無理が通れば道理引っ込む

スポンサーリンク
ことわざ 慣用句
無理が通れば道理引っ込む
(むりがとおればどうりひっこむ)
異形:無理が通れば道理が引っ込む/無理を通せば道理が引っ込む

14文字の言葉」から始まる言葉

正しいことが通用せず、理不尽な力がまかり通ってしまう世の中。
権力者のわがままや声の大きい人の意見に押し切られ、正論がかき消されてしまう。

そんな悔しい状況を、「無理が通れば道理引っ込む」(むりがとおればどうりひっこむ)と言います。

古くから「世の中の矛盾」を鋭く突いた言葉として、現代でも多くの共感を呼んでいます。

意味

「無理が通れば道理引っ込む」とは、筋道の通らないことが世の中で幅を利かすようになると、正しい道理が行われなくなるという意味です。

正当な理屈や正義が、不当な力や権力によってねじ伏せられてしまう状況を嘆く言葉として使われます。

  • 無理:道理に合わないこと。筋道が通らないこと。
  • 道理:物事の正しい筋道。人として行うべき正しい道。
  • 引っ込む:表に出なくなる。姿を消す。

不正や理不尽な要求(無理)がまかり通る社会では、正義(道理)は居場所を失い、隠れてしまうという因果関係を表しています。

語源・由来

「無理が通れば道理引っ込む」は、江戸時代の庶民の生活実感から生まれ、広く語り継がれてきた言葉です。

この言葉が日本全国に定着した大きな要因には、江戸時代の「いろはかるた」の普及があります。
当時、地域によって異なる内容の「かるた」が作られていましたが、この言葉は京都や大阪を中心とする「上方(かみがた)いろはかるた」の「む」の読み札として採用されていました。

権力を持つ武士や、金を持つ商人の横暴に対し、庶民が抱いていた「諦め」や「皮肉」の感情が、この言葉を広める原動力になったと考えられています。

使い方・例文

「無理が通れば道理引っ込む」は、理不尽な決定に対する不満、諦め、批判を表す場面で使われます。

会社や組織での決定、政治のニュース、あるいは家庭内の理不尽なルールなど、規模の大小を問わず「おかしなことがまかり通る状況」全般で使用できます。

例文

  • 社長の鶴の一声で、全社員が反対した企画が採用された。まさに「無理が通れば道理引っ込む」だ。
  • 声の大きい人の意見ばかりが優先され、真面目な人の提案が無視されるなんて、「無理が通れば道理引っ込む」世の中だ。
  • 「先輩の言うことは絶対」という理不尽な部のルールには、「無理が通れば道理引っ込む」と感じざるを得ない。

類義語・関連語

「無理が通れば道理引っ込む」と似た意味を持つ言葉には、理不尽な力関係を表す表現が多くあります。

  • 泣く子と地頭には勝てぬ(なくことじとうにはかてぬ):
    道理が通じない相手や権力者には、いくら正論を言っても無駄であり、従うしかないということ。
    「地頭」は鎌倉・室町時代の役人で、横暴な振る舞いが多かったとされる。
  • 地獄の沙汰も金次第(じごくのさたもかねしだい):
    この世だけでなく地獄の裁判でさえ、金があれば有利になる。
    正義よりも金が物を言うことのたとえ。
  • 勝てば官軍、負ければ賊軍(かてばかんぐん、まければぞくぐん):
    戦いに勝った者が正義となり、負けた者が悪とされること。
    道理よりも「力(勝敗)」が正義を決めるさま。
  • 悪貨は良貨を駆逐する(あっかはりょうかをくちくする):
    もとは経済の法則(グレシャムの法則)だが、転じて「悪いものがはびこると、良いものが圧倒されて滅びてしまう」という意味でも使われる。

対義語

「無理が通れば道理引っ込む」とは対照的な意味を持つ言葉は、正義が必ず勝つこと、あるいは正義が悪を挫くことを示す言葉です。

  • 邪は正に勝たず(よこしまはまさにかたず):
    不正なことは、正しいことには決して勝てないということ。
    一時的には不正が栄えても、最終的には正義が勝つという教え。
  • 天網恢恢疎にして漏らさず(てんもうかいかいそにしてもらさず):
    天の張る網は広く、目は粗いが、悪人を漏らすことなく必ず捕らえる。
    悪事は決して栄えず、必ず報いを受けるということ。

英語表現

「無理が通れば道理引っ込む」を英語で表現する場合、力関係と正義の逆転を示すフレーズが使われます。

Might makes right.

  • 直訳:力が正義を作る。
  • 意味:「力こそ正義」
  • 解説:勝者や権力者の理屈が正しいこととして通ってしまう状況を表します。「勝てば官軍」や「無理が通れば~」と同じく、道理よりも力が優先される状況に対する皮肉として使われます。
  • 例文:
    In this corrupt system, might makes right.
    (この腐敗したシステムでは、力が正義となってしまう。)

無理にまつわる豆知識

「無理」の本来の意味

現代では「不可能」「困難」という意味で使われる「無理」ですが、もともとは「道理が無い(理が無い)」という状態そのものを指す言葉です。

単に「難しい」のではなく、「あるべき筋道から外れている」ことが本来の「無理」です。
したがって、「無理が通れば~」ということわざは、「不可能なことが可能になる」という奇跡の話ではなく、「筋道の通らないデタラメがまかり通ってしまう」という社会の病理を嘆く言葉なのです。

まとめ

「無理が通れば道理引っ込む」は、理不尽な力が正義を押し流してしまう状況を鋭く表現したことわざです。

組織や社会において、声の大きさや権力が優先され、正しい理屈が無視される場面は残念ながら少なくありません。
この言葉は、そんなやるせない状況に対する批判であると同時に、「本来あるべき道理とは何か」を私たちに問いかける警告の言葉であるとも言えるでしょう。

スポンサーリンク

コメント