古くから農耕、移動、軍事のパートナーとして、人々の生活を支え続けてきた「馬」。
その力強さや賢さ、そして時に見せる滑稽さから、日本語には馬にまつわる言葉が数多く残されています。
2026年(令和8年)の干支は「丙午(ひのえうま)」。
「午(うま)」は方角では「南」、時刻では「正午」を指し、太陽が最も高く昇る「隆盛」や「飛躍」を象徴する縁起の良い年です。
今回は、新年の挨拶や抱負、スピーチに使える「馬」に関することわざ・慣用句・四字熟語を、意味や由来とともにシチュエーション別に解説します。
- 人生・運命・真理
- 人間万事塞翁が馬(じんかんばんじさいおうがうま)
- 瓢箪から駒(ひょうたんからこま)
- 老いたる馬は道を忘れず(おいたるうまはみちをわすれず)
- 馬には乗ってみよ人には添うてみよ(うまにはのってみよひとにはそうてみよ)
- 人間関係・相性
- 馬が合う(うまがあう)
- 馬のはなむけ(うまのはなむけ)
- 牛馬の労(ぎゅうばのろう)
- どこの馬の骨(どこのうまのほね)
- 能力・努力・評価
- 批判・戒め・失敗(誤用注意)
- 座右の銘に使える「馬」の四字熟語
- 英語表現
- 馬に関する豆知識
- まとめ
- 【特集記事】
十二支(干支)のことわざ・慣用句・故事成語・四字熟語
人生・運命・真理
人生の不可解さや、世の中の真理を、馬の性質や物語になぞらえた言葉です。
新年の抱負や、座右の銘としても最適です。
人間万事塞翁が馬(じんかんばんじさいおうがうま)
- 意味:
人生における幸不幸は予測しがたく、幸運が不幸の原因になったり、その逆になったりすること。一喜一憂すべきではないという教え。 - 由来:
中国の古書『淮南子』より。要塞に住む老人(塞翁)の馬が逃げた(凶)が、名馬を連れて帰ってきた(吉)。
その馬で息子が落馬し骨折した(凶)が、骨折のおかげで戦争に行かずに済んだ(吉)。
このように、福と禍が予測不能に入れ替わり続けた物語に由来します。 - 解説:
単に「塞翁が馬(さいおうがうま)」とも言います。
不運なことがあっても「これが良いことに繋がるかもしれない」と前向きに捉えるための言葉です。
瓢箪から駒(ひょうたんからこま)
- 意味:
冗談で言ったことが真実になってしまうこと。また、思いがけない場所から意外なものが出ること。 - 解説:
ここでの「駒」とは馬のこと。小さな瓢箪(ひょうたん)の口から大きな馬が飛び出すような、理屈ではあり得ないことが実際に起こる様子を指します。
老いたる馬は道を忘れず(おいたるうまはみちをわすれず)
- 意味:
経験豊かな人は、物事の判断を誤らないというたとえ。年長者の知恵や経験を尊重すべきだという意味。 - 由来:
中国の春秋時代、名宰相の管仲(かんちゅう)が遠征で道に迷った際、老馬を放してその後をついていき、無事に道を見つけたという故事(『韓非子』)にちなみます。
馬には乗ってみよ人には添うてみよ(うまにはのってみよひとにはそうてみよ)
- 意味:
何事も自分で経験してみなければ、本当のところは分からないということ。 - 解説:
馬の良し悪しは外見だけでなく実際に乗ってみなければ分からず、人の善し悪しも親しく付き合ってみなければ分からないものです。
先入観や噂に惑わされず、実体験を重視する姿勢を説いています。
人間関係・相性
他者との関わり合いや、コミュニケーションの様子を表す表現です。
馬が合う(うまがあう)
- 意味:
性格や気が合い、意気投合すること。 - 由来:
乗馬において、乗り手と馬の呼吸がぴったり合うと、お互いに心地よく走れることに由来します。
馬のはなむけ(うまのはなむけ)
- 意味:
旅立つ人の安全を祈って金品や言葉を贈ること。「はなむけ」の語源。 - 解説:
古くは、旅立つ人の馬の鼻先(口)を、これから向かう方向へ無理に向けて見送る習慣があったことから、「馬の鼻向け」となり、転じて「はなむけ」となりました。
現在では、送別会での贈り物やスピーチを指して使われます。
牛馬の労(ぎゅうばのろう)
- 意味:
牛や馬のように、他人のためにあくせくと働くこと。 - 解説:
「牛馬の労を厭(いと)わず」という形で、自分の苦労を謙遜して言ったり、忠誠を誓ったりする際に使われます。
どこの馬の骨(どこのうまのほね)
- 意味:
素性や来歴が分からない人をあざけって言う言葉。 - 解説:
中国では役に立たないものの代表として、大きくて処分のしようがない「馬の骨」が挙げられていたという説があります。
現在では、娘の結婚相手などに対して不信感を抱く際によく使われます。
