ギリシアの有名なことわざ30選|意味・使い方・文化的背景を解説

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ギリシアの有名なことわざ 【特集】ことわざ・慣用句・四字熟語

古代ギリシアの哲学者ソクラテスやプラトンの思想、イソップ寓話の教訓、そして陽気で情熱的な地中海の人々の暮らし。
「ギリシアのことわざ」には、数千年の歴史の中で培われた人類共通の知恵と、ハッとさせられるような鋭い洞察が詰まっています。

「自分を知ること」の難しさから、人間関係の機微、日常のちょっとした笑い話まで。
西洋文化の源流でありながら、どこか日本の感覚にも通じる普遍的な教えは、現代を生きる私たちの心にも深く響くものです。

今回は、古代の哲学的名言から現代ギリシアで使われるユニークな言い回しまで、知っておきたい有名な30の言葉を厳選して紹介します。

【哲学・真理】古代の叡智に学ぶ

西洋哲学発祥の地であるギリシアには、人生の本質や真理を突いた言葉が数多く残されています。

汝自身を知れ

Γνῶθι σεαυτόν.
(グノーティ・セアウトン)

デルポイのアポロン神殿に刻まれていたとされる、古代ギリシアで最も有名な格言の一つです。
自分自身の能力、限界、そして人間という存在の儚(はかな)さを客観的に理解することこそが、すべての知恵の出発点であると説いています。
日本では「身の程を知る」や「足元を見つめる」といった感覚に近い、自己省察を促す言葉です。

無知の知

Οἶδα οὐδὲν εἰδώς.
(オイダ・ウーデン・エイドース)

「私は自分が何も知らないということを知っている」という意味。
哲学者ソクラテスの言葉として知られます。自分は知識があると思い込んでいる人よりも、自分の無知を自覚している人の方が、真理に一歩近づいているという逆説的な教えです。
日本の知らぬが仏とは異なり、こちらは「知ろうとする探求心」の重要性を示唆しています。

何事も過剰になるなかれ

Μηδὲν ἄγαν.
(メーデン・アガン)

こちらもアポロン神殿の銘文として知られる言葉。「中庸(ちゅうよう)」の精神を説いています。
勇気も度が過ぎれば無謀になり、慎重さも過ぎれば臆病になります。どんなに良いことでも、バランスを欠いては害になるという戒めです。
日本の過ぎたるは猶及ばざるが如しと全く同じ精神が、古代ギリシアにも息づいています。

万物は流転する

Τὰ πάντα ῥεῖ.
(タ・パンタ・レイ)

哲学者ヘラクレイトスの思想を表す言葉。「同じ川に二度入ることはできない」という表現でも知られます。
この世のあらゆるものは常に変化し続けており、留まることはないという真理です。
日本の『方丈記』にある「ゆく河の流れは絶えずして…」という無常観とも通じる、世界の本質を捉えた言葉です。

美しいものは困難である

Χαλεπὰ τὰ καλά.
(カレパ・タ・カラ)

プラトンの対話篇などに登場する言葉です。
本当に価値のあるもの、善いもの、美しいものを手に入れるには、それ相応の努力や苦しみが伴うという教えです。
安易に手に入るものに真の価値はないと自分を戒め、困難な目標に向かう際の励ましとして使われます。

遅れて学ぶは学ばぬに勝る

Κάλλιον ὀψιμαθία ἢ ἀμαθία.
(カリオン・オプシマティア・エー・アマティア)

「今さら勉強しても遅い」と諦めてしまう人への最高のエールです。
学ぶのに遅すぎるということはなく、無知のままで一生を終えるよりは、晩年になってからでも学ぶ方がずっと良いという意味です。
日本の「六十の手習い」と同様、生涯学習の重要性を説いています。

【人生・運命】強く生きるための指針

運命の女神「テュケー」を信じつつも、自らの行動で運命を切り開こうとする力強い言葉たちです。

賽は投げられた(さいはなげられた)

Ἀνερρίφθω κύβος.
(アネリフトー・キュボス)

ローマの英雄カエサルがルビコン川を渡る際に言った言葉として有名ですが、元々はギリシアの喜劇作家メナンドロスの作品からの引用です。
重大な決断を下し、もう後戻りはできないという覚悟を決めた状況を表します。

幸運は勇者に味方する

Τοῖς θαρροῦσι βοηθεῖ ἡ τύχη.
(トイス・タルーシ・ボエテイ・ヘー・テュケー)

運命の女神は、臆病な者ではなく、リスクを恐れず大胆に行動する者を助けるという意味。
虎穴に入らずんば虎子を得ず」のように、成功をつかむためには勇気ある行動が不可欠であることを教えてくれます。

始まりは全体の半分

Ἀρχὴ ἥμισυ παντός.
(アルケー・へーミス・パントス)

