晴れ渡る青空、恵みの雨、あるいは激しい嵐。
私たちの生活は、常に「天候」(てんこう)と共にあります。
古くから人々は空を見上げ、天気の変化に一喜一憂しながら、そこから多くの教訓や比喩を生み出してきました。
晴れの日が心まで明るくするように、雨の日が内省を促すように、天候に関する言葉は人間の心理や人生の局面を見事に映し出しています。
ここでは、天気や気象にまつわる有名なことわざ、慣用句、四字熟語を意味やシチュエーション別に整理してご紹介します。
- 晴れ・良い天気
- 天高く馬肥ゆる秋(てんたかくうまこゆるあき)
- 日本晴れ(にほんばれ)
- 五月晴れ(さつきばれ)
- 秋晴れ(あきばれ)
- 小春日和(こはるびより)
- 日和を見る(ひよりをみる)
- 雨過天晴(うかてんせい)
- 雲外蒼天(うんがいそうてん)
- 光風霽月(こうふうせいげつ)
- 雨
- 曇り・霧
- 雲泥の差(うんでいのさ)
- 雲行きが怪しい(くもゆきがあやしい)
- 雲散霧消(うんさんむしょう)
- 暗雲低迷(あんうんていめい)
- 五里霧中(ごりむちゅう)
- 風
- 風前の灯(ふうぜんのともしび)
- 風前の塵(ふうぜんのちり)
- 風の便り(かぜのたより)
- 風を読む(かぜをよむ)
- 風向きが変わる(かぜむきがかわる)
- 風穴を開ける(かざあなをあける)
- 風上にも置けない(かざかみにもおけない)
- 風雲急を告げる(ふううんきゅうをつげる)
- 風まかせ(かぜまかせ)
- 馬耳東風(ばじとうふう)
- 順風満帆(じゅんぷうまんぱん)
- 疾風迅雷(しっぷうじんらい)
- 風声鶴唳(ふうせいかくれい)
- 雪・氷・寒さ
- 雪に白鷺(ゆきにしらさぎ)
- 氷炭相容れず(ひょうたんあいいれず)
- 雪解け(ゆきどけ)
- 氷山の一角(ひょうざんのいっかく)
- 氷解(ひょうかい)
- 冬将軍(ふゆしょうぐん)
- 蛍雪の功(けいせつのこう)
- 薄氷を踏む(はくひょうをふむ)
- 三寒四温(さんかんしおん)
- 雪月花(せつげっか)
- 雷・嵐
- 嵐の前の静けさ(あらしのまえのしずけさ)
- 青天の霹靂(せいてんのへきれき)
- 電光石火(でんこうせっか)
- 暑さ・天候の変化
- 暑さ寒さも彼岸まで(あつささむさもひがんまで)
- 油照り(あぶらでり)
- 朝焼けは雨、夕焼けは晴れ(あさやけはあめ、ゆうやけははれ)
- 天変地異(てんぺんちい)
- まとめ
晴れ・良い天気
気持ちが晴れやかになるような、良い天気にまつわる言葉です。成功や希望の象徴として使われることも多くあります。
天高く馬肥ゆる秋(てんたかくうまこゆるあき)
秋の空は澄み渡って高く見え、馬も食欲を増してたくましく育つということ。
秋の気候が良く、過ごしやすい季節であることを表す言葉です。手紙の時候の挨拶としてもよく使われます。
もともとは中国の北方の騎馬民族(匈奴)が、馬が肥える秋になると略奪にやってくるため警戒せよ、という意味の言葉でした。現代ではその警告の意味は薄れ、実りの秋を称える言葉として定着しています。
日本晴れ(にほんばれ)
雲一つなく、青空がどこまでも広がるような素晴らしい天気のこと。
単に天気が良いだけでなく、心に一点の曇りや不安がなく、非常に晴れやかな気分のたとえとしても使われます。「今日は最高の日本晴れだ」と言えば、空模様と心模様の両方を表現できます。
五月晴れ(さつきばれ)
すっきりと晴れ渡った天気のこと。
本来は旧暦の5月、つまり現在の6月頃の「梅雨の合間の晴れ間」を指す言葉でした。
しかし現代では、新暦5月のすがすがしい晴天を指して使われることが一般的になっています。どちらの意味で使っても間違いではありません。
秋晴れ(あきばれ)
秋の、空気が澄んで空が高く感じられるような気持ちの良い晴天のこと。
移動性高気圧に覆われて湿度が低くなるため、カラッとした快適な暑さや暖かさを感じられるのが特徴です。
小春日和(こはるびより)
晩秋から初冬(11月〜12月頃)にかけて現れる、春のように穏やかで暖かい晴天のこと。
「小春」とは旧暦10月の異称です。春先の暖かさと間違えやすいですが、あくまで「冬の初めの暖かい日」を指す言葉ですので、使う時期には注意が必要です。
