意味
「無理が通れば道理引っ込む(むりがとおればどうりひっこむ)」とは、筋道の通らないことが世の中で幅を利かすようになると、正しい道理が行われなくなるという意味です。
正当な理屈や正義が、不当な力や権力によってねじ伏せられてしまう状況を嘆く言葉として使われます。
- 無理:道理に合わないこと。筋道が通らないこと。
- 道理:物事の正しい筋道。人として行うべき正しい道。
- 引っ込む:表に出なくなる。姿を消す。
不正や理不尽な要求(無理)がまかり通る社会では、正義(道理)は居場所を失い、隠れてしまうという因果関係を表しています。
語源・由来
「無理が通れば道理引っ込む」は、江戸いろはかるたの「む」の札に採られたことわざです。
古い絵札には、相手に脅しをかける奴が描かれていました。
腕力の強い者や権力者が無理を押し通せば、力のない者には対抗する手段がなく、道理は後ろへ下がるしかありません。
一方で、勝ち目のない相手とはまともに争わず、道理をいったん引っ込めるのも弱い立場の者の知恵だとする受け取り方もあり、使い方によっては無理を通す強者への批判にもなります。
使い方・例文
「無理が通れば道理引っ込む」は、理不尽な決定に対する不満、諦め、批判を表す場面で使われます。
会社や組織での決定、政治のニュース、あるいは家庭内の理不尽なルールなど、規模の大小を問わず「おかしなことがまかり通る状況」全般で使用できます。
例文
- 鶴の一声で全社員が反対した企画が通った。無理が通れば道理引っ込むだ。
- 声の大きい人の意見だけが通る。無理が通れば道理引っ込む世の中だ。
- 「先輩は絶対」という部の掟には、無理が通れば道理引っ込むと感じる。
類義語・関連語
「無理が通れば道理引っ込む」と似た意味を持つ言葉には、理不尽な力関係を表す表現が多くあります。
- 泣く子と地頭には勝てぬ(なくことじとうにはかてぬ):
道理が通じない相手や権力者には、いくら正論を言っても無駄であり、従うしかないということ。
「地頭」は鎌倉・室町時代の役人で、横暴な振る舞いが多かったとされる。 - 地獄の沙汰も金次第(じごくのさたもかねしだい):
この世だけでなく地獄の裁判でさえ、金があれば有利になる。
正義よりも金が物を言うことのたとえ。 - 勝てば官軍、負ければ賊軍(かてばかんぐん、まければぞくぐん):
戦いに勝った者が正義となり、負けた者が悪とされること。
道理よりも「力(勝敗)」が正義を決めるさま。 - 悪貨は良貨を駆逐する(あっかはりょうかをくちくする):
もとは経済の法則(グレシャムの法則)だが、転じて「悪いものがはびこると、良いものが圧倒されて滅びてしまう」という意味でも使われる。
対義語
「無理が通れば道理引っ込む」とは対照的な意味を持つ言葉は、正義が必ず勝つこと、あるいは正義が悪を挫くことを示す言葉です。
- 邪は正に勝たず(じゃはせいにかたず):
不正なことは、正しいことには決して勝てないということ。
一時的には不正が栄えても、最終的には正義が勝つという教え。 - 天網恢恢疎にして漏らさず(てんもうかいかいそにしてもらさず):
天の張る網は広く、目は粗いが、悪人を漏らすことなく必ず捕らえる。
悪事は決して栄えず、必ず報いを受けるということ。
英語表現
「無理が通れば道理引っ込む」を英語で表現する場合、力関係と正義の逆転を示すフレーズが使われます。
Might makes right
直訳は「力が正義を作る」で、「力こそ正義」という意味を表す表現。
勝者や権力者の理屈が正しいこととして通ってしまう状況を表し、「勝てば官軍」や「無理が通れば~」と同じく、道理よりも力が優先される状況に対する皮肉として使われる。
In this corrupt system, might makes right.
(この腐敗したシステムでは、力が正義となってしまう。)
「難しい」の意味の「無理」は後から
今は「その日程は無理です」のように「できない」「難しい」の意味でよく使う「無理」ですが、古い用例をたどると順番は逆です。
「道理に反する」という意味の「無理」は、室町時代の1477年の書物にすでに例があります。
「行いにくい」「困難」という意味で確かめられる古い例は、江戸時代前期の1662年のものです。














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