故事成語の多くは、古代中国の歴史的な出来事や逸話から生まれ、教訓や人生の知恵を短い言葉で言い表しています。
日本人として知っておきたい有名な故事成語を70個厳選し、意味や由来をそえてジャンル別に一覧で紹介します。

故事成語とは?意味と由来をわかりやすく解説
故事成語(こじせいご)とは、主に古代中国の歴史的なできごとや古典に由来し、教訓や人生の知恵を短い言葉で言い表した成句のことです。
「故事」は昔から伝わるいわれのある出来事を、「成語」は古人が作り広く使われるようになった言葉を指します。
たとえば「矛盾」「蛇足」「四面楚歌」などは、いずれも中国の故事をもとに生まれ、現代の日本語でも日常的に使われています。
ことわざが庶民の生活体験から生まれた教訓であるのに対し、故事成語は古典や歴史上の具体的なエピソードという「出典」を持つ点が大きな特徴です。
由来となった物語を知ると、言葉の意味がぐっと深く理解できます。
有名な故事成語70選【一覧】
この記事で紹介する有名な故事成語70語を、テーマ別に一覧でまとめました。
気になる言葉の意味や由来は、下の各項目でくわしく解説しています。
| テーマ | 故事成語(全70語) |
|---|---|
| 人生・教訓 | 矛盾/蛇足/塞翁が馬/五十歩百歩/画竜点睛/臥薪嘗胆/大器晩成/四面楚歌/背水の陣/漁夫の利/虎穴に入らずんば虎子を得ず/朝三暮四/杞憂/他山の石/玉石混淆/推敲/登竜門/羊頭狗肉/温故知新/完璧/蛍雪の功/捲土重来/助長/白眉/覆水盆に返らず/竜頭蛇尾/守株/鶏鳴狗盗/石に漱ぎ流れに枕す/井の中の蛙大海を知らず/一炊の夢/角を矯めて牛を殺す/羹に懲りて膾を吹く/孟母三遷 |
| 人間関係 | 呉越同舟/傍若無人/虎の威を借る狐/逆鱗に触れる/三顧の礼/水魚の交わり/刎頸の交わり/管鮑の交わり/知音/肝胆相照らす/君子は豹変す/鶏口となるも牛後となるなかれ/白眼視/門前雀羅を張る/烏合の衆/出藍の誉れ/馬耳東風/牛耳を執る |
| 努力・行動 | 百聞は一見に如かず/千里の道も一歩から/切磋琢磨/愚公山を移す/木に縁りて魚を求む/破天荒/破釜沈船/隗より始めよ/顰みに倣う |
| 状況・状態 | 破竹の勢い/五里霧中/風前の灯火/危急存亡の秋/杜撰/圧巻/断腸の思い/怒髪冠を衝く/明鏡止水 |
人生・教訓に関する有名な故事成語
矛盾(むじゅん)
- 意味・教訓:
二つの事柄が食い違っていて、つじつまが合わないこと。 - 使用例:
「節約したいと言いつつ高級車を買う彼の行動は矛盾している。」 - 由来:
どんな盾も突き通す「矛」と、どんな矛も防ぐ「盾」を売っていた商人の話から。
蛇足(だそく)
- 意味・教訓:
付け加える必要のない、余計なもの。
かえって価値を損なうもの。 - 使用例:
「いいスピーチだったが、最後の自慢話は蛇足だった。」 - 由来:
蛇の絵を早く描く競争で、最初に描き終えた者が余計な足を描き加えて負けたという故事から。
「画蛇添足(がだてんそく)」とも言う。
塞翁が馬(さいおうがうま)
- 意味・教訓:
人生の幸福や不幸は予測できず、何が幸いし何が災いするかは分からないということ。
安易に状況の良し悪しを判断するべきではないという教訓。 - 使用例:
「志望校に落ちたが良縁に恵まれた。まさに塞翁が馬だ。」 - 補足:
「人間万事塞翁が馬(にんげんばんじさいおうがうま)」とも言う。
五十歩百歩(ごじっぽひゃっぽ)
- 意味・教訓:
程度の差はあっても、本質的には大差ないこと。
わずかな違いを取り上げて他を非難することの愚かさを指摘する。 - 使用例:
「彼の遅刻を責める君も締め切り破りの常習犯だ。五十歩百歩だよ。」 - 由来:
『孟子』で、孟子が梁の恵王に説いたたとえから。
戦場で五十歩逃げた兵士が、百歩逃げた兵士を臆病だと笑うようなものだ、という。
画竜点睛(がりょうてんせい)
- 意味・教訓:
