身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ

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ことわざ
身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ
(みをすててこそうかぶせもあれ)
異形:身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあり

14文字の言葉」から始まる言葉
身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ 【個別】ことわざ・慣用句・四字熟語

人生には時として、絶体絶命のピンチや、失敗すればすべてを失うような局面が訪れます。
そんな時、保身に走って守りに入るべきか、それともリスクを恐れず前に出るべきか。
身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれは、覚悟を決めた者だけが道を切り拓けるという、力強い逆転の哲学を説く言葉です。

「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」の意味・教訓

自分の命を捨てる覚悟で物事に当たって初めて、窮地を脱して物事を成就することができるという教訓です。

  • 身を捨てて:我が身を犠牲にする覚悟で。執着を捨てること。
  • 浮かぶ瀬:川の浅瀬など、足が着いて助かる場所。転じて、苦しい境遇から抜け出す好機。

川で溺れた時、パニックになってもがけばもがくほど、深みにはまって沈んでしまいます。
しかし、一度力を抜いて流れに身を任せてしまえば(身を捨てれば)、やがて足の着く浅瀬(浮かぶ瀬)にたどり着くことができます。
このことから、「保身を捨てて必死の覚悟で挑めば、かえって活路が見出せる」という意味で使われます。

「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」の語源・由来

この言葉の由来は、平安中期の僧侶・空也上人(くうやしょうにん)が詠んだとされる和歌にあると言われています。

山川の末に流るる橡殻(とちがら)も 身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ

  • 意味:山から川へ流されるトチの実の殻でさえ、中身を捨てて空っぽになり、流れに身を任せているからこそ、沈まずに浮かんでいられるのだ。

本来は仏教的な教えで、「現世への執着(我が身)」を捨て去ることで、初めて極楽浄土へ往生できる(浮かぶ瀬がある)という悟りの境地を説いた歌でした。
時代が下ると共に、武士道や勝負事における「必死の覚悟で挑めば勝機が見える」という、より実践的な処世訓として定着していきました。

「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」の使い方・例文

ビジネスでの起死回生の策や、スポーツでの強敵との対戦など、リスクを負ってでも勝負に出なければならない場面で使われます。「捨て身の覚悟」を促す言葉です。

例文

  • 「会社の存続がかかったプロジェクトだ。身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれの覚悟で、全財産を投じることにした。」
  • 「格上の相手に守りに入っては勝機はない。身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ、相打ち覚悟で踏み込んだ。」
  • 身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれと言うだろう。失敗を恐れて縮こまるより、思い切って飛び込んでみなさい。」

芸能作品での使用例

この言葉は、ドラマチックな展開を好む「浄瑠璃(じょうるり)」や「歌舞伎」の世界で頻繁に使用されました。

身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ、エエイ、ままよ!

出典:人形浄瑠璃『ひらがな盛衰記』(ひらがなせいすいき)

※主人公が絶体絶命の状況下で、覚悟を決めて行動を起こす際の名台詞として、江戸時代の観客の心を打ちました。

「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」の類義語

危険を冒してこそ大きな成果が得られる、あるいは犠牲を払って勝利を得るという意味の言葉です。

  • 死中に活を求める(しちゅうにかつをもとめる):
    絶体絶命の状況(死地)の中で、なんとか生き延びる道を見つけ出そうとすること。「身を捨てて〜」と最も意味が近い表現です。
  • 肉を切らせて骨を断つ(にくをきらせてほねをたつ):
    自分も肉を切られる(傷を負う)が、それと引き換えに相手の骨を断つ(致命傷を与える)。捨て身の覚悟で勝利をつかむこと。
  • 窮鼠猫を噛む(きゅうそねこをかむ):
    追い詰められたネズミは、天敵の猫にも噛み付いて反撃する。絶体絶命の弱者が必死の反撃に出ること。

似ているが意味が異なる言葉

  • 当たって砕けろ(あたってくだけろ):
    成功するかどうかは運に任せて、思い切ってやってみること。
    「身を捨ててこそ〜」は、覚悟を決めることで「生き残る・成功する(浮かぶ)」というポジティブな結果を目的としていますが、「当たって砕けろ」は「失敗(砕けること)」も許容している点で、ニュアンスが異なります。

「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」の対義語

命や安全を第一に考える言葉が対義語となります。

  • 命あっての物種(いのちあってのものだね):
    何事も命がなくては始まらない。死んでしまっては何もできないということ。
  • 逃げるが勝ち(にげるがかち):
    無駄な争いを避けて逃げるほうが、結果的に利益を得るということ。

「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」の英語表現

英語圏にも、リスクを取ることの重要性や、自己犠牲による救いを説く表現があります。

He that loses his life shall find it.

  • 意味:「自分の命を失う者は、それを見出すであろう」
  • 解説:新約聖書(マタイによる福音書)由来の言葉。自分の命(自己への執着)を捨てる者が、かえって真の命(永遠の命や真理)を得るという、宗教的・精神的な意味合いで「身を捨ててこそ〜」の語源と非常に近いニュアンスを持ちます。

Nothing ventured, nothing gained.

  • 意味:「冒険しなければ、何も得られない」
  • 解説:日本語の「当たって砕けろ」や「虎穴に入らずんば虎子を得ず」に近い、最も一般的な表現です。

「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」に関する豆知識

「瀬」とは何か?

言葉のイメージから、単に水面に「プカプカ浮く」ことだと思われがちですが、本来の「瀬」は「歩いて渡れるほど浅い場所」を指します。
つまり、溺れかけている状態から、足がしっかりと地面に着く安全地帯(浅瀬)にたどり着くことを意味しています。
単なる「浮上」ではなく、そこからまた歩き出せるという「再起」のニュアンスが含まれている点が、この言葉の希望たる所以です。

まとめ

身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれとは、我が身を犠牲にする覚悟を持ってこそ、初めて窮地を脱し、活路を見出すことができるという意味の言葉です。

元々は「執着を捨てよ」という仏教の教えでしたが、現代では「リスクを恐れるな」という挑戦の言葉として響きます。
守りに入りたくなった時、この言葉を思い出してください。握りしめている手を離す(身を捨てる)勇気が、新しい足場(浮かぶ瀬)へとあなたを導いてくれるはずです。

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