日和を見る(ひよりをみる)
物事を行うのに都合の良い天気(日和)かどうかを確認すること。
転じて、事の成り行きや形勢をうかがい、自分の有利な方につこうと様子見をすることを指します。「日和見主義」という言葉の元になっています。
雨過天晴(うかてんせい)
雨がやんで、空がすっきりと晴れ渡ること。
悪かった状況や状態が好転することのたとえとして使われます。また、揉め事やわだかまりが解けて、心がさっぱりすることの表現としても用いられます。
雲外蒼天(うんがいそうてん)
厚い雲の上には、常に青空(蒼天)が広がっているということ。
現在は雲に覆われて先が見えなくても、困難や試練を乗り越えれば、その先には明るい未来が待っているという希望を表す四字熟語です。座右の銘としても人気があります。
光風霽月(こうふうせいげつ)
雨上がりの草木を吹き渡るさわやかな風と、雨上がりの夜空に輝く月。
世の中がよく治まっている平和な様子のこと。また、人の心がさっぱりとしていて、私利私欲やわだかまりが全くない高潔な人柄のたとえとしても使われます。
雨
雨は「涙」や「試練」の象徴であると同時に、「恵み」や「地固め」のきっかけでもあります。
雨降って地固まる(あめふってじかたまる)
雨が降ると地面はぬかるみますが、乾いた後は以前よりも地面がしっかり固くなること。
揉め事やトラブルが起きたことで、かえってその後は基礎が固まり、良い結果や安定した状態になることのたとえです。結婚式のスピーチや、喧嘩の仲直りの際によく使われます。
干天の慈雨(かんてんのじう)
日照り(干天)が長く続いた時に降る、恵みの雨のこと。
待ち望んでいた物事がようやく実現することや、困難な状況で救いの手が差し伸べられることのたとえです。渇望していた救いが訪れた喜びを表します。
雨後の筍(うごのたけのこ)
雨が降った後には、筍が次々と勢いよく出てくること。
似たような物事が次から次へと相次いで現れることのたとえです。新しい店が乱立する場合など、やや皮肉を込めて使われることもあります。
雨垂れ石を穿つ(あまだれいしをうがつ)
軒下から落ちる小さな雨のしずくでも、長い間同じ場所に落ち続ければ、硬い石にさえ穴を開けることができるということ。
どんなに小さな力でも、根気よく努力を続ければ、やがて大きな成果を得られるという教訓です。「継続は力なり」と似た意味を持ちます。
山が笠をかぶれば雨(やまがかさをかぶればあめ)
山の頂上に笠のような雲がかかっていると、雨が降る前兆であるという観天望気(天気のことわざ)。
湿った空気が山にぶつかって雲ができるため、実際に雨になる確率が高いと言われています。
猫が顔を洗うと雨(ねこがかおをあらうとあめ)
猫がしきりに顔を洗うような動作をすると、雨が降るという言い伝え。
湿気が高くなると猫のヒゲや毛が重くなるため、それを気にして顔を洗うのではないか、という説があります。
涙雨(なみだあめ)
人が涙を流して悲しんでいる頃に降る雨のこと。
まるで空も一緒に泣いているかのように、静かに降る雨を指します。また、ほんの少しだけ降る雨のことも指します。
狐の嫁入り(きつねのよめいり)
日が照っているのに雨が降る、いわゆる「天気雨」のこと。
不思議な現象を狐の仕業と見なしたことから生まれた言葉です。また、夜の山野で狐火(鬼火)が列をなして見える現象のことも指します。
雨露をしのぐ(あめつゆをしのぐ)
雨や夜露を防ぐ程度の、粗末な家に住むこと。
転じて、苦しい状況の中で、なんとか住む場所を確保して暮らすことを指します。「どうにか雨露をしのげる場所が見つかった」のように使います。
山雨来たらんと欲して風楼に満つ(さんうきたらんとほっしてかぜろうにみつ)
山から雨がやってこようとする時、高楼(高い建物)にはまず激しい風が吹き満ちるということ。
大きな事件や変乱が起こる前には、何かしら不穏な気配や兆候が現れることのたとえです。唐の詩人、許渾(きょこん)の詩に由来します。
風雨晦冥(ふううかいめい)
激しい風雨のために、辺りが真っ暗になること。
転じて、社会の秩序が乱れ、先行きの見えない不安な世の中になることのたとえとしても使われます。
曇り・霧
