意味
「錦の御旗(にしきのみはた)」とは、自分の行いや主張に権威を持たせるために掲げる名分のことです。
名分は、行動の表向きの理由や名目のことです。
もとは、朝廷に背く者を討つときに官軍が目印として掲げた旗を指し、この旗にたとえて、人に対して自分の側の正しさを示すために持ち出す理由を言うようになりました。
- 錦(にしき):色糸や金銀の糸で模様を織り出した、厚地の絹織物。
- 御旗(みはた):旗をうやまっていう語。
語源・由来

この言葉は、もとは旗そのものの呼び名です。
赤地の錦に、太陽と月(日月)を金銀で刺繍したり描いたりした旗で、朝敵(= 朝廷に背く者)を討つとき、官軍(= 天皇の命を受けた軍)の旗印として用いられました。
錦旗とも呼ばれます。
承久の乱(1221年)のとき、後鳥羽上皇が官軍の大将に与えたのが最初といわれ、その後も反乱を討つときには官軍の大将に与えられました。
この旗を掲げる側が天皇の軍になるところから、自分の主張を権威づける名分の意味が生まれました。
使い方・例文
「〜を錦の御旗に掲げる」「〜を錦の御旗とする」のように、何を名分にしているかを「を」で示して使います。
- 経営陣は「働き方改革」を錦の御旗に掲げ、残業の削減を一気に進めた。
- 「安全のため」を錦の御旗にされると、現場は反論しにくくなる。
- 地域の活性化を錦の御旗とする再開発に、住民から疑問の声が上がった。
類義語・関連語
名分の意味では「大義名分」、旗の意味では「錦旗」が近い語です。
- 大義名分(たいぎめいぶん):
行動のよりどころとなる、正当な理由や根拠。 - 錦旗(きんき):
官軍の旗印としての、錦の御旗の別名。
「錦の御旗」と「大義名分」の違い
どちらも行動の理由になる名分を指すため、同じ場面で使われます。
「大義名分」は正当な理由そのものを指すのに対し、「錦の御旗」は、その名分を相手に向けて掲げ、自分の主張に権威を持たせるところに重みがあります。
戊辰戦争の錦旗は東京国立博物館に現存
1868年(慶応4年)の鳥羽・伏見の戦いから始まった戊辰戦争では、新政府軍が錦の御旗を掲げ、自分たちが官軍であることを示しました。
このとき明治天皇から与えられた錦の御旗は、東京国立博物館に残っています。
国立公文書館には、新政府軍が用いた錦旗や軍旗を精密に写した図『戊辰所用錦旗及軍旗真図』も所蔵されています。

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