何事も「始めること」が最も難しく、かつ重要です。
最初の一歩さえ踏み出してしまえば、その仕事の半分は終わったも同然だという、アリストテレスも引用したポジティブな言葉。
思い立ったが吉日」のように、スタートの重要性を強調しています。

一羽のツバメが春を作るのではない

Μία χελιδὼν ἔαρ οὐ ποιεῖ.
(ミア・ケリドーン・エア・ウ・ポイエイ)

たった一つの良い兆候(ツバメを一羽見たこと)だけで、「もう春が来た」と早合点してはいけないという戒めです。
アリストテレスやイソップ寓話に由来し、一部の事例だけで全体を判断することの危うさを説いています。
物事は慎重に見極める必要があります。

急ぐ者はつまずく

Όποιος βιάζεται σκοντάφτει.
(オピオス・ヴィアゼテ・スコンダフティ)

急いては事を仕損じる」や「急がば回れ」のギリシア版。
現代でもよく使われる表現で、焦って行動するとミスを犯しやすいことを警告しています。
古代ローマでは「ゆっくり急げ(フェスティナ・レンテ)」とも言われました。

常に最善を尽くす

Αἰὲν ἀριστεύειν.
(アイエン・アリステュエイン)

ホメロスの叙事詩『イリアス』に登場する英雄の心構え。
他者との比較ではなく、自分自身の「卓越性(アレテー)」を追求し、常にベストを尽くすことの尊さを説く言葉です。
現代においても、プロフェッショナリズムや向上心の象徴として引用されます。

【人間関係・社会】処世術と人付き合い

古代のポリス(都市国家)社会から現代の村社会まで、人間関係を円滑にするための知恵です。

贈り物をもたらすダナイ人を恐れよ

Φοβοῦ τοὺς Δαναοὺς καὶ δῶρα φέροντας.
(フォブー・トゥース・ダナウース・カイ・ドーラ・フェロンタス)

トロイア戦争で、ギリシア軍(ダナイ人)が置いていった巨大な木馬(トロイの木馬)を怪しんだ神官の言葉に由来します。
敵対する相手や、普段親しくない人が急にすり寄ってきた時は、その裏に罠があるかもしれないと警戒せよという教訓です。
「うまい話には裏がある」「ただより高いものはない」という状況で使われます。

フクロウをアテナイに運ぶ

Γλαῦκ’ Ἀθήναζε.
(グラウク・アテーナゼ)

アテナイ(アテネ)は女神アテナを守護神とし、その聖鳥であるフクロウがたくさんいました。
そこへわざわざフクロウを持っていくことから、「無駄なこと」「必要のないことをする」という意味で使われます。
日本でいう「釈迦に説法」に近いですが、こちらは「余計な供給」というニュアンスが強い表現です。

ハチミツを使えば酢よりも多くのハエが捕れる

Με το μέλι πιάνεις περισσότερες μύγες παρά με το ξύδι.
(メ・ト・メリ・ピアニス・ペリソテレス・ミゲス・パラ・メ・ト・クシディ)

人を動かすのに、厳しさ(酢)よりも優しさ(ハチミツ)の方が効果的だという教えです。
批判や怒りで相手を従わせようとするのではなく、「柔よく剛を制す」や「怒りは敵と思え」のように、穏やかな態度で接することの重要性を説いています。

ランクが上なら敬意も先に

Ὁ πρῶτος τῇ τάξει καὶ πρῶτος ἔστω τῇ τιμῇ.
(ホ・プロートス・テー・タクセイ・カイ・プロートス・エストー・テー・ティメー)

社会的な序列や立場が上の人には、それにふさわしい敬意を払うべきだというマナー。
日本でいう「長幼の序」や年功序列の感覚に近い、社会秩序を重んじる言葉です。

ダンスの外にいれば、たくさんの歌を知っている

Έξω απ’ τον χορό, πολλά τραγούδια ξέρεις.
(エクソ・アプ・トン・ホロ・ポラ・トラグディア・クセリス)

当事者として苦労していない人間(踊りの輪の外にいる人)に限って、気楽に批判したり、口出ししたりできるという皮肉です。
岡目八目と似ていますが、こちらは「無責任な外野の批判」に対する苛立ちが含まれています。

目に見えぬ目は、すぐに忘れられる

Μάτια που δε βλέπονται, γρήγορα λησμονιούνται.
(マティア・プ・デ・ヴレポンテ・グリゴラ・リスモニウンテ)

物理的な距離は心の距離も遠ざけるという意味。
去る者は日々に疎し」と同じく、会わなくなれば関係は薄れ、やがて忘れ去られてしまうという人間関係の現実を表しています。

レイヴンズ(カラス)へ行け!

