意味
「起承転結(きしょうてんけつ)」とは、話を書き起こし、それを受けて広げ、視点を転じ、最後にまとめるという、物事を分かりやすく組み立てるための基本となる四段階の構成のことです。
もとは漢詩、特に絶句(四行の詩)の構成法です。
今では文章や話の組み立て全般に使い、さらに広く、物事を進める順序や段取りを指すこともあります。
- 起:導入。話題や状況を示す。
- 承:展開。「起」を受けて内容を広げ、掘り下げる。
- 転:転換。状況や視点を大きく変え、話を動かす。
- 結:結び。全体をまとめ、結末や結論を示す。
語源・由来
「起承転結」の考え方は、中国の詩、特に唐代や宋代に盛んになった「絶句」(四行から成る短い詩)の構成法に由来します。
- 起句(きく):詩の主題や情景を詠み起こす。
- 承句(しょうく):起句を受けて、その内容をさらに展開させる。
- 転句(てんく):場面や視点を転じ、詩の世界に変化や深みを与える。
- 結句(けっく):全体を受け、主題を明確にし、余韻を残して結ぶ。
八句から成る律詩でも、二句ずつを一組にして同じ型で組み立てます。
起承転結の手本として、昔からよく引かれる歌があります。
江戸後期の儒学者・頼山陽が、漢詩の起承転結を弟子に教えるのに使ったと伝えられるもので、地名や年齢の違う形がいくつもあります。
- 起:京の三条の糸屋の娘
- 承:姉は十六、妹は十四
- 転:諸国大名は弓矢で殺す
- 結:糸屋の娘は目で殺す
2句目までは姉妹の紹介で、3句目でいきなり大名の話に飛びます。
4句目は、大名が弓矢で殺すなら糸屋の娘は目で殺す、と同じ「殺す」で娘の話に引き戻します。
「転」で一見関係のない話を持ち出し、「結」で元の話と結び付ける働きがよく分かる例です。
使い方・例文
「起承転結」は、情報を整理し、分かりやすく伝えるための型として、多様な場面で意識的・無意識的に使われています。
- 作文・随筆:
学校の作文で、文章構成の基本として教えられることが多い。
体験を書き出し(起)、その様子を詳しく書き(承)、気づいたことや意外な出来事に話を転じ(転)、感じたことや学んだことでまとめる(結)。 - 物語・小説:
物語の骨格を作る際に参考にされる。
特に短い物語やエピソードをまとめるのに有効。 - プレゼンテーション:
聞き手の興味を引きつけ、理解を促すために応用される。
現状説明(起)、詳細展開(承)、課題や新視点の提示(転)、解決策やまとめ(結)といった流れ。 - 4コマ漫画:
まさに「起承転結」の典型例と言える。
1コマ目で状況設定(起)、2コマ目で展開(承)、3コマ目で予想外の出来事や「オチ」につながる変化(転)、4コマ目で結末やオチ(結)を描く。
例文
- 作文を書く前に、まず起承転結を決めておくと迷わずに書ける。
- 彼の話は起承転結がなく、結局何が言いたいのか分からない。
構成の例(桃太郎)
- 起:
おじいさんとおばあさんがいた。
おばあさんが川で洗濯をしていると、大きな桃が流れてきた。 - 承:
桃を持ち帰り割ってみると、中から男の子が生まれ、桃太郎と名付けられた。
強く育った桃太郎は鬼退治に出かけ、途中で犬、猿、雉を家来にする。 - 転:
鬼ヶ島に乗り込み、家来たちと力を合わせて鬼と戦う。 - 結:
降参した鬼から宝物を受け取って村に持ち帰り、おじいさん、おばあさんと幸せに暮らした。

小論文・ビジネス文書との違い
小論文やレポート、仕事の報告書では、起承転結より「序論・本論・結論」や、結論を先に書く型がすすめられます。
結論が最後の「結」まで出てこないうえ、「転」で話を変えると論の筋が途切れて見えるためです。
論理的な文章の書き方を説く本などでも、起承転結は論理的な文章の型ではないと指摘されています。
同じ「部活動の朝練習は必要か」という題で書く場合、次のように組み立てが変わります。
- 起承転結:
毎朝の練習に通った日々を振り返る(起)。
早起きはつらかったが、技術は伸びた(承)。
ところが、けがで休んだ1か月に、かえって基本を見直せた(転)。
練習は量より中身だと思う(結)。 - 序論・本論・結論:
朝練習は毎日でなくてよい、と最初に述べる(序論)。
睡眠不足で授業中の集中力が落ちること、休んだ期間に基本を見直せた経験などの理由を挙げる(本論)。
週に数日に減らし、内容を工夫すべきだとまとめる(結論)。
言いたいことが、前者では最後に、後者では最初に出てきます。
前者は体験を読ませる作文や随筆に、後者は主張を伝える小論文に向いています。
類義語・関連語
- 序破急(じょはきゅう):
主に雅楽や能楽など、日本の芸能で用いられる三部構成の考え方。
ゆったりとした序盤(序)、テンポを速め展開する中盤(破)、クライマックスから終息へ向かう終盤(急)という流れで、物事の緩急や速度変化を重視する。 - 三部構成(序論・本論・結論):
西洋の論文やスピーチなどで一般的な構成。
問題提起(序論)、論証や展開(本論)、まとめ(結論)という流れで、「転」にあたる明確な転換点がない場合もある。
起承転結の工夫は「転」に集まる
元の時代の詩人、楊載(1271〜1323年)の『詩法家数』は、律詩(8句の詩)の作り方の項に「起承転合」と掲げ、四つ目を「合」と呼んでいます。
絶句については、起句と承句も難しいものの、飾らずに言い起こし、おだやかに受ければよいとしています。
そのうえで、変化の工夫は「全在第三句」(すべて第3句にある)と述べ、第3句でうまく転じれば、第4句は流れを下る舟のように自然に運ぶと説きました。
七言絶句では第3句だけが韻を踏まないため、「転」の句は響きの上でも前後と違って聞こえます。
『詩法家数』は、起承転結を4つの同じ重さの区切りとしてではなく、「転」を軸にした型として教えていました。










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