「矛盾」「蛇足」「四面楚歌」「漁夫の利」など、中国の古い話がもとになってできた言葉を故事成語といいます。
「四面楚歌」や「臥薪嘗胆」のように漢字四文字のものは四字熟語にも数えられ、「虎の威を借る狐」のようにことわざとして紹介されることもあります。
故事成語・ことわざ・四字熟語は別々のものではなく、重なり合う部分があります。この違いは最後のセクションで整理しました。
学校の授業で出てくるものを中心に100個集め、むずかしい言葉を使わずに意味を説明しました。
6つのテーマに分けて紹介するので、興味のあるところから読んでみてください。
学校でよく習う故事成語
教科書に載ることが多く、故事成語と言えばまず名前の挙がる言葉です。
- 矛盾(むじゅん):
どんな盾も突き通す矛と、どんな矛も防ぐ盾を並べて売った商人の話から、話のつじつまが合わない状態。 - 蛇足(だそく):
蛇の絵に足を描き足して負けた男の話から、なくてもよい余計な付け足し。 - 五十歩百歩(ごじっぽひゃっぽ):
戦場で五十歩逃げた者が百歩逃げた者を笑った話から、少しの違いはあっても本質は同じという見方。 - 推敲(すいこう):
詩の言葉を「推す」にするか「敲く」にするかで迷った詩人の話から、文章を何度も練り直す作業。 - 漁夫の利(ぎょふのり):
貝と鳥が争ううちに漁師が両方つかまえた話から、二者が争う間に第三者が利益を得る状況。 - 助長(じょちょう):
苗を早く伸ばそうと引っぱって枯らした農夫の話から、よけいな手助けでかえって害になる行い。 - 杞憂(きゆう):
天が落ちてこないか心配した杞の国の人の話から、起こるはずのないことへの取り越し苦労。 - 守株(しゅしゅ):
切り株にぶつかった兎をもう一度待ち続けた男の話から、古いやり方にこだわる愚かさ。 - 朝三暮四(ちょうさんぼし):
朝三つ夕方四つの実を、朝四つ夕方三つに変えて猿を喜ばせた話から、目先の違いにごまかされる様子。 - 画竜点睛(がりょうてんせい):
竜の絵に瞳を描き入れたとたん天に昇ったという話から、最後に加える肝心な仕上げ。 - 四面楚歌(しめんそか):
敵に囲まれた項羽が四方から故郷の歌を聞いた話から、まわり中が敵で味方のいない状態。 - 背水の陣(はいすいのじん):
川を背にして退路を断ち勝った戦い方から、もう後がないという覚悟。 - 臥薪嘗胆(がしんしょうたん):
薪の上に寝て苦い肝をなめ、復讐の志を忘れまいとした王の話から、目的のために苦しみに耐える日々。 - 完璧(かんぺき):
傷一つない宝玉を無事に持ち帰った話から、欠けたところがまったくない出来ばえ。 - 登竜門(とうりゅうもん):
急流を登りきった鯉が竜になるという言い伝えから、そこを通れば出世が決まるとされる関門。 - 羊頭狗肉(ようとうくにく):
看板には羊の頭を掲げながら、実際は犬の肉を売るという言い回しから、見せかけと中身が食い違う商売。 - 他山の石(たざんのいし):
よその山の粗い石も自分の玉を磨くのに使えるという言葉から、他人の失敗を自分の学びに変える心がけ。 - 玉石混淆(ぎょくせきこんこう):
宝石と石ころが入りまじるように、優れたものとつまらないものが区別なく並ぶ状態。 - 竜頭蛇尾(りゅうとうだび):
頭は竜なのに尾は蛇という形から、始めは勢いがよく終わりが尻すぼみになる展開。 - 鶏口となるも牛後となるなかれ(けいこうとなるもぎゅうごとなるなかれ):
大きな集団の末端にいるより、小さくても長になる方がよいという教え。
努力・学びについての故事成語
こつこつ続けることや、学ぶ姿勢について教えてくれる言葉です。
- 蛍雪の功(けいせつのこう):
灯油を買えず蛍の光や雪明かりで学んだ二人の話から、苦学して手にした成果。 - 切磋琢磨(せっさたくま):
骨や玉を切り磨くように、仲間と競い合って互いを高めていく間柄。 - 韋編三絶(いへんさんぜつ):
孔子が読みすぎて書物のとじひもが三度切れたという話から、同じ本を繰り返し読み込む熱心さ。 - 読書百遍意自ずから通ず(どくしょひゃっぺんいおのずからつうず):