能力・努力・評価
才能の有無や、努力の重要性、評価の厳しさを表す言葉です。
2026年の目標設定にも使えるポジティブな言葉を含みます。
駑馬十駕(どばじゅうが)
- 意味:
才能の劣る人でも、努力を続ければ才能のある人に追いつけるというたとえ。 - 解説:
「駑馬(どば)」は足の遅い馬、「駕(が)」は1日の道のりです。
名馬なら1日で走る距離も、鈍馬でも10日走り続ければ到達できるという意味で、継続の尊さを説いています。
天馬行空(てんばこうくう)
- 意味:
天馬が空を駆け巡るように、着想や行動が自由奔放で、何ものにもとらわれない様子。 - 解説:
もとは詩や文章の勢いが力強く優れていることを形容する言葉でしたが、現在では規格外の才能や行動力を褒める言葉として使われます。
走る馬にも鞭(はしるうまにもむち)
- 意味:
勢いのあるものにさらに勢いを加えること。また、努力している人に対して、さらに励ますこと。 - 解説:
すでによく走っている馬であっても、さらに速く走らせるために鞭を打つことから。
現状に満足せず、さらなる高みを目指す際に使います。
批判・戒め・失敗(誤用注意)
人間の愚かさや失敗、正体が露見する様子をユーモラスかつ辛辣に表現した言葉です。
使用する相手や場面には十分注意しましょう。
馬の耳に念仏(うまのみみにねんぶつ)
- 意味:
いくら意見や説法を聞かせても、全く効き目がないことのたとえ。 - 解説:
ありがたい念仏も、意味の分からない馬にとってはただの雑音でしかないことから。「馬耳東風(ばじとうふう)」や「犬に論語」と似た意味です。
馬子にも衣装(まごにもいしょう)
- 意味:
つまらない者でも、身なりを整えれば立派に見えるということ。 - 注意点:
「馬子(まご)」とは馬を引いて荷物を運ぶ人のこと。
「中身が伴っていない」という皮肉を含むため、目上の人への褒め言葉として使うのは厳禁です。
生き馬の目を抜く(いきうまのめをぬく)
- 意味:
物事をすばやく成し遂げること。また、他人を出し抜いて利益を得るなど、油断も隙もない様子。 - 注意点:
「生きている馬の目を抜き取る」という早業が語源です。
都会の競争の激しさなどを表しますが、ずる賢いニュアンスがあるため、人を褒める言葉としては不適切な場合が多いので注意が必要です。
馬脚を現す(ばきゃくをあらわす)
- 意味:
隠していた本性や悪事がばれること。 - 由来:
芝居で馬の着ぐるみに入っていた役者が、誤って自分の足を出してしまい、観客に「馬ではない」とバレてしまったことに由来します。
尻馬に乗る(しりうまにのる)
- 意味:
分別もなく、他人の言動に便乗して軽はずみな行動をとること。 - 解説:
人の乗る馬の後ろについて走る馬の様子から。
自分の考えを持たず、付和雷同する様子を批判的に言う言葉です。
座右の銘に使える「馬」の四字熟語
ここぞという時のスピーチや、自分の指針として使える、格調高い四字熟語です。
千軍万馬(せんぐんばんば)
- 意味:
多くの戦闘を経験し、場数を踏んでいること。社会経験が豊富で老練なこと。 - 解説:
「千」や「万」は数の多さを示し、数え切れないほどの軍勢や馬が入り乱れる激しい戦場を生き抜いてきた様子を表します。
「千軍万馬のつわもの」といった形で、百戦錬磨のベテランへの敬意として使われます。
南船北馬(なんせんほくば)
- 意味:
各地を忙しく旅行すること。活動範囲が広く、絶えず動き回っている様子。 - 解説:
中国では、川や湖が多い南方は「船」で、山や平原が多い北方は「馬」で旅をしたことに由来します。
全国を飛び回って活躍する行動力のある人を象徴する言葉です。
不羈奔放(ふきほんぽう)
- 意味:
何ものにも縛られず、自由気ままに振る舞うこと。 - 解説:
「羈(き)」とは、馬をつなぎ止めるための「おもがい(手綱)」のこと。
「不羈」はそれがない状態です。
芸術家などの、常識にとらわれない自由な才能や生き方を表す際に使われます。
意馬心猿(いばしんえん)
- 意味:
煩悩や欲望により、心が乱れて落ち着かないこと。 - 解説:
仏教用語で、走り回る馬や騒ぎ立てる猿のように、人間の心(煩悩)は制御しがたいものであるという教え。
「だからこそ心を整える修行が必要だ」という自戒の言葉として使われます。
英語表現
馬文化が根付いている英語圏でも、馬(Horse)を用いたことわざは頻繁に使われます。
You can lead a horse to water, but you can’t make him drink.