物事の最も重要な最後の仕上げ。
それが加わることで全体が見事に完成すること。 - 使用例:
「最後の決め手となる一言が、まさに画竜点睛だった。」 - 補足:
「画竜点睛を欠く」は、最後の肝心な点が抜けているために不完全であることを意味する。
臥薪嘗胆(がしんしょうたん)
- 意味・教訓:
目的を達成するために、苦労や困難に耐え忍ぶこと。
特に、復讐や雪辱を果たすために苦難を乗り越えること。 - 使用例:
「敗れた悔しさを胸に、臥薪嘗胆の日々を送った。」 - 由来:
中国春秋時代、呉王夫差が薪の上で寝て父の仇を忘れず、越王勾践が苦い肝を嘗めて屈辱を忘れないようにした故事から。
大器晩成(たいきばんせい)
- 意味・教訓:
大きな器が完成するまでに時間がかかるように、真に偉大な人物も大成するのが遅いということ。 - 使用例:
「彼は40歳を過ぎて世に認められた。まさに大器晩成型だ。」
四面楚歌(しめんそか)
- 意味・教訓:
周囲がすべて敵や反対者で、味方がおらず孤立している状態。 - 使用例:
「賛同者が誰もおらず、彼は四面楚歌に陥った。」 - 由来:
楚の項羽が漢軍に囲まれた際、四方から故郷である楚の歌が聞こえてきて、味方がみな漢に降伏したと絶望した故事から。
背水の陣(はいすいのじん)
- 意味・教訓:
川や海を背にして陣を敷き、退路を断つこと。
転じて、絶体絶命の状況で、決死の覚悟で事に臨むこと。 - 使用例:
「失敗は許されない。背水の陣で取り組むしかない。」 - 由来:
漢の韓信が、わざと川を背にして陣を敷き、兵士たちが退却できない状況で必死に戦い勝利した故事から。
漁夫の利(ぎょふのり)
- 意味・教訓:
二者が争っている間に、関係のない第三者が労せず利益を得ること。 - 使用例:
「両社が値下げ合戦で消耗した隙にC社が市場を奪った。まさに漁夫の利だ。」
虎穴に入らずんば虎子を得ず(こけつにいらずんばこじをえず)
- 意味・教訓:
虎の住む穴に入るような危険を冒さなければ、虎の子供(宝)は手に入らない。
大きな成果を得るには、相応の危険や困難に立ち向かう必要があるということ。 - 使用例:
「起業はリスクが高いが、虎穴に入らずんば虎子を得ずだ。」
朝三暮四(ちょうさんぼし)
- 意味・教訓:
目先の違いに気を取られて、結果が同じであることに気づかないこと。
また、言葉巧みに人をだますこと。 - 使用例:
「総額は同じなのに月々が安いプランに飛びつくのは朝三暮四だ。」 - 由来:
猿使いが猿にトチの実を「朝に三つ、暮れに四つ」やると言うと猿が怒り、「朝に四つ、暮れに三つ」やると言うと喜んだという故事から。
杞憂(きゆう)
- 意味・教訓:
取り越し苦労。
無用な心配をすること。 - 使用例:
「飛行機が落ちる心配など杞憂だと分かってはいる。」 - 由来:
中国の杞の国の人が「天が落ちてきたらどうしよう」と心配し続けたという故事から。
他山の石(たざんのいし)
- 意味・教訓:
他人の良くない言行や失敗も、自分を向上させるための参考や戒めになるということ。 - 使用例:
「ライバル社の失敗事例を他山の石として、自社の経営戦略を見直そう。」
玉石混淆(ぎょくせきこんこう)
- 意味・教訓:
優れたもの(玉)と劣ったもの(石)が、入り混じっている状態。 - 使用例:
「インターネット上の情報は玉石混淆なので、取捨選択する能力が必要だ。」
推敲(すいこう)
- 意味・教訓:
詩や文章の字句を何度も練り直し、より良いものにすること。 - 使用例:
「大事なプレゼン資料なので、提出前によく推敲しておこう。」 - 由来:
中国の詩人賈島が、「僧は推す月下の門」か「僧は敲く月下の門」かで悩み、韓愈に相談した故事から。
登竜門(とうりゅうもん)
- 意味・教訓:
立身出世や成功につながる、重要な関門。 - 使用例:
「この新人賞は、若手作家にとっての登竜門と言われている。」 - 由来:
黄河の急流「竜門」を登りきった鯉は竜になるという伝説から。
羊頭狗肉(ようとうくにく)
- 意味・教訓:
見かけ(看板)は立派だが、中身(実態)が伴わないこと。 - 使用例:
「立派な公約とは裏腹の政策で、羊頭狗肉も甚だしい。」 - 由来:
羊の頭を看板に掲げて、実際には犬の肉を売っていたという故事から。
温故知新(おんこちしん)
- 意味・教訓:
古い事柄(故き)を研究し、そこから新しい知識や意義(新しき)を見出すこと。 - 使用例:
「歴史小説は現代を考える温故知新のヒントになる。」 - 出典:
『論語』
完璧(かんぺき)
- 意味・教訓:
欠点や不足が全くなく、非常に優れていること。 - 使用例:
「彼の演技は、非の打ち所がない完璧なものだった。」 - 由来:
藺相如が、趙の宝玉「和氏の璧」を傷一つつけずに秦から趙へ送り返した故事から。
蛍雪の功(けいせつのこう)
- 意味・教訓:
苦労して学問に励み、その結果として成功すること。 - 使用例:
「彼は働きながら夜間大学を卒業した。まさに蛍雪の功が実ったのだ。」 - 由来:
晋の車胤が蛍の光で、孫康が雪の明かりで書物を読んで勉強した故事から。
捲土重来(けんどちょうらい)
- 意味・教訓:
一度敗れたり失敗したりした者が、再び勢力を盛り返して攻めてくること。 - 使用例:
「前回大敗した候補者が捲土重来を期して立候補した。」 - 読み方注意:
「けんどじゅうらい」ではなく「けんどちょうらい」。
助長(じょちょう)
- 意味・教訓:
不必要な手助けをして、かえって害を与えること。
成長を促そうとして逆効果になること。
(※悪い意味で使う) - 使用例:
「過度な甘やかしは、かえって子供の依存心を助長することになる。」 - 由来:
宋の国の人が、苗の成長を早めようとして苗を引き抜き、枯らしてしまった故事から。
白眉(はくび)
- 意味・教訓:
同種のものの中で、最も優れている人や物。 - 使用例:
「数ある展示作品の中でも、彼の大作は白眉の出来栄えだ。」 - 由来:
蜀の馬氏の五人兄弟は皆優秀だったが、特に眉に白い毛があった馬良が最も優れていた故事から。
覆水盆に返らず(ふくすいぼんにかえらず)
- 意味・教訓:
一度してしまったことは、取り返しがつかないことのたとえ。 - 使用例:
「口から出た言葉は元に戻せない。まさに覆水盆に返らずだ。」 - 由来:
周の太公望が、離縁した妻から復縁を迫られた際、盆の水をこぼして「この水を元に戻せるか」と問い詰めた故事から。
竜頭蛇尾(りゅうとうだび)
- 意味・教訓:
初めは竜の頭のように勢いが盛んだが、終わりは蛇の尾のように振るわなくなること。 - 使用例:
「鳴り物入りで始まったプロジェクトが、資金難で竜頭蛇尾に終わった。」
守株(しゅしゅ)
- 意味・教訓:
古い習慣ややり方に固執し、時代の変化に対応できないこと。
偶然の成功体験に頼り、進歩がないこと。 - 使用例:
「過去の成功に固執して新手法を拒むのは守株だ。」 - 由来:
偶然切り株にぶつかって死んだ兎を待ち続け、農作業をやめてしまった男の故事から。
「守株待兎(しゅしゅたいと)」とも。
鶏鳴狗盗(けいめいくとう)
- 意味・教訓:
鶏の鳴きまねで人を欺いたり、犬のように忍び込んで物を盗んだりする卑しい者。
くだらない技能しか持たない者。
また、どんなつまらない技能でも、役に立つことがあるというたとえ。 - 使用例:
「趣味の動画編集が会社のPRで役立つとは鶏鳴狗盗だ。」 - 由来:
戦国時代、斉の孟嘗君が秦に捕らえられた際、鶏の鳴き真似が得意な家臣と、犬のように忍び込むのが得意な家臣の助けで脱出したという故事から。
石に漱ぎ流れに枕す(いしにくちすすぎながれにまくらす)
- 意味・教訓:
自分の誤りを認めず、屁理屈をこねて言い逃れること。
負け惜しみが強いこと。 - 使用例:
「計算の誤りを指摘されても『わざとだ』と言い張るとは、石に漱ぎ流れに枕すだ。」 - 由来:
晋の孫楚が「石に枕し流れに漱ぐ」と言おうとして「石に漱ぎ流れに枕す」と言い誤り、友人に誤りをからかわれると「石で口をすすぐのは歯を磨くため、流れを枕にするのは耳を洗うためだ」と言い張った故事から。
「漱石枕流」とも言い、夏目漱石の号はこれにちなむ。
井の中の蛙大海を知らず(いのなかのかわずたいかいをしらず)
- 意味・教訓:
自分の狭い知識や考えにとらわれて、ほかに広い世界があることを知らないことのたとえ。 - 使用例:
「地元の大会で勝って得意になっていたが、全国大会で井の中の蛙大海を知らずだったと思い知った。」 - 由来:
『荘子』の、井戸の中の蛙に海の話をしても通じないのは狭い住みかにとらわれているからだ、という一節に基づく。
「井の中の蛙」と略しても使う。
一炊の夢(いっすいのゆめ)
- 意味・教訓:
人の世の栄華や盛衰は、はかないものだということ。 - 使用例:
「一代で築いた財産も、失ってしまえば一炊の夢にすぎない。」 - 由来:
唐の時代、盧生という青年が邯鄲の町で道士から枕を借りて眠り、出世して富貴を極める一生の夢を見たが、目を覚ますと、眠る前に火にかけた粟の飯もまだ炊き上がっていなかったという故事から。
「邯鄲の夢」とも言う。
角を矯めて牛を殺す(つのをためてうしをころす)
- 意味・教訓:
小さな欠点を無理に正そうとして、かえって全体を損なってしまうことのたとえ。 - 使用例:
「短所ばかり厳しく直させて長所までつぶしては、角を矯めて牛を殺すことになる。」 - 補足:
「矯める」は、曲がったものをまっすぐに直すこと。
「角を直して牛を殺す」とも言う。
羹に懲りて膾を吹く(あつものにこりてなますをふく)
- 意味・教訓:
一度の失敗に懲りて、必要以上に用心すること。 - 使用例:
「一度道に迷ってから、近所のコンビニへ行くのにも地図を確かめるなんて、羹に懲りて膾を吹くだ。」 - 由来:
熱い吸い物の羹で口をやけどした人が、それに懲りて冷たいあえ物の膾まで吹いて冷ます意から。
『楚辞』にある言葉。
孟母三遷(もうぼさんせん)
- 意味・教訓:
子どもの教育には、よい環境を選ぶことが大切だという教え。 - 使用例:
「子どもの進学を考えて、学校の多い地区に引っ越した。孟母三遷というわけだ。」 - 由来:
孟子の母が、わが子の教育のために、墓地の近くから市場の近くへ、さらに学校の近くへと住まいを移した故事から。
人間関係に関する有名な故事成語
呉越同舟(ごえつどうしゅう)
- 意味・教訓:
仲の悪い者同士や敵対する者同士が、同じ場所や状況に居合わせること。
また、共通の困難や利害のために協力すること。 - 使用例:
「ライバル同士の二人が、共通の利害のために呉越同舟で手を組んだ。」 - 由来:
『孫子』の一節から。
仲の悪い呉の人と越の人でも、同じ舟に乗り合わせて大風に遭えば、左右の手のように助け合うと説いている。
傍若無人(ぼうじゃくぶじん)
- 意味・教訓:
傍らに人無きが若く、人のことなど気にかけず、自分勝手に振る舞うこと。 - 使用例:
「彼は電車の中でも大声で電話をするなど、傍若無人な態度が目立つ。」
虎の威を借る狐(とらのいをかるきつね)
- 意味・教訓:
他人の権勢を頼りにして威張る、力のない者のたとえ。 - 使用例:
「社長の名前を出して無理を通すのは、虎の威を借る狐だ。」 - 由来:
『戦国策』の寓話から。
虎に捕まった狐が「自分は天帝から百獣の長に任じられた。うそだと思うなら後についてこい」と言い、獣たちが後ろの虎を恐れて逃げるのを、自分を恐れたように見せかけたという。
逆鱗に触れる(げきりんにふれる)
- 意味・教訓:
目上の人を激しく怒らせること。 - 使用例:
「彼の不用意な一言が、上司の逆鱗に触れてしまった。」 - 由来:
竜の顎の下にある逆さに生えた鱗(逆鱗)に触れると、竜が激怒するという伝説から。
三顧の礼(さんこのれい)
- 意味・教訓:
目上の人が、賢者を招くために礼を尽くして何度も訪ねること。
人材を熱心に迎えること。 - 使用例:
「社長自ら三顧の礼をもって、彼を技術顧問として迎え入れた。」 - 由来:
蜀の劉備が、諸葛亮を迎えるために三度その庵を訪ねた故事から。
水魚の交わり(すいぎょのまじわり)
- 意味・教訓:
水と魚のように、切り離せない非常に親密な交わり。 - 使用例:
「あの二人は、公私ともに支え合う水魚の交わりを結んでいる。」 - 由来:
劉備が、諸葛亮を得たことを「魚が水を得たようだ」と語った故事から。
刎頸の交わり(ふんけいのまじわり)
- 意味・教訓:
互いに首を刎ねられても後悔しないほどの、非常に親密な交友関係。
命をかけても良いと思えるほどの親友。 - 使用例:
「彼ら二人は、若い頃から苦楽を共にした、刎頸の交わりを結んだ仲だ。」 - 由来:
中国戦国時代の趙の廉頗と藺相如が、はじめ対立したが後に互いを認め合い、深い友情で結ばれた故事から。
管鮑の交わり(かんぽうのまじわり)
- 意味・教訓:
互いを深く理解し合った、利害を超えた親密な友情。 - 使用例:
「彼と私との間には、損得勘定抜きの管鮑の交わりがある。」 - 由来:
中国春秋時代の斉の管仲と鮑叔牙の深い友情の故事から。
管仲は、自分を全面的に信頼した鮑叔牙について「我を生みし者は父母、我を知る者は鮑叔なり」と語った。
知音(ちいん)
- 意味・教訓:
自分の心を深く理解してくれる、真の友人。 - 使用例:
「彼こそが、私の音楽性を理解してくれる唯一無二の知音だ。」 - 由来:
中国春秋時代、琴の名手伯牙が、自分の琴の音を唯一理解してくれた友人鍾子期を失い、琴の弦を断った故事から。
肝胆相照らす(かんたんあいてらす)
- 意味・教訓:
互いに心の底(肝臓と胆嚢)まで打ち明けて、親しく付き合うこと。 - 使用例:
「彼とは肝胆相照らす仲なので、どんな秘密でも打ち明けられる。」
君子は豹変す(くんしはひょうへんす)
- 意味・教訓:
(本来の意味)徳のある立派な人は、過ちを認めるとすぐに態度を改めるということ。
その変わり身が鮮やかであること。
※現代では、節操なく態度をころころ変えること(悪い意味)で使われることも多い。 - 使用例:
「彼は非を認め改めた。君子は豹変すだ。」(本来の意味)
「言うことが昨日と違う。君子は豹変すだな。」(俗用)
鶏口となるも牛後となるなかれ(けいこうとなるもぎゅうごとなるなかれ)
- 意味・教訓:
大きな集団の末端(牛の尻尾)にいるよりも、小さな集団でも長(鶏のくちばし)となる方が良いということ。 - 使用例:
「大企業の一員より地元でトップを目指す。鶏口となるも牛後となるなかれだ。」
白眼視(はくがんし)
- 意味・教訓:
人を冷たい目でみること。
冷遇すること。
白い目で見る。 - 使用例:
「不正が発覚した後、彼は社内で白眼視されるようになった。」 - 由来:
中国の阮籍が、好まない人物には白眼(白目)で対し、好む人物には青眼(黒目)で対した故事から。
門前雀羅を張る(もんぜんじゃくらをはる)
- 意味・教訓:
訪れる人がなく、門の前には雀を捕る網(雀羅)が張れるほど寂れている様子。 - 使用例:
「行列ができていた店も、今や門前雀羅を張る寂れようだ。」
烏合の衆(うごうのしゅう)
- 意味・教訓:
まとまりも統率もなく、ただ寄せ集まっただけの集団。 - 使用例:
「指揮をとる者がいなければ、人数が多くても烏合の衆にすぎない。」 - 由来:
烏の群れが、ばらばらに集まっては散っていく様子から。
『後漢書』に見える言葉。
出藍の誉れ(しゅつらんのほまれ)
- 意味・教訓:
弟子が師よりも優れるようになること。 - 使用例:
「師匠を超える作品を生み出した彼女は、まさに出藍の誉れだ。」 - 由来:
『荀子』の、藍から取った青い染料が、もとの藍よりも青いというたとえから。
馬耳東風(ばじとうふう)
- 意味・教訓:
人の意見や忠告を気に留めず、聞き流すことのたとえ。 - 使用例:
「何度注意しても馬耳東風で、彼の遅刻は直らない。」 - 由来:
李白の詩の一節「東風の馬耳を射るが如き有り」から。
人が喜ぶ春風(東風)も、馬の耳に吹いては何の感動も呼ばないことにたとえた。
牛耳を執る(ぎゅうじをとる)
- 意味・教訓:
団体や党派などの中心になって、主導権を握ること。 - 使用例:
「業界団体の牛耳を執っているのは、最大手のA社だ。」 - 由来:
春秋戦国時代の中国で、諸侯が同盟を結ぶとき、盟主がいけにえの牛の耳を裂き、皆でその血をすすって誓い合った故事から。
「牛耳る」はここから生まれた言葉。
努力・行動に関する有名な故事成語
百聞は一見に如かず(ひゃくぶんはいっけんにしかず)
- 意味・教訓:
何度も話を聞くよりも、一度実際に自分の目で見た方が確かであり、よく理解できるということ。 - 使用例:
「絶景は説明より実際に見る方が早い。百聞は一見に如かずだ。」
千里の道も一歩から(せんりのみちもいっぽから)
- 意味・教訓:
どんなに大きな目標や事業も、手近な第一歩から着実に努力を重ねていけば達成できるということ。 - 使用例:
「資格取得は大変だが千里の道も一歩から。まず始めよう。」
切磋琢磨(せっさたくま)
- 意味・教訓:
学問や道徳に励み、自分を磨き上げること。
仲間同士が互いに励まし合い、競い合って向上すること。 - 使用例:
「彼らは良きライバルとして互いに切磋琢磨し、共に技術を高めてきた。」
愚公山を移す(ぐこうやまをうつす)
- 意味・教訓:
根気よく努力し続ければ、どんな困難なことでもいつかは成し遂げられるということ。 - 使用例:
「この難事業は愚公山を移す精神で続けるしかない。」 - 由来:
愚公という老人が、家の前の山を邪魔に思い、子々孫々まで続ければいつかはなくなると信じて土を運び始めた故事から。
木に縁りて魚を求む(きによりてうおをもとむ)
- 意味・教訓:
方法を誤ると、いくら苦労しても目的を果たせないことのたとえ。
また、見当違いな望みを持つこと。 - 使用例:
「練習もせずに優勝を望むのは、木に縁りて魚を求むるようなものだ。」 - 由来:
『孟子』で、武力で天下を治めようとする斉の宣王を、孟子が「木に登って魚を捕ろうとするようなものだ」といさめた言葉から。
破天荒(はてんこう)
- 意味・教訓:
今まで誰もできなかったことを、初めて成し遂げること。 - 使用例:
「新人で三冠を達成するという破天荒の偉業を成し遂げた。」 - 由来:
唐の時代、荊州からは官吏登用試験の合格者が一人も出ず、「天荒(未開の荒れ地)」と呼ばれていたが、劉蛻が初めて合格すると「天荒を破った」とたたえられた故事から。
破釜沈船(はふちんせん)
- 意味・教訓:
退路を断って、決死の覚悟で物事に臨むことのたとえ。 - 使用例:
「会社を辞め、貯金をすべてつぎ込んで、破釜沈船の覚悟で店を開いた。」 - 由来:
飯を炊く釜を壊し、船を沈めて退路を断つ意から。
『史記』に見える言葉。
隗より始めよ(かいよりはじめよ)
- 意味・教訓:
大きな事業も、まず手近なところから手をつけよということ。
また、何かを言い出した人が、まず自分でやってみせるべきだということ。 - 使用例:
「職場の節電を呼びかけた以上、隗より始めよで、まず自分の席の照明を消した。」 - 由来:
燕の昭王に賢者を招く方法を問われた郭隗が、「まず私のような者を優遇すれば、より優れた人材が自然に集まってくる」と答えた故事から。
「まず隗より始めよ」とも言う。
顰みに倣う(ひそみにならう)
- 意味・教訓:
よしあしを考えずに、むやみに人のまねをすること。