難しい本でも何度も読むうちに、意味が自然と分かってくるという教え。 - 千里の道も一歩から(せんりのみちもいっぽから):
どんなに遠い道のりも、最初の一歩から始まるという励まし。 - 点滴穿石(てんてきせんせき):
わずかな水滴も落ち続ければ石に穴をあけるというたとえ。 - 一を聞いて十を知る(いちをきいてじゅうをしる):
少し聞いただけで全体を察してしまう、飲み込みの早さ。 - 後生畏るべし(こうせいおそるべし):
若い人はこれからいくらでも伸びるので、あなどってはいけないという戒め。 - 孟母三遷(もうぼさんせん):
孟子の母が子の環境を思って三度引っ越した話から、育つ場所が人を作るという考え方。 - 温故知新(おんこちしん):
昔のことをよく調べ、そこから新しい知識や考え方を見つけ出す学び方。 - 大器晩成(たいきばんせい):
大きな器ほど作り上げるのに時間がかかるように、真に優れた人は遅れて花開くという教え。 - 捲土重来(けんどちょうらい):
土煙を巻き上げる勢いで、一度負けた者が再び攻め返してくる巻き返し。 - 愚公山を移す(ぐこうやまをうつす):
年老いた愚公が子孫の代まで続けて山を動かそうとした話から、あきらめずに続ければ大事も成るという教え。 - 有終の美を飾る(ゆうしゅうのびをかざる):
最後まで気を抜かず、締めくくりを立派に仕上げる終わり方。 - 男子三日会わざれば刮目して見よ(だんしみっかあわざればかつもくしてみよ):
三日会わないうちに人は変わるものだから、目を見張って迎えよという言葉。 - 百聞は一見に如かず(ひゃくぶんはいっけんにしかず):
何度も話に聞くより、一度自分の目で見た方が確かだという教え。 - 過ちては改むるに憚ること勿れ(あやまちてはあらたむるにはばかることなかれ):
まちがいに気づいたら、ためらわずにすぐ直せという戒め。 - 玉磨かざれば光なし(たまみがかざればひかりなし):
どんな素質も、磨かなければ値打ちが出ないという教え。
人とのつながりについての故事成語
友だちづきあいや、人との距離の取り方を語る言葉です。
- 刎頸の交わり(ふんけいのまじわり):
相手のためなら首をはねられてもよいと思えるほど、深く固い友情。 - 管鮑の交わり(かんぽうのまじわり):
管仲と鮑叔の話から、損得をこえて信じ合える友人どうしの間柄。 - 水魚の交わり(すいぎょのまじわり):
水と魚のように、離れては生きられないほど親しい関係。 - 知音(ちいん):
自分の琴の音を本当に分かってくれた友の話から、心の底まで通じ合える相手。 - 肝胆相照らす(かんたんあいてらす):
心の奥まで打ち明け合い、隠しごとなくつき合う仲。 - 三顧の礼(さんこのれい):
劉備が諸葛亮を三度たずねた話から、礼を尽くして人を迎える態度。 - 断金の交わり(だんきんのまじわり):
力を合わせれば金属も断ち切れるほど、結びつきの強い友情。 - 類は友を呼ぶ(るいはともをよぶ):
似たもの同士は自然と集まってくるという見方。 - 呉越同舟(ごえつどうしゅう):
仲の悪い呉と越の人が同じ舟に乗り合わせた話から、敵どうしが同じ場に居合わせる巡り合わせ。 - 己の欲せざるところは人に施すこと勿れ(おのれのほっせざるところはひとにほどこすことなかれ):
自分がされて嫌なことは、人にもしてはいけないという教え。 - 来る者は拒まず、去る者は追わず(きたるものはこばまず、さるものはおわず):
来る人は受け入れ、去る人は引き止めないという人づき合いの構え。 - 虎の威を借る狐(とらのいをかるきつね):
虎の後ろを歩いて威張った狐の話から、他人の力を借りていばる小物。 - 傍若無人(ぼうじゃくぶじん):
そばに人がいないかのように、周りを気にせずふるまう態度。 - 白眼視(はくがんし):
気に入らない相手を白い目で見た人の話から、冷たい目で人を扱う仕打ち。 - 和を以て貴しとなす(わをもってとうとしとなす):
