意味
「足るを知る(たるをしる)」とは、他者と比較して足りないものを嘆くのではなく、自分の身の丈に合った分で満ち足りていると心得るという意味です。
語源・由来
「足るを知る」の由来は、古代中国の思想家・老子の著書『老子道徳経』の第三十三章にある一節「知足者富(足るを知る者は富む)」にあります。
老子は、物質的な所有や地位に執着せず、自然の流れに従って満足を知る者こそが、本当に豊かであると説きました。
この「知足」の教えが日本にも伝わり、身の丈に合った生活や平穏な心境を表す言葉として定着しました。
使い方・例文
「足るを知る」は、自分の欲深さを自戒する時や、今あるもので満ち足りて穏やかに暮らす様子を表現する際に用いられます。
例文
- 新しい服を欲しがる娘に、足るを知ることも大切だと言い聞かせた。
- 足るを知る生き方を始めてから、無駄遣いが減り心が穏やかになった。
- 昇進だけが幸せではないと、足るを知る上司の姿を見て気づかされた。
誤用・注意点
「足るを知る」は、現状に満足して心の平穏を得るための教えですが、何に対しても努力をやめてしまう「向上心の欠如」や「妥協」とは本来異なります。
あくまで自分を苦しめる「無意味な強欲」を戒める言葉です。
また、他人に対して「現状で我慢しろ」という意味で使うと、相手の努力を否定する失礼な物言いになる可能性があるため注意が必要です。
類義語・関連語
「足るを知る」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 分をわきまえる(ぶんをわきまえる):
自分の身分や能力にふさわしい程度を知り、その範囲内で行動すること。 - 知足安分(ちそくあんぶん):
現状に満足し、自分の置かれた立場を不平なく受け入れること。 - 安貧楽道(あんぴんらくどう):
貧しくても心安らかに、正しいと思う道を楽しむこと。 - 身の程を知る(みのほどをしる):
自分の地位や実力を正しく認識し、出過ぎた真似を慎むこと。
対義語
「足るを知る」とは対照的な意味を持つ言葉は、以下の通りです。
- 隣の芝生は青い(となりのしばふはあおい):
他人のものは何でも自分のものより良く見えること。 - 飽くなき(あくなき):
決して満足することなく、際限なく求め続ける様子。 - 強欲(ごうよく):
非常に欲が深く、度を超えて欲しがること。 - 無い物ねだり(ないものねだり):
手に入らないものや、自分にないものを無理に欲しがること。
英語表現
「足るを知る」を英語で表現する場合、以下のフレーズが適しています。
Enough is as good as a feast
「十分であることは、ご馳走と同じくらい良い」
必要なだけあれば、豪華な食事と変わらず満ち足りるという英語のことわざ。
I don’t need a luxury car; enough is as good as a feast.
(高級車は必要ないよ。足るを知ることが大切だからね。)
Content is the philosopher’s stone
「満足は賢者の石である」
Content is the philosopher’s stone, that turns all it touches into gold.(満足は、触れるものすべてを金に変える賢者の石)という英語のことわざの前半。
満ち足りる心があれば何でも宝になるという意味。
He lives a simple life, believing that content is the philosopher’s stone.
(彼は満足こそが何でも宝に変えると信じ、質素に暮らしている。)
「吾唯足知」の4字は中央の「口」を共有

(写真:Bgabel、Wikimedia Commons/CC BY-SA 3.0)

京都の有名な禅寺、龍安寺には「吾唯足知」と刻まれたつくばい(= 低く据えた石の手水鉢)があります。
中心の「口」という字を共有して四方に文字が配されており、パズルのような遊び心とともに、『遺教経』に説かれる釈迦の「知足」の教えを表したものとされています。
『遺教経』には「足るを知る人は、貧しといえども富めり」という一節があり、老子の「足るを知る者は富む」とよく似た考えが説かれています。














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