意味
「医者の不養生(いしゃのふようじょう)」とは、他人に立派な説を説きながら、自分自身はそれを実行できていないことのたとえです。
- 医者:病気を治し、健康管理を指導する専門家。
- 不養生(ふようじょう):健康に注意を払わず、体を大切にしないこと。
本来、誰よりも健康の重要性を知っているはずの医者が、自らの管理を怠っているという皮肉が込められています。
単なる怠慢だけでなく、「理屈ではわかっていても、実践するのは難しい」という人間の弱さを教訓として伝えています。
語源・由来
「医者の不養生」は、患者に養生を勧める医者が、自分では意外に不摂生をしている、という見立てから来ています。
使い方・例文
知識や技術を持つ専門家が、自分のこととなると無頓着である場面や、自戒を込めた会話の中で使われます。
多くは「言うこととやることが違う」という批判や皮肉として用いられます。
- 運動を勧める指導員がまったく運動していないとは、まさに医者の不養生だ。
- 整理整頓のコツを本に書いているが、私の自室は医者の不養生で足の踏み場もない。
- 「美容部員なのに肌荒れとは医者の不養生でお恥ずかしい」と彼女は笑った。
類義語・関連語
「医者の不養生」と似た意味を持つ言葉には、専門分野によって以下のようなものがあります。
- 紺屋の白袴(こうやのしろばかま):
他人の布を染めるのに忙しく、自分は染めていない白い袴を履いていること。 - 髪結いの乱れ髪(かみゆいのみだれがみ):
他人の髪を美しく整える職人が、自分の髪には無頓着で乱れていること。 - 坊主の不信心(ぼうずのふしんじん):
信仰を説く立場の僧侶が、自分自身には信仰心がないこと。 - 言行不一致(げんこうふいっち):
言っていることと、実際に行っていることが一致しないこと。
対義語
「医者の不養生」とは対照的な意味を持つ言葉は、以下の通りです。
英語表現
「医者の不養生」を英語で表現する場合、以下のような定型句が使われます。
Physician, heal thyself
直訳は「医者よ、自分自身を治せ」で、新約聖書のルカによる福音書4章23節に出てくる言葉です。
人に忠告する前に、まず自分の欠点を正すべきだという意味で使われます。
He lectures everyone about sleep, yet he stays up every night. Physician, heal thyself.
(彼は皆に睡眠の大切さを説くが、自分は毎晩夜更かしだ。医者の不養生とはこのことだ。)
Practice what you preach
直訳は「説いていることを実践せよ」で、「医者の不養生」な状態を戒め、言うことを実行に移せと直接的に促す表現。
If you want people to trust you, you must practice what you preach.
(人に信頼されたいなら、自分の言っていることを実践しなければならない。)
「医者の不養生」は平賀源内の談義本で「坊主の不信心」と並ぶ
同じ意味を言う表現は、他の専門家にも数多くあります。
他人の着物を染めるのに忙しく自分の袴までは染めない「紺屋の白袴」、人に道を説きながら自身の行いが伴わない「儒者の不身持ち」、人を導く立場でありながら信心が薄い「坊主の不信心」などが並びます。
江戸中期に平賀源内が著した『風流志道軒伝』には「医者の不養生、坊主の不信心」という一節があり、この組み合わせが当時すでに一つの型として認識されていたことがうかがえます。














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