争わず仲よくやることを何より大切にするという考え方。 - 四海兄弟(しかいけいてい):
真心をもって接すれば、世界中の人と兄弟のようになれるという教え。
失敗・用心についての故事成語
しくじりの後始末や、前もっての備えを説く言葉です。
- 覆水盆に返らず(ふくすいぼんにかえらず):
こぼした水を盆に戻せないように、一度してしまったことは取り返せないというたとえ。 - 前車の轍を踏む(ぜんしゃのてつをふむ):
先を行く車がはまった溝に、後の車も落ちてしまう失敗の繰り返し。 - 備えあれば憂いなし(そなえあればうれいなし):
前もって用意しておけば、いざという時に困らないという心がけ。 - 蟻の穴から堤も崩れる(ありのあなからつつみもくずれる):
小さな油断が、やがて大きな災いを招くという戒め。 - 君子危うきに近寄らず(くんしあやうきにちかよらず):
立派な人は、危ない場所にははじめから近づかないという処世術。 - 薄氷を踏む(はくひょうをふむ):
割れそうな氷の上を歩くような、ひやりとする危うさ。 - 千慮の一失(せんりょのいっしつ):
よく考える人でも、たまには思わぬしくじりをするという見方。 - 木に縁りて魚を求む(きによりてうおをもとむ):
木に登って魚を探すような、やり方そのものが間違っている行い。 - 絵に描いた餅(えにかいたもち):
どんなにうまそうでも食べられない絵の餅のように、役に立たない計画。 - 朝令暮改(ちょうれいぼかい):
朝出した命令が夕方には変わるような、あてにならない方針。 - 先んずれば人を制す(さきんずればひとをせいす):
人より先に動いた方が、有利に事を運べるという考え方。 - 良薬は口に苦し(りょうやくはくちににがし):
よく効く薬が苦いように、ためになる忠告ほど聞きづらいという教え。 - 忠言耳に逆らう(ちゅうげんみみにさからう):
本気で思って言ってくれる言葉ほど、素直に聞けないという心理。 - 過ぎたるは猶及ばざるが如し(すぎたるはなおおよばざるがごとし):
やりすぎることは、足りないのと同じくらいよくないという考え方。 - 敗軍の将は兵を語らず(はいぐんのしょうはへいをかたらず):
負けた者が戦い方を語るものではないという慎み。 - 虎穴に入らずんば虎子を得ず(こけつにいらずんばこじをえず):
虎の穴に入らなければ子虎は手に入らないように、危険を冒さずに大きな成果は得られないという教え。
世の中・運命についての故事成語
運のめぐりや、世の中の動き方をとらえた言葉です。
- 人間万事塞翁が馬(にんげんばんじさいおうがうま):
馬をめぐる幸不幸が入れかわった老人の話から、何が幸いするか分からない世の中のありよう。 - 禍福は糾える縄の如し(かふくはあざなえるなわのごとし):
災いと幸せは、より合わせた縄のように代わる代わるやってくるという見方。 - 禍を転じて福と為す(わざわいをてんじてふくとなす):
降りかかった災いを、工夫して幸せに変えてしまう転換。 - 一陽来復(いちようらいふく):
冬が終わって春が来るように、悪いことが続いた後で運が向いてくる巡り。 - 窮すれば通ず(きゅうすればつうず):
行きづまって追い込まれると、かえって道が開けてくるという励まし。 - 天網恢恢疎にして漏らさず(てんもうかいかいそにしてもらさず):
天の網は目が粗いようで、悪事を決して見のがさないという戒め。 - 風前の灯火(ふうぜんのともしび):
風にさらされた灯のように、今にも消えそうな危うい状態。 - 危急存亡の秋(ききゅうそんぼうのとき):
生き残るか滅びるかの分かれ目に立たされた場面。 - 五里霧中(ごりむちゅう):
深い霧に包まれたように、どうしたらよいか見当がつかない有様。 - 水清ければ魚棲まず(みずきよければうおすまず):
あまりに清らかすぎると、かえって人が寄りつかないという見方。 - 一葉落ちて天下の秋を知る(いちようおちててんかのあきをしる):
葉が一枚散るのを見て秋の訪れを察するような、小さな兆しからの読み取り。 - 鹿を指して馬と為す(しかをさしてうまとなす):
