意味
「火事場の馬鹿力(かじばのばかぢから)」とは、差し迫った非常事態に見舞われたとき、思わず自分でも驚くほどの、日頃では出せない力がわき上がってくるという意味です。
「馬鹿力」は、常識を外れた並外れた力を指す言葉です。
語源・由来
火災という極限のパニック状態の中で、普段はとても一人では持ち上げられないような重い箪笥などの家財道具を運び出してしまうことから生まれた言葉です。
命の危険が迫る状況が人間の潜在的な能力を引き出すことを例えています。
使い方・例文
「火事場の馬鹿力」は、実際の災害時だけでなく、スポーツの試合や仕事の締め切りなど、極限のプレッシャーがかかる場面で広く使われます。
- 危機に直面して、思わぬ火事場の馬鹿力が出た。
- 倒れてきた本棚を火事場の馬鹿力で支えた。
- 試合の土壇場で火事場の馬鹿力が働いた。
類義語・関連語
- 窮鼠猫を噛む(きゅうそねこをかむ):
絶体絶命の窮地に追い詰められた弱い者が、必死になって強い者に反撃することのたとえ。 - 死物狂い(しにものぐるい):
死ぬ覚悟で必死になって物事に取り組むこと。 - 背水の陣(はいすいのじん):
一歩も退けない覚悟で決死の努力をすること。
対義語
- 蛇に睨まれた蛙(へびににらまれたかえる):
恐怖のために身がすくんでしまい、全く動けなくなることのたとえ。
英語表現
「火事場の馬鹿力」を英語で表現する場合、以下のような表現が使われます。
hysterical strength
極度の興奮やパニック状態で発揮される超人的な力を指す、最も近い表現。
She lifted the heavy debris with hysterical strength.
(彼女は火事場の馬鹿力で重い瓦礫を持ち上げた。)
adrenaline rush
極度の緊張や興奮によりアドレナリンが分泌され、身体能力が向上する状態を指す表現。
It must have been an adrenaline rush.
(火事場の馬鹿力が出たに違いない。)
1947年の本は「火事場の馬鹿力」を二通りに説明した
1947年(昭和22年)に出た『生活と勤労』という労働の生理を論じた本は、「火事場のときの馬鹿力」を二通りに説明しています。
一つは、筋肉に動けと命じる脳の中枢はいくつもあり、ふだんはそのうち一つだけが働いているという説明です。
火事のような不意の出来事ではすべての中枢が同時に働き、力が一方向にそろうので、ふだん10の力しか出ないものが20にも25にもなる、と書いています。
もう一つは、アメリカの生理学者キャノンによる、アドレナリンの分泌からの説明です。
キャノンは1915年の著書で、危険が迫るとアドレナリンが出て、体が闘うか逃げるかに備える仕組みを論じました。
この本は、火事のときは気持ちの高ぶりが極端でアドレナリンが大量に出るため、それが「火事場の馬鹿力」になる、とこの説を紹介しています。










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