Ἐς κόρακας. (エス・コラカス)

古代から使われている強い拒絶の言葉。「地獄へ落ちろ!」「くたばれ!」に近いニュアンスです。
カラスが死肉をあさる不吉な鳥であることから、「カラスの餌食になれ(死んでしまえ)」という意味合いで使われた罵倒語ですが、古典文学を知る上での豆知識として有名です。

【日常・寓話】現代ギリシアの暮らしと知恵

イソップ寓話や日々の生活から生まれた、ユーモアと風刺に富んだ表現です。

ラクダは自分のこぶを見ない

Η καμήλα δεν βλέπει την καμπούρα της.
(イ・カミラ・デン・ヴレピ・ティン・カンプラ・ティス)

人は他人の欠点には敏感ですが、自分の欠点には気づかないものです。
「自分のことは棚に上げる」や「灯台下暗し」のように、自己客観視の難しさを動物に例えてユーモラスに指摘しています。

狼は老いても毛が変わるだけ

Ο λύκος κι αν εγέρασε…
(オ・リコス・キ・アン・エゲラセ…)

「狼は老いて毛の色が変わっても、その頭(考え)や本性は変わらない」という意味。
悪人や頑固な人の性質は、歳をとっても簡単には治らないことを示唆します。
三つ子の魂百まで」のネガティブな側面を表した言葉と言えます。

賢者の子は空腹になる前に料理する

Των φρονίμων τα παιδιά πριν πεινάσουν μαγειρεύουν.
(トン・フロニモン・タ・ペディア・プリン・ピナスン・マギレヴン)

賢い人は、問題が起きる前に対策を講じているものです。
お腹が空いてから慌てるのではなく、事前に準備をしておくことの大切さ。
備えあれば憂いなし」や「転ばぬ先の杖」と同じ意味を持つ、生活の知恵です。

豆から豆へ、袋は満ちる

Φασούλι το φασούλι, γεμίζει το σακούλι.
(ファスリ・ト・ファスリ・ゲミジ・ト・サクリ)

小さな豆も、一粒ずつ袋に入れていけば、やがて一杯になります。
塵も積もれば山となる」や「千里の道も一歩から」と同じく、コツコツとした貯蓄や努力が大きな成果を生むことを教えてくれます。

清潔さは貴族の半分

Η καθαριότητα είναι μισή αρχοντιά.
(イ・カサリオティタ・イネ・ミシ・アルホンティア)

身だしなみを整え清潔にしていることは、その人の品格(貴族らしさ)の半分を占めるほど重要だという意味。
見た目の清潔感が、周囲からの信頼や評価に直結することを示す言葉です。

バジルは枯れても香りを失うか?

Βασιλικός κι αν μαραθεί, τη μυρωδιά τη χάνει;
(ヴァシリコス・キ・アン・マラテイ・ティ・ミロディア・ティ・ハニ)

バジルは枯れてしまっても、その芳醇な香りは残ります。
それと同じように、本当に価値のある人や才能は、老いたり落ちぶれたりしても、その本質的な輝きや美徳を失うことはないという、美しい比喩表現です。

自分の服に気をつけよ、さらば半ばを得ん

Φύλαγε τα ρούχα σου, να ‘χεις τα μισά.
(フィラゲ・タ・ルハ・ス・ナ・ヒス・タ・ミサ)

自分の持ち物をしっかり管理していれば、少なくとも半分は守ることができる(逆に言えば、注意していても半分持っていかれるのが世の常だ)という、少し世知辛い教訓です。
「自分の身は自分で守れ」という用心深さを促します。

魚は唇で焼かれる

Το ψάρι ψήνεται στα χείλη.
(ト・プサリ・プシネテ・スタ・ヒリ)

食べるのが待ちきれず、焼けてもいない魚の味が口の中に広がっているかのような状態。
何かを強烈に期待して待ち焦(こ)がれている様子を表す、食文化豊かなギリシアらしい表現です。

君の口から神の耳へ

Από το στόμα σου και στου Θεού τ’ αυτί.
(アポ・ト・ストマ・ス・ケ・ストゥ・テウ・タフティ)

相手が良いことや希望を言った時に、「本当にそうなりますように」と同意して返す決まり文句です。
言葉には力があり、それが神様に届いて現実になることを願う、ポジティブな祈りの言葉です。

みんな輪になって、真ん中にマノリス

Γύρω γύρω όλοι και στη μέση ο Μανώλης.
(ギロ・ギロ・オリ・ケ・スティ・メシ・オ・マノリス)

子供の遊び歌に由来する表現。
特定の人物(マノリス)が注目の的になっていたり、みんなの中心にいる状況を指します。誰かが話題の中心になっている時などに、少しおどけて使われます。

愛は盲目

Τυφλὸς ὁ Ἔρως.
(テュフロス・ホ・エロース)

シェイクスピアで有名ですが、起源は古代ギリシアの詩人テオクリトスなどに遡ります。
恋に落ちると相手の欠点が見えなくなり、理性を失ってしまうこと。古今東西変わらぬ人間の性質です。

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