エジプトの有名なことわざ30選|人生の知恵と文化を学ぶ

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エジプトの有名なことわざ 【特集】ことわざ・慣用句・四字熟語

ピラミッドやスフィンクスに見られる悠久の歴史と、ナイル川の恵み。
「エジプトのことわざ」には、古代から受け継がれた深い知恵と、カイロの路地裏で交わされるような庶民のたくましさ、そして独特のユーモアが詰まっています。

イスラム教やコプト教の価値観をベースにしつつも、どこか人間臭くて現実的。
「運命(リズク)」を信じながらも、日々の生活を賢く生き抜こうとするエジプトの人々の言葉は、現代の私たちの悩みにも意外な解決策を与えてくれるかもしれません。

今回は、エジプト・アラビア語で親しまれている、人生を豊かにする有名なことわざ30選を紹介します。

もくじ
  1. 【処世術・本質】世渡りの知恵と人間の性
  2. 【人間関係・家族】絆と「おせっかい」の間
  3. 【運命・行動】神の意志と人の努力

【処世術・本質】世渡りの知恵と人間の性

社会生活を円滑に進めるための、少しシビアで現実的な教えです。

背中(後ろ盾)を持つ者は腹を殴られない

اِللِّي لُه ضَهْر مَا يِنْضِرِبْشِ عَلى بَطْنُه
(イッリ・ル・ダフル・マ・インディリブシ・アラ・バトヌ)

「背中(ダフル)」はコネや有力な支援者のこと。
強力なバックがいれば、正面から攻撃されたり、理不尽な目に遭ったりすることはないという、コネ社会の現実を表した言葉です。
日本の「虎の威を借る狐」に近いですが、こちらは「身を守るための盾」というニュアンスが強いです。

スープで舌をやけどした者は、ヨーグルトも吹く

اِللِّي اِتْلَسَعْ مِنْ اِلشُّرْبَة يِنْفُخْ فِي اِلزَّبَادِي
(イッリ・イトラサァ・ミン・イッショルバ・インフフ・フィ・ッザバーディ)

熱いスープで痛い目を見た人は、冷たいヨーグルトでさえ「熱いかも」と警戒してフーフーと息を吹きかける。
羹に懲りて膾を吹く」。一度の失敗やトラウマが原因で、必要以上に慎重になりすぎている様子をユーモラスに表現しています。

幽霊(イフリート)を怖がる者には、それが出る

اِللِّي يِخَافْ مِ الْعَفْرِيْت يِطْلَعْلُه
(イッリ・イハーフ・ミル・アフリート・イトラァル)

「イフリート」は魔神や精霊のこと。
悪いことばかり想像して恐れていると、かえってその恐れている事態を引き寄せてしまう。「引き寄せの法則」のネガティブ版です。
心配しすぎず、堂々としていることが大切だと説いています。

君を笑わせる者ではなく、泣かせる者の言葉を聞け

اِسْمَعْ كَلَامْ اِللِّي يِبَكِّيْك وَلَا تِسْمَعْش كَلَامْ اِللِّي يِضَحَّكِك
(イスマァ・カラーム・イッリ・ユバッキーク・ワラ・ティスマァシ・カラーム・イッリ・ユダッハキク)

良薬は口に苦し
耳に心地よいお世辞や甘い言葉ばかり言う人ではなく、時には厳しく叱ってくれたり、耳の痛い真実を指摘してくれたりする人こそが、本当にあなたのことを考えている人です。

お金は魂(人)を変える

اِلْفُلُوس بِتْغَيَّر اِلنُّفُوس
(イル・フルース・ビトガイヤル・インヌフース)

お金や権力を手にした途端、性格が傲慢になったり、態度が急変したりする人がいます。
富が持つ魔力と、それによって変わってしまう人間の弱さを突いた普遍的な警句です。

力を得るまでは謙虚に振る舞え

اِتْمَسْكِنْ لَحَدّ مَا تِتْمَكِّنْ
(イトマスキン・ラハッド・マ・ティトマッキン)

「みじめなふり(謙虚なふり)をせよ、支配できる(力を持つ)までは」。
目的を達成するまでは、爪を隠して低姿勢でいなさいという、非常に戦略的な処世術です。
能ある鷹は爪を隠す」の実践編とも言えます。

白髪になってから学校へ連れて行くのか?

بَعْد مَا شَاب وَدُّوهْ اِلْكُتَّاب؟
(バァド・マ・シャーブ・ワッドゥー・イルクッターブ?)

