人生には時として、八方塞がりで絶体絶命のピンチが訪れることがあります。
「死中に活を求める」とは、そのような絶望的な状況にあっても決して諦めず、生き残るための道を必死に見つけ出そうとする姿勢を表す言葉です。
「死中に活を求める」の意味
助かる見込みが全くないような絶体絶命の状況の中で、なんとかして生き延びる道(活路)を見つけ出すこと。
- 死中(しちゅう):死ぬほかないような危険な場所や状態。
- 活(かつ):生きる道。活路。助かる方法。
単に「助かった」という結果ではなく、困難な状況を打破しようとする能動的な意志や努力に焦点を当てた言葉です。
一般的には「死中に生を求める」という形でも広く使われますが、意味は同じです。
「死中に活を求める」の語源・由来
この言葉は、中国の歴史書『後漢書』公孫述伝(こうそんじゅつでん)にある一節に由来します。
後漢の時代、蜀(しょく)の地で皇帝を自称して勢力を誇っていた公孫述という人物がいました。
彼は漢の光武帝(こうぶてい)との戦いで追い詰められ、配下の将軍から「もはやこれまで。降伏して命を助けてもらうべきでは」と進言されます。
しかし、プライドの高い公孫述はこう答えました。
「国の興亡は天命によるものだ。どうして降伏してまで死中に生(せい)を求めようか(いや、そのような恥ずべきことはしない)」
本来、この言葉は「生き延びようと未練がましく振る舞うこと」を否定する文脈で使われたものでした(公孫述はその後、最後まで戦って滅びました)。
しかし、言葉だけが後世に残り、現代では文脈が逆転して「死ぬような苦境においても、なお生きる道を模索する」という肯定的な意味で使われるようになりました。
なお、原文では「生」ですが、四字熟語の「死中求活(しちゅうきゅうかつ)」の影響もあり、「活(活路)」という文字が当てられることも一般的になっています。
「死中に活を求める」の使い方・例文
ビジネスでの倒産危機、スポーツの敗色濃厚な場面、災害時など、極限状態からの打開を図る際によく使われます。
例文
- 会社は倒産寸前だったが、社長は死中に活を求める覚悟で、起死回生の新商品を投入した。
- 完全に包囲された部隊だったが、指揮官は死中に活を求める奇策を打ち出し、見事に脱出を成功させた。
- このまま負けるのを待つよりは、死中に活を求めて勝負に出るべきだ。
文学作品での使用例
- 吉川英治の『三国志』では、追い詰められた武将たちが局面を打開しようとする際、この言葉(または類似の表現)を通して、その悲壮な決意や知略が描かれています。
「死中に活を求める」の類義語・関連語
- 死中に生を求める(しちゅうにせいを もとめる):
「死中に活を求める」と同義。語源に基づいた本来の言い回し。 - 九死に一生を得る(きゅうしにいっしょうを える):
十中八九助からないような危険な状態から、かろうじて助かること。
※「死中に活を求める」が活路を探す「行為・意思」を指すのに対し、こちらは助かった「結果」を指す違いがある。 - 背水の陣(はいすいのじん):
川などを背にして、退けば死ぬという絶体絶命の立場で戦うこと。決死の覚悟を決めること。 - 窮余の一策(きゅうよのいっさく):
追い詰められて困り果てたあげくに出した、苦しまぎれの手段。
「死中に活を求める」の対義語
- 座して死を待つ(ざしてしを まつ):
何の対策も講じずに、むざむざと滅びるのを待つこと。
「死中に活を求める」の英語表現
snatch victory from the jaws of defeat
- 直訳:敗北の顎(あご)から勝利をひったくる
- 意味:「敗北寸前のところから勝利をもぎ取る」
- 解説:スポーツや競争において、絶体絶命のピンチから逆転する劇的な様子を表す定型表現です。
- 例文:
The team managed to snatch victory from the jaws of defeat.
(そのチームは敗北の淵から勝利をもぎ取った。)
find a way out of a desperate situation
- 意味:「絶望的な状況から抜け出す道を見つける」
- 解説:より一般的で説明的な表現です。「Live through(生き延びる)」などの語も状況に応じて使われます。
「死中に活を求める」に関する豆知識
囲碁・将棋と「死中求活」
囲碁の世界には、この言葉を四字熟語にした「死中求活(しちゅうきゅうかつ)」という用語があります。
相手の石に囲まれて「死に石(取られることが確定した石)」に見える状態でも、相手の包囲網のわずかな綻びを突き、巧妙な手を打って「生き(取られない状態)」を図ることを指します。
単なる生存本能ではなく、高度な読みと技術に裏打ちされた「逆転の美学」として使われることもあります。







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