ことわざ 慣用句

髪結いの乱れ髪

(かみゆいのみだれがみ)

他人のために専門技術を尽くすが、自分自身のことは疎かになること。

異形:髪結い髪結わず

10文字の言葉 / 「か・が」から始まる言葉
髪結いの乱れ髪 ことば
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意味

「髪結いの乱れ髪(かみゆいのみだれがみ)」とは、他人のためには専門の技術を惜しみなく発揮するが、自分自身のことには手が回らないことのたとえです。

  • 髪結い(かみゆい):江戸時代から明治にかけて、人々の髪を整えていた専門職。
  • 乱れ髪(みだれがみ):手入れがされず、バラバラになった髪の状態。

自分の専門分野でありながら、私生活や身近なケアが疎かになっている様子を、少しの皮肉や自嘲を交えて表現します。
これは怠慢というよりも、忙しすぎて余裕がない「プロゆえの多忙さ」を指すことが多い言葉です。

語源・由来

「髪結いの乱れ髪」の由来は、江戸時代に他人の髪を結い上げることを生業としていた「髪結い」の日常にあります。

髪結いはお客様の髪を美しく整えるのが仕事です。
当時は現代のような手軽なヘアセットではなく、複雑な日本髪を結っていたため、一人にかかる時間も相当なものでした。
その結果、プロでありながら自分自身の髪を整える暇がなく、いつも自分の髪は乱れたまま。
この職業特有の矛盾した光景を、皮肉を込めて言い表したのがこのことわざです。

使い方・例文

専門家が自分の得意分野において、私生活や身の回りの手入れを後回しにしている場面で使われます。

例文

  • 凄腕の大工の自宅が雨漏りしているとは、まさに髪結いの乱れ髪だ。
  • 医師が不摂生な生活を送るなど、髪結いの乱れ髪もいいところだ。
  • プロの掃除屋の部屋が散らかっており、髪結いの乱れ髪を実感した。

江戸の「髪結い」と現代の美容師・理容師

かつての「髪結い」は、現代でいう美容師や理容師(床屋さん)にあたりますが、その役割や法的な定義には明確な違いがあります。

職業主な役割と特徴
髪結い江戸時代、日本髪を結う専門職。
男性の髪を扱う「髪結い床(床屋)」と、女性の家を回る「女髪結い」がいた。
美容師主にカット、パーマ、セットなどで容姿を美しく整える。
美容師法に基づき、女性だけでなく男性への施術も行う。
理容師カットや整髪に加え、カミソリによる「顔剃り(シェービング)」を行う。
理容師法に基づき、容姿を整える。

現代の美容師や理容師が、お客様のカットに追われて自分の髪を切りに行く時間がないときも、この言葉がそのまま当てはまります。

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類義語・関連語

「髪結いの乱れ髪」と似た意味を持つ言葉には、別の職業に例えた表現がいくつかあります。

  • 紺屋の白袴(こうやのしろばかま):
    染物屋が他人の服ばかり染めて、自分は染めていない白い袴を履いていること。
  • 医者の不養生(いしゃのふようじょう):
    他人に健康を説く医者が、自分自身の健康管理を怠ること。
  • 易者身の上知らず(えきしゃみのうえしらず):
    他人の運勢を占う易者が、自分の将来については全く分からないこと。

対義語

「髪結いの乱れ髪」とは対照的な意味を持つ言葉は、自らの掲げる理想や技術を、自分自身にも正しく適用している状態を指します。

  • 言行一致(げんこういっち):
    口で言っていることと、実際の行動が矛盾なく一致していること。

英語表現

「髪結いの乱れ髪」を英語で表現する場合、靴屋に例えた以下の表現がよく使われます。

The shoemaker’s children go barefoot

「靴屋の子供は裸足で歩く」という意味。
他人の靴は作るが、自分の家族の靴まで手が回らない状況を指し、日本語の表現と全く同じニュアンスで使われます。

It is a case of the shoemaker’s children going barefoot.
(まさに髪結いの乱れ髪だ。)

駕籠かきや坊主も並ぶ髪結いの乱れ髪の類句

「髪結いの乱れ髪」は「髪結い髪結わず」とも言い、人の髪を結ってばかりで自分の髪は結わずにいる髪結いの姿を表しています。
同じ組み立ての言葉は、髪結いのほかにもさまざまな職業について言われてきました。

「大工の掘っ建て」は、人には立派な家を建てる大工が、自分は粗末な掘っ建て小屋に住んでいることです。
「駕籠舁かごかき駕籠に乗らず」は、人を乗せて駕籠を担ぐ駕籠舁きが、自分は駕籠に乗らないことを言います。
「陰陽師おんようじ身の上知らず」は、人の吉凶を占う陰陽師も自分の身の上は分からないという意味で、「易者身の上知らず」と同じ形です。
「坊主の不信心」は、人に信心を説く僧が、自分は信心が薄いことを指します。

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