窮鳥懐に入れば猟師も殺さず

ことわざ
窮鳥懐に入れば猟師も殺さず(きゅうちょうふところにいればりょうしもころさず)

23文字の言葉き・ぎ」から始まる言葉
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「窮鳥懐に入れば猟師も殺さず」の意味 – 弱者への慈悲

「窮鳥懐に入れば猟師も殺さず」とは、逃げ場を失った者が助けを求めてきたときは、たとえ敵であっても情けをかけるべきであるという、人としての思いやりや慈悲の心を説いたことわざです。

「窮鳥」は追い詰められた鳥、「懐(ふところ)」は胸元や衣服の内側を指します。

猟師という本来は鳥を狩る立場の人間でさえ、必死で飛び込んできた鳥にはとどめを刺さず、保護するだろうという情景を通じて、弱者への配慮の大切さを教えています。

由来・語源 – 『後漢書』に由来するとされる逸話

「窮鳥懐に入れば猟師も殺さず」ということわざは、中国の歴史書『後漢書』に登場するエピソードが語源とされています。

物語の中で、追い詰められた鳥が命からがら猟師の懐に飛び込んできた際、その猟師はその鳥を殺すことができなかった――という逸話があり、これが後に「どんなに追い詰められた相手であっても、助けを求めてきたならば情けをかけるべきだ」という教訓として広まりました。

この考え方は、時代を経て日本でも仏教の「慈悲の心」や、武士道の「敵を赦す精神」と結びつき、今のような意味で使われるようになったとされています。

使い方と例文 – 困窮者に対する思いやりの場面で

このことわざは、困って助けを求めてきた人に対して情けを示すべきだという文脈で使われます。
敵対していた相手や過ちを犯した者に対しても、心を開いて受け入れるべきだという場面で使われることが多いです。

例文

  • 「彼はかつて私たちを裏切ったが、いま助けを求めてきた。窮鳥懐に入れば猟師も殺さず、情けを持とう。」
  • 「競争相手が困っている時に追い打ちをかけるようなことはしたくない。窮鳥懐に入れば猟師も殺さず、だね。」
  • 「敗戦国の兵士に対しても、窮鳥懐に入れば猟師も殺さずの精神を忘れてはならない。」
  • 「憎しみがあっても、必死に許しを乞う姿を見れば心が動く。窮鳥懐に入れば猟師も殺さずだよ。」

「窮鳥懐に入れば猟師も殺さず」の類義語 – 慈悲や弱者救済

弱い立場にある者を助けたり、情けをかけたりすることの重要性を示す言葉があります。

  • 弱きを助け強きを挫く:弱者を守り、強者の横暴を抑える。正義感や義侠心を表す。
  • 武士の情け:敗者や弱者への思いやり。武士道の重要な精神。
  • 慈悲(じひ):仏教で重んじられる、生き物への憐れみと慈しみ。
  • 惻隠の情(そくいんのじょう):人の苦しみを見て気の毒に思う心。
  • 窮鼠猫を噛む(きゅうそねこをかむ):
    追い詰められた鼠が猫に反撃するように、弱い者も窮地に立てば強い者に必死で抵抗すること。
    (「追い詰められた弱者が反撃する」意味で、共通点はありますが、意味は異なります。)

「窮鳥懐に入れば猟師も殺さず」の対義語 – 無慈悲や弱肉強食

弱い者を切り捨てたり、情け容赦なく扱ったりする態度や考え方が対照的です。

  • 弱肉強食:強者が生き残り、弱者が犠牲になる。自然界の摂理や過酷な競争社会を表現。
  • 勝てば官軍:勝者が正義とされ、敗者は正当性を失うという考え方。
  • 冷酷無比:これ以上ないほど冷たく思いやりのない様子。
  • 情け容赦ない:相手に対して一切の手加減や同情をしない。

「窮鳥懐に入れば猟師も殺さず」の英語での類似表現

英語で、助けを求める者への慈悲や寛容さを示す表現です。

  • Even the hunter won’t kill a bird that flies into his bosom for refuge.
    直訳に近い表現。説明的ではありますが、「窮鳥懐に入れば猟師も殺さず」と同様のイメージです。
  • Have pity on the distressed.
    困窮している者には憐れみをかけるべきという意味。
  • Mercy should be shown to the vanquished.
    敗者には慈悲を持つべきという教え。戦争や競争においての倫理観を示す言い回しです。
  • Turn the other cheek.
    キリスト教における「敵に報復せず、寛容の心を持て」という教え。

まとめ:思いやりを忘れずに

「窮鳥懐に入れば猟師も殺さず」は、困窮して頼ってきた者には、たとえそれがかつての敵であっても情けをかけよという、人としての基本的な優しさや慈悲の心を伝えることわざです。

現代では、状況によっては複雑な判断が求められる場面もありますが、それでもなお「弱者に対して思いやりを持つ」という姿勢は、時代を問わず重要な価値観であることに変わりはありません。

このことわざは、私たちに想像力と寛容さを忘れずに、人間らしい対応をしようと静かに語りかけているのです。

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