「クッターブ」は昔の子供向けの学校。
お爺さんになってから読み書きを習わせようとしても遅すぎる、という意味。
六日の菖蒲」のように、物事には適切な時期があり、手遅れになってからでは意味がないことを皮肉交じりに問いかける表現です。

頭にコブがある者は、それを触る

اِللّي عَلى راسُه بَطْحَة بِحَسِّس عَلَيها
(イッリ・アラ・ラス・バトハ・ビハッシス・アライハ)

やましいことがある人は、誰かがその話題に触れると、自分のことではないかとビクビクして反応してしまう。
「痛い腹を探られる」心理状態を表しており、挙動不審な人を見抜く際によく使われます。

お腹の中に夏のスイカを入れなさい

حُطْ فِي بَطْنَك بَطِّيخَة صِيْفِي
(ホット・フィ・バトナク・バッティーハ・スィーフィ)

エジプトの夏、冷えたスイカはお腹を冷やし、心地よくさせるご馳走です。
「冷たいスイカを食べた後のように、リラックスして安心しなさい」「ドンと構えていなさい」という意味で、不安がっている友人を励ます時の定番フレーズです。

知らない者は「レンズ豆」と言う

اِللِّي مَا يِعْرَفْش يِقُولْ عَدْس
(イッリ・マ・イァラフシ・ユウール・アッズ)

事情をよく知らないくせに、知ったかぶりをして的外れなことを言う人への皮肉です。
「アッズ(レンズ豆)」はエジプトの庶民的な食材。昔、泥棒が逃げる際にレンズ豆の袋につまずいてこぼし、追いかけてきた人が「なんだ、ただ豆を盗んだだけか」と勘違いしたという逸話など、諸説あります。

【人間関係・家族】絆と「おせっかい」の間

家族や隣人との距離が近いエジプト社会ならではの、濃厚な人間関係を表す言葉です。

猿も母の目にはガゼル

القِرْد فِي عَيْن أُمُّه غَزَال
(イル・イルド・フィ・アイン・ウンム・ガザール)

痘痕もえくぼ
客観的に見れば猿のような容姿でも、母親の目には美しいガゼル(美の象徴)のように映る。
親の欲目や、盲目的な愛情を指す言葉として、エジプトで最も有名なことわざの一つです。

片手だけでは拍手できない

اِيد لِوَحْدَهَا مَا تْسَقَّفْش
(イード・リワハダハ・マ・トサッラフシ)

「孤掌鳴り難し」
どれほど優秀な人でも、一人きりでは大きな成果(拍手)は生み出せない。
協力やチームワーク、そして結婚生活におけるパートナーとの協力の重要性を説く際によく使われます。

家より先に隣人を選べ

اِلجَار قَبْل اِلدَّار
(イル・ガール・アブル・イッダール)

どんなに立派な豪邸に住んでも、隣人が悪ければ生活は地獄になります。
遠くの親戚より近くの他人以上に、物理的な隣人関係の質を重視する、密集したコミュニティ社会の知恵です。

母と結婚する人を、私は「叔父さん」と呼ぶ

اِللِّي يِتْجَوِّزْ أُمِّي أَقُول لُه يَا عَمِّي
(イッリ・イトガッウィズ・ウンミ・アウール・ル・ヤ・アンミ)

たとえ気に入らない相手でも、自分の母親と再婚したなら、敬意を込めて「叔父さん」と呼ばなければならない。
自分の力ではどうにもならない権力構造や、不本意な現実に対しては、意地を張らずに適応し、従うのが賢い生き方だという処世術です。「長いものには巻かれろ」の一種です。

鍋をひっくり返すと、娘は母に似て出てくる

اِقْلِبْ اِلْقِدْرَة عَلى فُمَّهَا تِطْلَعْ اِلْبِنْت لِأُمَّهَا
(イリブ・イル・イドラ・アラ・フンマハ・ティトラァ・イル・ビント・リ・ウンマハ)

蛙の子は蛙
鍋(イドラ)の中身をあけると、そっくりの具が出てくるように、娘の性格や行動は母親にそっくりになるものだという意味。
結婚相手を選ぶ際などに、母親を見れば娘の将来がわかるといった文脈で使われます。

生計を断つのは、首を断つよりひどい

قَطْع اِلأَعْنَاق وَلَا قَطْع اِلأَرْزَاق
(アトァ・イル・アァナーク・ワラ・アトァ・イル・アルザーク)

人の仕事や収入源(リズク=神から与えられた糧)を奪うことは、その人の首を切り落とすよりも罪深いことだ。
解雇や商売の邪魔をすることに対する、非常に強い戒めと怒りを表す言葉です。

大工のドアは壊れている

باب النجار مخلع
(バーブ・インナッガ ール・ミハッラァ)

医者の不養生紺屋の白袴
家のドアを直すのが仕事の大工なのに、自分の家のドアはガタガタのままである。
専門家が自分のこととなると無頓着であることや、他人の世話ばかりで自分のことがおろそかになっている状態を指します。

犬は吠えるが、隊商(キャラバン)は進む

اِلْكِلاب تِنْبَح وَالقَافِلَة تَسِير
(イル・キラ イブ・ティンバハ・ワル・カーフィラ・タスィール)

野良犬がどれだけ吠えかかろうとも、砂漠を行く隊商は歩みを止めない。
つまらない批判や中傷(犬の遠吠え)など気にせず、自分の信じた道や目標に向かって堂々と進み続けなさいという、力強い励ましの言葉です。

