「光風霽月(こうふうせいげつ)」という言葉を聞いたことはありますか?
響きからも清々しさが伝わってくるような、美しい四字熟語です。
この言葉は、単に天気が良いことを指すだけではありません。主に、ある人の人柄や心の状態を表すために使われる、奥深い意味を持っています。
どのような人物を「光風霽月」と評するのでしょうか。その正確な意味や背景、使い方を紐解いていきましょう。
「光風霽月」の意味・教訓
「光風霽月」とは、心が清らかで何のわだかまりもなく、さっぱりとしていて爽やかな人柄をたとえていう言葉です。また、そのような高潔な人格を指します。
この言葉は、二つの要素から成り立っています。
- 光風(こうふう):日の光の中を吹き渡る、穏やかで心地よい風。
- 霽月(せいげつ):雨が上がった後の、澄み渡った空に輝く月。
どちらも非常に清々しく、美しい情景です。「霽(せい)」という漢字には、「雨や雪がやむ」「空が晴れる」という意味があります。
これらの情景のように、心にわだかまりや邪念がなく、清く澄み渡り、接する人に爽やかな印象を与えるような高潔な人徳を、「光風霽月」と表現します。
「光風霽月」の語源
この言葉は、中国・宋(そう)の時代の学者、周敦頤(しゅうとんい)が、同じく高名な詩人・書家であった黄庭堅(こうていけん)の人柄を評した言葉に由来します。
周敦頤は、黄庭堅の清廉で高潔な人柄を「光風霽月の如し(光風霽月のようだ)」と称賛しました。黄庭堅が、わだかまりのない爽やかな人徳の持ち主であったことがうかがえます。
このエピソードは、『宋史(そうし)』の「周敦頤伝」に記されており、ここから「光風霽月」が清廉潔白な人柄を表す言葉として定着しました。


「光風霽月」の使い方と例文
現代では、主に尊敬する人物の人柄や人格を称賛する際に使われます。特に、私利私欲がなく、公平無私で、接していて清々しい気持ちになるような人を評するのに最適です。
また、政治家や指導者など、公の立場にある人に求められる理想の姿として用いられることもあります。個人の「座右の銘」として、そのような心のあり方を目指す意味で使われることもあります。
例文
- 「恩師の人柄は、まさに光風霽月という言葉がふさわしい。」
- 「彼女はいつも光風霽月な態度で、誰に対しても公平に接する。」
- 「政治家には、私心のない光風霽月な姿勢が求められる。」
- 「私の座右の銘は、どのような時も光風霽月な心を失わないことだ。」
類義語・関連語
「光風霽月」と似た、心の清らかさやわだかまりのなさを表す言葉を紹介します。
- 明鏡止水(めいきょうしすい):
曇りのない鏡と静かな水面のように、心が澄み切って邪念のない状態。心の静けさに重点がある点が「光風霽月」の爽やかさと少し異なります。 - 清廉潔白(せいれんけっぱく):
心や行いが清らかで、私欲や不正がまったくないこと。「光風霽月」が人柄の爽やかさも含むのに対し、こちらは特に「潔白さ」を強調します。 - 虚心坦懐(きょしんたんかい):
心に何のわだかまりもなく、さっぱりとして素直な心で物事に臨むさま。 - 海闊天空(かいかつてんくう):
海が広々とし、空がどこまでも続くように、心が広々として何の束縛もないこと。
対義語
「光風霽月」とは反対に、心に邪念があることや、わだかまりがある状態を表す言葉です。
- 奸佞邪智(かんねいじゃち):
心がねじ曲がっており、ずる賢くよこしまな知恵があること。 - 疑心暗鬼(ぎしんあんき):
疑う心があると、何でもないことまで恐ろしく思えてしまうこと。心が晴れやかでない状態。 - 魑魅魍魎(ちみもうりょう):
山や川の怪物。転じて、私利私欲のために悪事を働く者たちの集まり。「光風霽月」な人柄とは対極にある存在。
英語での類似表現
「光風霽月」の「清廉で高潔な」というニュアンスを英語で表現する場合、以下のような表現が近くなります。
noble and high-minded
- 意味:「高潔で、志が高い」
- 解説:人柄が気高く、道徳的に優れている様子を表します。
noble(高貴な、立派な)とhigh-minded(高潔な、崇高な考えを持つ)を組み合わせた表現です。 - 例文:
She is respected for her noble and high-minded character.
(彼女は、その高潔な人柄で尊敬されている。)
pure-hearted and serene
- 意味:「清らかな心を持ち、穏やかな」
- 解説:
pure-hearted(純粋な心の)で清廉さを、serene(穏やかな、澄み切った)で「霽月」のようなわだかまりのない心の状態を表すことができます。 - 例文:
He maintained a pure-hearted and serene attitude even in difficult times.
(彼は困難な時でさえ、清らかで穏やかな心を保っていた。)
まとめ – 光風霽月な人柄を目指して
「光風霽月」は、雨上がりの澄んだ空に輝く月や、光の中を渡る風のように、清々しく高潔で、わだかまりのない人柄を指す美しい言葉です。
元々は中国の故事に由来し、尊敬すべき人物への最上級の賛辞として使われてきました。
日常生活で使う機会は多くないかもしれませんが、人間関係や自分自身のあり方を考える上で、このような「光風霽月」な心の状態は一つの理想と言えるかもしれませんね。





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