勝てば官軍、負ければ賊軍

ことわざ
勝てば官軍、負ければ賊軍(かてばかんぐん、まければぞくぐん)
短縮形:勝てば官軍/負ければ賊軍

16文字の言葉か・が」から始まる言葉
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歴史に満ちた日本のことわざ「勝てば官軍、負ければ賊軍」は、権力と勝敗の関係を鋭く切り取った表現です。
このことわざには、勝者と敗者の境遇の違いや、世の中の評価基準について深い洞察が込められています。
歴史上の様々な権力闘争を背景に生まれた言葉ですが、現代社会においても様々な場面で使われる普遍的な教えを含んでいます。

「勝てば官軍、負ければ賊軍」の意味・教訓

「勝てば官軍、負ければ賊軍」とは、勝負に勝てば正義の側(官軍)として称えられ、負ければ悪者(賊軍)として扱われるという意味のことわざです。
物事の良し悪しや正邪の判断が、結果や勝敗によって左右されることを皮肉った表現でもあります。
つまり、同じ行為や主張であっても、成功すれば正当化され褒め称えられる一方、失敗すれば非難や批判の対象になるという世の中の理不尽さを表しています。
この言葉は、世間の評価がいかに結果本位であるかを教えてくれると同時に、物事の本質を見極める大切さも示唆しています。

「勝てば官軍、負ければ賊軍」の語源 – 歴史的背景

このことわざの起源は、日本の歴史上の内乱や政変に由来しています。
特に江戸時代に入る前の戦国時代から安土桃山時代にかけての権力争いが背景にあると言われています。
勝者が「天下の正統な統治者(官軍)」となり、敗者が「反逆者(賊軍)」とされた歴史の繰り返しを表しています。

明治維新の際の旧幕府軍と新政府軍の対立などもこの言葉の意味を強く反映しており、権力を得た側が歴史を書き換え、正義を定義してきた歴史的現実を凝縮した表現です。

「勝てば官軍、負ければ賊軍」が使われる場面と例文

このことわざは、結果によって評価が大きく変わる状況や、成功と失敗の境界線の曖昧さを指摘する場面で使われます。
特にビジネスの世界や政治の場面、社会的な論争において、成功者が称賛され失敗者が非難される皮肉な現実を表現する時に用いられます。

例文

  • 新規事業は成功すれば経営判断として評価されるが、失敗すれば責任問題になる。まさに勝てば官軍、負ければ賊軍だ。
  • 選挙戦において、当選すれば政策の正当性が認められるが、落選すれば批判の対象となる。勝てば官軍、負ければ賊軍の世界である。
  • 企業の買収劇も勝てば官軍、負ければ賊軍で、結果によって英雄にも悪役にもなり得る。
  • スポーツの世界でも、勝負に勝てば称賛され、負ければ批判される。勝てば官軍、負ければ賊軍の論理が働いている。

文学作品やメディアでの使用例

司馬遼太郎の歴史小説においても、この言葉の本質を描写する場面が見られます。
特に「竜馬がゆく」などの幕末を舞台にした作品では、歴史の転換点において正義と不正義の境界線がいかに曖昧であるかが描かれています。

「勝てば官軍、負ければ賊軍」の類義語

  • 成敗は時の運
    成功するか失敗するかは、その時の運によるところが大きいという意味。
    結果の偶然性を強調する点で共通するが、「勝てば官軍」が評価の二面性を強調するのに対し、こちらは運命論的な側面を強調する。
  • 勝者総てを手に入れる
    勝った者がすべてを獲得するという意味。
    結果が全てを決めるという点で共通するが、より直接的な表現である。
  • 果実は勝者のもの
    勝利した者が成果を手にするという意味。
    「勝てば官軍」が評価の変化に焦点を当てるのに対し、こちらは利益の獲得に焦点を当てている。

「勝てば官軍、負ければ賊軍」の対義語

  • 真理は不滅
    真実は時間や状況に左右されず永遠に存在するという意味。
    結果によって評価が変わる「勝てば官軍」の対極にある考え方。
  • 正義は勝つ
    最終的には正しいことが認められ勝利するという信念を表す言葉。
    結果本位ではなく、正義の普遍性を信じる点で対義的。
  • 実るほど頭を垂れる稲穂かな
    本当の価値のあるものは謙虚であるという教え。
    外部からの評価ではなく内在的な価値を重視する点で、「勝てば官軍」とは対照的。

「勝てば官軍、負ければ賊軍」の英語での類似表現

  • History is written by the victors.
    意味:歴史は勝者によって書かれるという意味。
    勝者が自分たちに都合の良いように歴史を記録し解釈するという点で、「勝てば官軍、負ければ賊軍」と非常に近い概念を表している。
  • Might makes right.
    意味:力こそが正義を決定するという意味。力や権力を持つ者が「正しい」とされることを示す点で類似している。
  • Success has many fathers, but failure is an orphan.
    意味:成功には多くの父親(関与を主張する人)がいるが、失敗は孤児(誰も関与を認めない)だという意味。
    結果によって人々の態度が変わることを皮肉っている点で共通している。

「勝てば官軍、負ければ賊軍」に関する豆知識

この言葉は、幕末の混乱期に特に顕著に見られた現象を表しています。
例えば、明治維新において薩長同盟が勝利を収めた結果、彼らは「官軍」として正当化され、敗れた旧幕府側は「賊軍」とされました。
しかし、もし結果が逆であれば、歴史の評価も逆転していたでしょう。
歴史観の相対性を示す典型的な例として歴史学の分野でも言及されることがあります。

まとめ – 「勝てば官軍、負ければ賊軍」が問いかけるもの

「勝てば官軍、負ければ賊軍」は、結果による評価の変動という世の理不尽さを鋭く捉えた日本のことわざです。
この言葉が教えてくれるのは、世間の評価が必ずしも物事の本質を反映していないという事実と、表面的な勝ち負けだけでなく、行動の本質や価値を見極める目を持つことの大切さです。
現代社会においても、結果だけでなくプロセスや本質を重視する姿勢は、より公正で深い理解につながるでしょう。

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