君子危うきに近寄らず

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ことわざ 故事成語
君子危うきに近寄らず
(くんしあやうきにちかよらず)

13文字の言葉く・ぐ」から始まる言葉
君子危うきに近寄らず 【個別】ことわざ・慣用句・四字熟語

なんとなく「怪しい予感がする」と感じて、その場を離れたり、トラブルになりそうな人間関係にあえて深入りしなかったりした経験。
そんな時、「自分は臆病なのだろうか」と思う必要はありません。
無用な災難を避けるその判断こそ、賢明な大人の知恵です。
そのような振る舞いを、「君子危うきに近寄らず」(くんしあやうきにちかよらず)と言います。

意味

「君子危うきに近寄らず」とは、教養があり徳の高い人は、身を危険にさらすような行動は最初からとらないという意味です。

自身の行動を慎み、災いを招くような場所や状況には近づかないのが、賢明な人のあり方だと説いています。
単に怖がって逃げるのではなく、先を見通す力を持ち、「リスクを未然に回避する」というニュアンスが含まれます。

語源・由来

「君子」とは、古代中国において「政治を行う立派な人物」や「徳が高く学識に優れた人」を指す言葉です。

実は、「君子危うきに近寄らず」というフレーズそのものは、中国の古典文献には登場せず、日本で定着した表現だと考えられています。しかし、その元となった教えは古代中国の書物に確認できます。

有力な由来とされるのは以下の二つです。

  1. 『春秋左氏伝(しゅんじゅうさしでん)』
    「君子は危牆(きしょう)の下(もと)に立たず」という言葉があります。
    これは「崩れそうな塀のそばには立たない」という意味で、不慮の事故に遭うような場所に不用意に身を置かない慎重さを説いています。
  2. 『論語(ろんご)』
    「危邦(きほう)に入らず、乱邦(らんぽう)に居らず」という一節があります。
    「政情が不安定で危険な国には入らず、秩序が乱れた国には留まらない」という意味です。

どちらも、「賢い人は自分の身を大切にし、無駄に危険を冒さない」という共通の思想を持っています。

使い方・例文

日常会話では、物理的な危険だけでなく、怪しい儲け話、リスクの高い賭け事、揉め事など、関わると損をしそうな状況を避ける場面で広く使われます。

例文

  • あそこのグループは素行が悪いと評判だ。「君子危うきに近寄らず」で、関わり合いにならないのが一番だ。
  • 楽をして稼げるという話には裏があるに決まっている。「君子危うきに近寄らず」、そんな誘いには乗らないよ。
  • 上司の機嫌が最悪らしいから、今日は早めに帰ろう。まさに「君子危うきに近寄らず」だ。
  • 台風の日にわざわざ川を見に行くなんて馬鹿げている。「君子危うきに近寄らず」と言うだろう。

誤用・注意点

この言葉は、ビジネスや日常においてよく使われますが、使う相手や状況には注意が必要です。

1. 「臆病」の言い訳にはならない

この言葉は「賢明な判断としての回避」を指すものです。
やるべきことから逃げたり、単に怖がって挑戦しなかったりする際の「言い訳」として使うのは本来の意味から外れます。

2. 「事なかれ主義」との違い

面倒なことを無視して見て見ぬふりをする「事なかれ主義」とも異なります。
「君子」は本来、正義感を持った人物を指すため、保身のために卑怯な振る舞いをすることを推奨する言葉ではありません。

類義語・関連語

「君子危うきに近寄らず」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 触らぬ神に祟りなし(さわらぬかみにたたりなし):
    余計な手出しをしなければ、災いを招くことはないという教え。「関わりたくない」という消極的なニュアンスが強くなります。
  • 石橋を叩いて渡る(いしばしをたたいてわたる):
    安全そうに見えるものでも、念には念を入れて確かめてから行動すること。こちらは「回避」よりも「慎重な行動」に重点があります。
  • 危ない橋は渡らない(あぶないはしはわたらない):
    危険な手段や方法はとらないこと。「危うきに近寄らず」とほぼ同じ意味で使われます。

対義語

「君子危うきに近寄らず」とは対照的な意味を持つ言葉は以下の通りです。

  • 虎穴に入らずんば虎子を得ず(こけつにいらずんばこじをえず):
    危険を冒さなければ、大きな成果は得られないということ。「リスクを取る勇気」を説いており、状況によってはこちらが正解となる場合もあります。
  • 火中の栗を拾う(かちゅうのくりをひろう):
    自分の利益にならないのに、他人のためにあえて危険を冒すこと。また、無謀なことをするたとえ。
  • 当たって砕けろ(あたってくだけろ):
    失敗してもいいから、思い切ってやってみろということ。

英語表現

「君子危うきに近寄らず」を英語で表現する場合、慎重さを肯定する以下のフレーズが適しています。

Better safe than sorry.

  • 意味:「後悔するより安全な方が良い」。
  • 解説:「用心するに越したことはない」「転ばぬ先の杖」に近いニュアンスで、日常的に最もよく使われる表現です。
  • 例文:
    I think we should double-check the lock. Better safe than sorry.
    (鍵を二重に確認すべきだと思うよ。用心するに越したことはないからね。)

Discretion is the better part of valor.

  • 意味:「慎重さは勇気の大部分である」。
  • 解説:無茶をするだけが勇気ではない、慎重であってこその勇気だ、という意味。シェイクスピアの史劇『ヘンリー四世』に由来する格言で、「逃げるが勝ち」というニュアンスでも使われます。
  • 例文:
    Don’t fight him now. Discretion is the better part of valor.
    (今は彼と戦うな。君子危うきに近寄らずだ。)

まとめ

「君子危うきに近寄らず」は、賢い人は危険を予知し、むやみに近づかないという処世術を表す言葉です。

臆病風に吹かれて逃げるのではなく、自分や周囲を守るための「冷静なリスク管理」と言えます。
現代社会においても、怪しい情報や不要なトラブルから距離を置くことは、立派な「君子」の振る舞いと言えるでしょう。

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