【運命・行動】神の意志と人の努力

イスラム教の「リズク(糧・運命)」の概念と、現実的な行動力が融合した人生観です。

動き(行動)は祝福である

اِلْحَرَكَة بَرَكَة
(イル・ハラカ・バラカ)

じっとしていては何も始まらない。
体を動かし、働き、行動を起こすことで、神からの祝福(バラカ)や幸運がもたらされる。
蒔かぬ種は生えぬ」のように、行動することの尊さを説いています。

忍耐は解決の鍵

اِلصَّبْر مُفْتَاحْ اِلْفَرَج
(イッサブゥル・ムフターハ・イル・ファラガ)

アラブ世界で最も愛されていることわざの一つ。
「ファラガ」は苦悩からの解放や安らぎを意味します。どんなに辛い状況でも、忍耐(サブル)さえあれば、必ず解決の扉は開かれる。「石の上にも三年」の精神です。

風呂(ハンマーム)に入るのは、出るのと同じではない

دُخُولْ اِلْحَمَّام مِشْ زَيّ خُرُوجُه
(ドゥフール・イル・ハンマーム・ミシ・ザイ・フルーグ)

入るのは簡単でも、出るのは難しい。または、入る前と出た後では状況が一変している。
「足を洗うのは難しい」状況や、喧嘩を始めたら簡単には収まらない状況などで、「始める前によく考えろ、もう後戻りはできないぞ」という警告として使われます。

あなたのための日もあれば、あなたに逆らう日もある

يَوْم لَك وَيَوْم عَلَيْك
(ヨーム・ラック・ワ・ヨーム・アライク)

人生山あり谷あり
今日はツイていても、明日は敵に回るかもしれない。良いことがあっても調子に乗るな、悪いことがあっても落ち込みすぎるなという、運命の浮き沈みを達観した言葉です。

手の中の一羽の鳥は、木の上の十羽より良い

عُصْفُورْ فِي اِليَد وَلَا عَشَرَة عَلى الشَّجَرَة
(アスフール・フィル・ヤド・ワラ・アシャラ・アッシャガラ)

明日の百より今日の五十
捕まるかどうかわからない木の上のたくさんの鳥(大きな利益)を夢見るより、今確実に手の中にある一羽(小さな利益)を大切にせよ。夢ばかり追わず、現実を見ろという教えです。

野獣のように走っても、定めの糧しか得られない

اِجْرِي يَا ابْن اٰدَم جَرْيَ اِلْوُحُوش، غَيْر رِزْقَك لَمْ تَحُوش
(イグリ・ヤ・イブン・アーダム・ガルヤ・イル・ウフーシュ・ゲール・リズカク・ラム・タフーシュ)

人間があくせくと野獣のように走り回って努力しても、結局手に入るのは神が定めた「リズク(糧)」の分だけである。
ガツガツと欲をかいても仕方がない、運命を受け入れて満足しなさいという、宗教的な諦念と心の平安を説く言葉です。

水は潜水夫の嘘を暴く

اِلْمَيَّه تُكَذِّبْ اِلْغَطَّاس
(イル・マイヤ・トゥカッディブ・イル・ガッタース)

「俺は凄腕のダイバーだ」と自慢しても、水に入れば実力はすぐにバレる。
口先だけで大きなことを言っても、実際の現場や事実の前では嘘は隠せない。論より証拠です。

ポケットの中身を使えば、見えざる処から次が来る

اِصْرِفْ مَا فِي الْجَيْب يَأْتِيْكَ مَا فِي الْغَيْب
(イスリフ・マ・フィル・ゲイブ・ヤティーク・マ・フィル・ゲイブ)

「宵越しの銭は持たない」に近い、気前の良い精神。
ケチケチせずに手持ちのお金を使えば、神様が予期せぬところ(ガイブ=未知の世界)から富を補充してくれるだろうという、楽観的な金銭感覚です。

金を持て余すと、鳩を買って飛ばす

اِللِّي مَعَاه قِرْش مِحَيَّرُه، يِجِيْب حَمَام وَ يِطَيَّرُه
(イッリ・マァー・イルシ・ミハイヤル・イギーブ・ハマーム・ワ・イタイヤル)

お金の使い道を知らない成金が、鳩を買ってはすぐに空へ放つような、無意味な遊びに散財すること。
「悪銭身につかず」や、無駄遣いをする人への皮肉として使われます。

言葉は少なく、意味を示すものが良い

مَا قَلّ وَ دَلّ
(マ・カッラ・ワ・ダッラ)

「簡潔こそ機知の魂」。
ダラダラと長く話すよりも、短く本質を突いた言葉の方が優れている。おしゃべり好きなエジプト人にとっても、やはり簡潔さは美徳とされています。

知識は頭の中にあり、ノートの中にはない

اِلْعِلْم فِي اِلرَّاس مِشْ فِي اِلْكُرَّاس
(イル・イルム・フィ・ッラース・ミシ・フィ・ル・クラース)

畳の上の水練
学校のノートに書いただけでは知識とは言えない。それを理解し、自分の頭で考え、実践できてこそ本当の「知恵」になるという、実学重視の教えです。

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