先が見えない状況や、はっきりしない状態を表す際によく使われます。
雲泥の差(うんでいのさ)
空にある雲と、地にある泥。
二つのものの間に、比較にならないほど大きな隔たりや違いがあること。「月とスッポン」と同じく、極端な違いを表す言葉です。
雲行きが怪しい(くもゆきがあやしい)
空の雲の様子から、天気が崩れそうだと予測されること。
転じて、物事の成り行きが悪くなりそうな気配や、人間関係が険悪になりそうな予兆を指します。「交渉の雲行きが怪しくなってきた」のように使います。
雲散霧消(うんさんむしょう)
雲や霧が消え失せるように、物事が跡形もなく消えてなくなること。
悩み、疑い、野心などが、きれいさっぱりなくなる様子を表します。「不満が雲散霧消した」のように用います。
暗雲低迷(あんうんていめい)
暗い雨雲が低く垂れ込めている様子。
悪い状態が長く続き、なかなか好転する見込みが立たないことのたとえです。先行きの暗い状況を表現する四字熟語です。
五里霧中(ごりむちゅう)
五里(約20km)にも広がる深い霧の中にいて、方角が全く分からないこと。
物事の様子や手がかりが完全につかめず、どう行動してよいか方針が立たない状態を指します。
風
変化、影響、速さ、そして目に見えないものの象徴です。
風前の灯(ふうぜんのともしび)
風が吹きつける場所にある灯火(ともしび)は、今にも消えてしまいそうです。
そのように、危険が目前に迫っており、命や地位などが非常に危うい状態にあることのたとえです。
風前の塵(ふうぜんのちり)
風の前の塵(ちり)が吹き飛ばされやすいように、物事が非常にはかなく、消えやすいことのたとえ。命の儚さを表すこともあります。
風の便り(かぜのたより)
どこからともなく伝わってくる噂や知らせのこと。
誰が言ったか分からないが、自然と耳に入ってくる情報を指します。「風の便りに聞いた」と表現します。
風を読む(かぜをよむ)
風向きを読んで船を操るように、その場の状況、時代の流れ、人々の意向などを敏感に察知し、判断すること。
風向きが変わる(かぜむきがかわる)
吹く風の方向が変わること。
転じて、物事の形勢や周囲の態度、世間の評判などが変化することを指します。「あの一件以来、風向きが変わった」のように使います。
風穴を開ける(かざあなをあける)
閉塞した状況に、新鮮な風を通すこと。
停滞している組織や古い慣習の中に、新しい動きや変化をもたらすことを指します。
風上にも置けない(かざかみにもおけない)
性質や行動が卑劣で、仲間として認めることができないこと。
悪臭のするものを風上に置くと臭いが流れてきて迷惑である、という意味から、軽蔑の意を込めて使われます。「男の風上にも置けない」のように用います。
風雲急を告げる(ふううんきゅうをつげる)
風や雲の動きが激しくなるように、情勢が急激に変化し、今にも大きな変乱が起こりそうな緊迫した状態のこと。
風まかせ(かぜまかせ)
風の吹くままに動くこと。
物事の成り行きを自然に任せ、自分の意志でコントロールしようとしない態度。「明日は明日の風が吹く」のような、楽天的なニュアンスを含むこともあります。
馬耳東風(ばじとうふう)
春風が馬の耳に吹いても、馬は何も感じないこと。
人の意見や忠告を聞いても全く気に留めず、聞き流してしまうことのたとえです。
順風満帆(じゅんぷうまんぱん)
追い風を帆いっぱいに受けて船が進むこと。
物事がすべて順調に運び、何の問題もなく進展している様子のたとえです。
疾風迅雷(しっぷうじんらい)
激しく吹く風(疾風)と、激しい雷(迅雷)。
行動や事態の推移が、非常に素早く激しいことのたとえ。「疾風迅雷の如く敵陣に切り込む」のように使います。
風声鶴唳(ふうせいかくれい)
風の音や鶴の鳴き声を聞いただけで、敵が来たのではないかと怯えること。
敗走中の兵士などが、わずかな物音にも過敏になり、恐れおののく様子を表します。
雪・氷・寒さ
厳しさや困難、あるいは純粋さの象徴として使われます。
雪に白鷺(ゆきにしらさぎ)
白い雪景色の中に白い鷺(さぎ)がいると、見分けがつきません。
そのように、類似したものが重なっていて目立たないことのたとえです。
氷炭相容れず(ひょうたんあいいれず)