また、人にならって同じことをするのを、へりくだって言う言葉。 - 使用例:
「恩師の顰みに倣って、私も毎朝の読書を続けている。」 - 由来:
越の美女西施が胸を病んで眉をひそめた姿を、村の醜い女が美しいと思ってまねたところ、村人に気味悪がられたという『荘子』の故事から。
「顰み」は眉の間にしわを寄せること。
状況・状態に関する有名な故事成語
破竹の勢い(はちくのいきおい)
- 意味・教訓:
竹が最初の一節を割るとあとは一気に割れるように、勢いが激しくて止められないこと。 - 使用例:
「初戦に勝ったチームは破竹の勢いで決勝まで勝ち進んだ。」 - 由来:
『晋書』に見える故事から。
晋の将軍杜預が呉を攻めた際、今の勢いは竹を割るようなもので、数節に刃を入れればあとは自然に割れると述べて進撃を続け、呉を滅ぼした。
五里霧中(ごりむちゅう)
- 意味・教訓:
物事の状況が全く分からず、見通しが立たず、どうしてよいか迷うこと。 - 使用例:
「問題が次々と発生し、解決の糸口が見えず五里霧中だ。」 - 由来:
後漢の張楷が道術で五里にわたる霧を起こしたという故事から。
風前の灯火(ふうぜんのともしび)
- 意味・教訓:
風の前のともしびのように、危険が目前に迫っていて、今にも滅びそうな状態のたとえ。 - 使用例:
「度重なる赤字で、その会社の経営は風前の灯火だ。」
危急存亡の秋(ききゅうそんぼうのとき)
- 意味・教訓:
国家や組織などが、生き残るか滅びるかの瀬戸際にある、非常に危険な時期。 - 使用例:
「会社はライバルの猛追を受け、危急存亡の秋を迎えた。」
杜撰(ずさん)
- 意味・教訓:
物事のやり方がいい加減で、手落ちが多いこと。
もとは、詩文に誤りが多いことを言った。 - 使用例:
「杜撰な管理のせいで、顧客の個人情報が流出した。」 - 由来:
北宋の詩人杜黙の作る詩に、作詩の規則に合わないものが多かったことから。
「撰」は詩文を作ること。
圧巻(あっかん)
- 意味・教訓:
書物や作品、催しなどの中で、最も優れた部分。 - 使用例:
「フィナーレの花火は、この祭りの圧巻だった。」 - 由来:
中国の官吏登用試験「科挙」で、最も優れた答案(巻)をほかの答案の上に置いたという故事から。
断腸の思い(だんちょうのおもい)
- 意味・教訓:
はらわたがちぎれるほど、つらく悲しい思い。 - 使用例:
「経営を立て直すため、断腸の思いで工場の閉鎖を決めた。」 - 由来:
晋の桓温が船で三峡を通ったとき、従者が子猿を捕らえた。
母猿は百里あまりも岸伝いに追いかけて船に飛び移ったが息絶え、その腹を割くと腸がずたずたにちぎれていたという故事から。
怒髪冠を衝く(どはつかんむりをつく)
- 意味・教訓:
逆立った髪の毛が冠を突き上げるほど、激しく怒る様子。 - 使用例:
「部下の不正を知った社長は、怒髪冠を衝く勢いで怒鳴った。」 - 由来:
『史記』で、秦の王に欺かれた藺相如の激しい怒りを、逆立った髪が冠を突き上げたと描いたことから。
「怒髪天を衝く」とも言う。
明鏡止水(めいきょうしすい)
- 意味・教訓:
邪念がなく、静かに澄み切った心境。 - 使用例:
「試合の前は雑念を払い、明鏡止水の心境で臨みたい。」 - 由来:
曇りのない鏡(明鏡)と、静かに止まった水(止水)にたとえた言葉。
『荘子』の一節に基づく。
故事成語を生んだ中国の古典
この記事で紹介した故事成語の多くは、中国の歴史書や思想書から生まれました。
たとえば「四面楚歌」は歴史家・司馬遷の『史記』に、「矛盾」は『韓非子』に、「蛇足」は『戦国策』に登場します。
古代中国では、議論や君主への進言の際に過去の出来事を引き合いに出す習慣があり、その印象的な場面が短い言葉に凝縮されて成語となりました。
日本へは漢文の学習を通じて伝わり、今も日常の言葉として使われています。














コメント
いろんなことを知りいろんなことが勉強になりました。