- 意味:
「馬を水辺に連れて行くことはできても、水を飲ませることはできない」 - 解説:
周囲がお膳立てをしても、最終的に実行するかどうかは本人次第であるという教訓です。
Don’t look a gift horse in the mouth.
- 意味:
「もらいものの馬の口(歯)を見るな」 - 解説:
馬の年齢は歯ですぐに分かるため、頂いた馬の口を開けて値踏みをするのは失礼だという意味。
贈り物にケチをつけるなと諭す言葉です。
Dark horse
- 意味:「ダークホース(未知の実力者)」
- 解説:競馬で実力が知られていないが、予想外の活躍をするかもしれない馬のこと。選挙やスポーツでよく使われます。
馬に関する豆知識
「野次馬」の語源
火事や事故の現場に集まり、無責任に騒ぎ立てる人を「野次馬(やじうま)」と言いますが、この語源には「馬」が関係しています。
一説には、年老いて役に立たなくなった馬を「親父馬(おやじうま)」と呼び、それが転じて「やじうま」になったと言われています。
老いた馬は仕事ができず、ただ他の馬の後ろについて歩くだけだったことから、自分では何もせずついて回るだけの人を指すようになったとされます(諸説あり)。
正午と「午(うま)」の関係
昼の12時を「正午(しょうご)」と言うのは、十二支の「午」が由来です。
かつて時刻を十二支で表していた際、「午の刻」は昼の11時ごろ〜13時ごろを指し、その真ん中(正)の時刻が「正午」になりました。
ちなみに、十二支を円形に並べた図では、方角としての「子(北)」が上に配置されるため、一見「12時=子?」と見えますが、これは方角の配置であり、時刻の並び(太陽の位置)とは別です。
縁起物「左馬(ひだりうま)」の秘密

将棋の駒の置物などで、馬の字が左右反転して書かれた「左馬」を見たことはありませんか?
これは商売繁盛や家内安全を願う非常に縁起の良い文字です。
- 「舞う」に通じる:
「うま」を逆から読むと「まう(舞う)」となり、めでたい席での「舞」を連想させる。 - 右に出る者がいない:
通常、馬は左側から乗ると倒れない(右から乗ると転ぶ)とされることから、「人生でつまずかない」「右に出る者がいない傑出人になる」という意味。 - お金が貯まる:
「馬」の字の下の部分が、口の締まった「巾着袋(財布)」に見えることから、富の象徴とされる。
「絵馬(えま)」のルーツ
受験や初詣で願い事を書く「絵馬」。なぜ「馬」の字が入っているのでしょうか。
かつて神社で神様に願い事をする際は、神様の乗り物である「生きた馬(神馬)」を奉納する習わしがありました。
しかし、高価な馬を献上するのは庶民には難しく、神社側も世話が大変です。
そこで、次第に木や土で作った馬の像で代用されるようになり、最終的に「板に描いた馬の絵」へと簡略化されたのが、現在の絵馬の始まりです。
過去・未来の「午年」年表
ご自身の生まれ年や、歴史上の出来事の確認にお使いください。
| 西暦 | 和暦 | 干支(十干十二支) |
|---|---|---|
| 1942年 | 昭和17年 | 壬午(みずのえうま) |
| 1954年 | 昭和29年 | 甲午(きのえうま) |
| 1966年 | 昭和41年 | 丙午(ひのえうま) |
| 1978年 | 昭和53年 | 戊午(つちのえうま) |
| 1990年 | 平成2年 | 庚午(かのえうま) |
| 2002年 | 平成14年 | 壬午(みずのえうま) |
| 2014年 | 平成26年 | 甲午(きのえうま) |
| 2026年 | 令和8年 | 丙午(ひのえうま) |
| 2038年 | 令和20年(予定) | 戊午(つちのえうま) |
| 2050年 | 令和32年(予定) | 庚午(かのえうま) |
まとめ
馬にまつわる言葉は、「力強さ・スピード・賢さ」を象徴するものと、「制御の難しさ・愚直さ」を象徴するもの、二つの側面があります。
2026年の干支である馬。目標に向かって「天馬行空」の勢いで進むもよし、焦らず「駑馬十駕」の精神で一歩ずつ進むもよし。
先人の言葉をヒントに、自分らしい一年を過ごしてみてはいかがでしょうか。
【特集記事】
十二支(干支)のことわざ・慣用句・故事成語・四字熟語
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