冷たい氷と、燃える炭。
性質が正反対で、どうしても調和しないこと、互いに反発し合う関係のたとえです。
雪解け(ゆきどけ)
春になり雪が解けること。
転じて、敵対していた関係や緊張状態が緩和し、打ち解けた状態に向かうことを指します。「両国の関係に雪解けムードが漂う」のように使います。
氷山の一角(ひょうざんのいっかく)
海に浮かぶ巨大な氷山も、水面上に見えているのは全体のほんの一部に過ぎません。
物事の全体像のうち、表面に現れているのはごくわずかな部分であり、隠れた問題や事実はもっと大きいということのたとえです。
氷解(ひょうかい)
凍っていた氷が解けること。
疑問、疑い、わだかまりなどがすっかり解けてなくなることを表します。「誤解が氷解する」のように使います。
冬将軍(ふゆしょうぐん)
冬の厳しい寒さや大雪を、擬人化して呼ぶ言葉。
もとはナポレオンのロシア遠征を敗退させた、ロシアの厳しい冬の寒さをイギリスの新聞が「General Frost(霜将軍)」と表現したことに由来します。
蛍雪の功(けいせつのこう)
苦労して勉学に励んだ成果のこと。
中国の故事で、灯油が買えないほど貧しい少年たちが、夏は蛍の光で、冬は雪の反射光で本を読んで勉強し、出世したという逸話から来ています。
薄氷を踏む(はくひょうをふむ)
薄く張った氷の上を歩く時は、割れないかとヒヤヒヤします。
そのように、非常に危険な状況に臨むことや、危ない橋を渡るような心境のたとえです。「薄氷を踏む思い」と表現します。
三寒四温(さんかんしおん)
寒い日が三日ほど続いた後、暖かい日が四日ほど続き、これを繰り返しながら徐々に暖かくなっていくこと。
本来は中国東北部や朝鮮半島の冬の気候を表す言葉ですが、日本では春先に暖かくなっていく時期に使われることが多い言葉です。
雪月花(せつげっか)
雪、月、花。
冬の雪、秋の月、春の花という、四季折々の自然の美しさを代表するものの総称です。芸術や風流な生活の題材として愛されています。
雷・嵐
突発的な出来事や、激しい感情の比喩として登場します。
嵐の前の静けさ(あらしのまえのしずけさ)
嵐が来る前には、風がなくなり不気味なほど静かになることがあります。
変乱や大事件が起こる直前の、一時的な静けさや平穏のたとえです。
青天の霹靂(せいてんのへきれき)
晴れ渡った青空(青天)に、突然激しい雷(霹靂)が鳴り響くこと。
全く予期していなかった突発的な事件や、驚くような知らせを受けることのたとえです。
電光石火(でんこうせっか)
稲妻の光や、火打石の火。どちらも一瞬で消えるものです。
極めて短い時間のたとえ。また、行動や動作が非常に素早い様子のたとえとして使われます。
暑さ・天候の変化
暑さ寒さも彼岸まで(あつささむさもひがんまで)
冬の厳しい寒さも春分(春の彼岸)までには和らぎ、夏の厳しい暑さも秋分(秋の彼岸)までには収まるということ。
辛い時期もやがて終わりが来る、という励ましの意味を含んで使われることもあります。
油照り(あぶらでり)
風がなく、じっとりと汗ばむような夏の暑い日照りのこと。
汗が油のように滲み出るような不快な暑さを表現した言葉です。
朝焼けは雨、夕焼けは晴れ(あさやけはあめ、ゆうやけははれ)
天気を予測する経験則(観天望気)の一つ。
西から天気が変わることが多いため、夕方に西の空が晴れている(夕焼け)と翌日は晴れ、朝に東の空が焼けていると、西から雨雲が近づいている可能性があるため雨になりやすい、という意味です。
天変地異(てんぺんちい)
天空と地上に起こる異変のこと。
台風、地震、洪水、日食、彗星の出現など、自然界の異常現象を指します。昔の人はこれを吉凶の予兆として恐れました。
まとめ
天候に関する言葉は、単なる気象描写にとどまらず、人生の「晴れ舞台」や「土砂降り」の状況を豊かに表現してくれます。
「雲外蒼天」のように希望を持つ言葉もあれば、「風前の灯」のように危機を警告する言葉もあります。
今の自分の状況を天気に例えてみると、先人が残した言葉が、より深く心に響くかもしれません。





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