鹿を馬だと言い張って家来を試した権力者の話から、道理を曲げて押し通す横暴。 - 燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや(えんじゃくいずくんぞこうこくのこころざしをしらんや):
小さな鳥に大きな鳥の志が分からないように、小人物には大人物の考えが分からないという言葉。 - 天知る、地知る、我知る、人知る(てんしる、ちしる、われしる、ひとしる):
誰も見ていないつもりでも、悪事はいつか知れ渡るという戒め。 - 一期一会(いちごいちえ):
この出会いは一生に一度きりだと考えて、その時を大切にする心がまえ。 - 足るを知る(たるをしる):
今あるもので十分だと満足できる人こそ豊かだという考え方。
いまは日常語になった故事成語
ふだん何気なく使っている言葉にも、中国の故事から来たものがあります。
- 大丈夫(だいじょうぶ):
もとは一人前の立派な男子を指す言葉で、そこから「しっかりしていて心配ない」という今の意味に変わりました。 - 左遷(させん):
右を上位とした昔の中国で、位を下げて左に移すことを言ったのが始まりです。 - 姑息(こそく):
本来は「一時しのぎ」の意味で、「ひきょう」という今の使われ方は後から広まったものです。 - 間一髪(かんいっぱつ):
髪の毛一本ほどのすきましかない、ぎりぎりの差。 - 白眉(はくび):
五人兄弟のうち眉に白い毛がまじった者がいちばん優れていた話から、同類の中でとくに抜きん出た存在。 - 知己(ちき):
自分の値打ちを本当に分かってくれる人。 - 国士無双(こくしむそう):
国じゅうを探しても並ぶ者がいないほどの、すぐれた人物。 - 虎に翼(とらにつばさ):
ただでさえ強い虎に翼が生えるように、強い者がさらに力を得る状況。 - 一字千金(いちじせんきん):
一字直したら千金を与えると宣言した書物の話から、それほど値打ちのある文章。 - 怒髪天を衝く(どはつてんをつく):
髪が逆立って天を突くほどの、激しい怒り。 - 食指が動く(しょくしがうごく):
ごちそうにありつく前に人差し指が動いたという話から、何かをしたくなる気持ちの兆し。 - 水を得た魚(みずをえたうお):
自分に合う場所を得て、生き生きと力を発揮する姿。 - 寝食を忘れる(しんしょくをわすれる):
眠ることも食べることも忘れるほど、一つのことに打ち込む様子。 - 生殺与奪(せいさつよだつ):
生かすも殺すも思いのままという、相手を完全に握った立場。
故事成語の成り立ち|ことわざ・四字熟語との違い
故事成語とは、中国に伝わる古い出来事や物語(故事)がもとになってできた言葉です。
意味を暗記するだけでなく、もとの話を知ると忘れにくくなります。
ことわざ・四字熟語とどう違うのか
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| 故事成語 | 中国の古い話がもと。 話を知らないと意味をつかみにくい(矛盾・蛇足・漁夫の利) |
| ことわざ | 暮らしの中の教訓を短く言い表したもの。 日本で生まれたものも多い(猫に小判・急がば回れ) |
| 四字熟語 | 漢字四文字という形で決まるもの。 故事成語と重なる語もある(四面楚歌・臥薪嘗胆) |
三つは別々のものではなく、重なり合っています。
たとえば四面楚歌は、中国の故事から生まれた故事成語であり、同時に漢字四文字の四字熟語でもあります。
一方、矛盾や蛇足のように二文字のものも故事成語に含まれます。
出どころになった書物
故事成語の多くは、二千年ほど前に中国で書かれた書物にさかのぼります。
『史記』は四面楚歌や背水の陣、『論語』は温故知新や後生畏るべし、『韓非子』は矛盾や守株の出どころです。
『荘子』や『孟子』のように、思想を伝えるための寓話から生まれた言葉も少なくありません。











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