意味
「火に油を注ぐ(ひにあぶらをそそぐ)」とは、燃え盛る火に油を注げば火の勢いが強まることを、人の怒りや世の中の混乱・もめごとに当てはめたたとえです。
「余計な手出しをして事態をひどくする」ことを戒める意味を含んでいます。
また、激しい憎しみや恋心をいっそうあおることのたとえとしても使われます。
語源・由来
燃え盛る火に油を注げば、さらに激しく燃え上がるという自然の理に基づいた比喩表現です。
古くは「燃ゆる火に油を注ぐ」の形で使われ、「油」の代わりに「薪」とする言い方も多くありました。
使い方・例文
怒りや争い、騒動などのよくない状況が、誰かの不用意な言動によってさらに激化する場面で使われます。
- 彼の無責任な言い訳は、部長の怒りに対して火に油を注ぐ結果となった。
- 住民の不安を煽るような報道は、今回の騒動では火に油を注ぐことになりかねない。
誤用・注意点
「火に油を注ぐ」は、悪い状況をさらに悪化させる場面や、激しい憎しみ・恋心をさらにあおる場面で使われます。
「やる気に満ちているチームに刺激を与えて、火に油を注ぐように盛り上げる」といった良い意味で使うのは誤用です。
良い方向への勢いには「拍車をかける」「熱を帯びる」などが合います。
類義語・関連語
「火に油を注ぐ」と似た意味を持つ、トラブルを大きくする言葉を紹介します。
- 薪に油を添える(まきにあぶらをそえる):
燃えている薪にさらに油をかけて火勢を強くすること。「火に油を注ぐ」と全く同じ意味の言葉。 - 波風を立てる(なみかぜをたてる):
もめ事や騒ぎを引き起こすこと。平和な状態を荒立てること。 - 逆撫でする(さかなでする):
人の気持ちに逆らって、わざと怒らせるような言動をすること。
対義語
「火に油を注ぐ」とは対照的に、勢いを削いだり、邪魔をしたりする状態を表す言葉です。
- 冷や水を浴びせる(ひやみずをあびせる):
勢いよく進行しているものに水を差して、その勢いを削ぐこと。 - 水を差す(みずをさす):
うまくいっている物事の邪魔をしたり、盛り上がっている座の興を削いだりすること。
英語表現
add fuel to the fire
火に燃料(油)をくべる、状況を悪化させるという意味の表現。
His rude comments only added fuel to the fire.
(彼の失礼なコメントは、火に油を注ぐ結果にしかならなかった。)
「火に油を注ぐ」は小説『火の柱』の演説会に出てくる
木下尚江が明治37年(1904年)に新聞に連載した小説『火の柱』に、この言葉が出てくる場面があります。
戦争熱のさなか、戦争に反対する非戦論の演説会が開かれ、会場は人であふれていました。
主人公の篠田長二が演壇に立つと、警官が解散を命じ、聴衆は総立ちになって「革命」と叫びます。
篠田は右手を伸ばして「静に」と群衆を黙らせ、こう言って一礼し、立ち去ります。
火に油注ぐ者の火傷は、我等の微力に救ふことは出来ませぬ
(火に油を注ぐようなことをする者がやけどを負っても、私たちの小さな力では救えません)
ふつう「火に油を注ぐ」は事態をいっそう悪くすることを言いますが、篠田は誰とは名指しせず、油を注いだ側が自分でやけどを負うところまで言っています。












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