義語の違い
四つの言葉はいずれも先のことを考えない様子を表しますが、重心の置き方が異なります。
| 語句 | ニュアンス |
|---|---|
| 不見転 (みずてん) | 見境の無さそのものに重心がある |
| 向こう見ず (むこうみず) | 結果を考えない大胆さに重心がある |
| 無鉄砲 (むてっぽう) | 深く考えずに行動へ移す性急さに重心がある |
| 行き当たりばったり (いきあたりばったり) | 計画性の無さ、その場任せに重心がある |
対義語
反対に、用心を重ねてから物事を行うことを表す言葉には、次のようなものがあります。
- 石橋を叩いて渡る(いしばしをたたいてわたる):
丈夫な石橋でも、念のためたたいて安全を確かめてから渡るように、用心のうえにも用心を重ねて物事を行うこと。
英語表現
英語では、後先を考えない行動を次のように表します。
throw caution to the wind
慎重さを投げ捨て、結果を顧みずに大胆な行動へ踏み切ることを表す言い回し。
He threw caution to the wind and quit his job to travel.
(彼は後先を考えず、仕事を辞めて旅に出た。)
with reckless abandon
結果を顧みず、勢いのままに大胆な行動をとる様子を表す表現。
She spent her bonus with reckless abandon.
(彼女はボーナスを後先を考えずに使った。)
「不見転」の花札は、禁じられた賭博かるたの偽装品とされる
「不見転」の語源になった花札(花ガルタ)は、賭博に使われたかるたの禁令をかいくぐるために作られたとする説が有力です。
江戸時代に庶民に広まった天正かるたは「めくり」などと呼ばれて賭博に使われ、幕府はたびたび禁令を出し、18世紀後半の寛政の改革では賭博系のかるたが全面的に禁じられました。
そこで、天正かるたの48枚を12種4枚に組み替え、絵柄を教育用の「花鳥合せ」から取り入れて、花鳥風月を描いた札に仕立てたと考えられています。
初期の花札に古歌が書き添えられていたのも、歌がるたに見せかけるための工夫とみられています。
それでも花札は取り締まりの目を逃れられず、大坂の年代記『摂陽奇観』の文政2年(1819年)の項には「当春花合停止」とあり、1831年(天保2年)にも禁令が出ています。
明治政府も初めは禁止を続けましたが、外国からトランプが輸入されて自由に販売されるようになると禁令は解かれ、1902年には骨牌税が施行されて、花札は課税の対象になりました。


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