口だけで「やれ」と指示する上司と、自ら現場に立ち、背中で見せてくれる上司。
あなたが心から信頼し、ついていきたいと思うのはどちらでしょうか?
おそらく後者ではないでしょうか。
人の先に立ち、自ら行動で手本を示す。
そのような理想的なリーダーの姿を、「率先垂範」(そっせんすいはん)と言います。
意味
「率先垂範」とは、人の先頭に立って行動し、自らが手本(模範)を示すことです。
指導的立場にある人が、言葉だけで部下や後輩を動かすのではなく、「まず自分がやってみせる」ことで、周囲を導くリーダーシップのあり方を指します。
単に行動するだけでなく、その姿が周囲にとって「見習うべき模範」となっている点が重要です。
語源・由来
この四字熟語は、二つの熟語が組み合わさって構成されています。
- 率先(そっせん):
「率(ひき)いる」+「先(さき)」。大勢の先頭に立って物事を行うこと。 - 垂範(すいはん):
「垂(た)れる」+「範(はん)」。目上の者が目下の者へ手本(模範)を示すこと。(「垂れる」は、上から下へ示すという意味)
この二つが合わさり、「人の先に立ち、上から下へ手本を示す」という、指導者のあるべき姿を表す言葉となりました。
使い方・例文
ビジネス、教育、スポーツなど、あらゆる組織において、リーダーや先輩のあるべき姿として肯定的に使われます。
例文
- チームの改革を進めるため、部長自らが率先垂範して朝の掃除を始めた。
- 口先だけでなく、率先垂範する彼の姿勢に部下たちは心を動かされた。
- 親が率先垂範して挨拶をすれば、子供も自然と挨拶をするようになる。
類義語・関連語
「率先垂範」と似た、行動を重視する言葉です。
- 実践躬行(じっせんきゅうこう):
口先だけでなく、自分自身(躬)で実際にその理論や道徳を行うこと。「率先垂範」よりも「自ら行う」という点に焦点がある。 - 以身作則(いしんさくそく):
身(自分自身)をもって、則(手本)と成すこと。中国語圏でもよく使われる表現。 - 言行一致(げんこういっち):
口で言うことと、実際の行いが一致していること。 - 背中で語る:
言葉ではなく、行動や生き様そのもので相手に思いを伝えること。
対義語
「行動が伴わない」「人任せにする」という意味の言葉です。
- 拱手傍観(きょうしゅぼうかん):
腕を組んで、手出しをせずにただそばで見ていること。 - 有言不実行(ゆうげんふじっこう):
口では立派なことを言うが、実際の行動が伴わないこと。 - 丸投げ:
仕事や責任を、自分では何もせずそのまま他人に任せること。
英語表現
英語でも、リーダーシップの本質として同様の言い回しが使われます。
lead by example
直訳は「手本によって導く」で、「率先垂範する」という意味を表す最も一般的な表現。
She always leads by example.
(彼女は常に率先垂範する。)
practice what you preach
直訳は「説教することを実践せよ」で、「言行一致」「言うだけでなく実行せよ」という意味を表す表現。人に説くならばまず自分がそれを実行すべきだという戒めのニュアンスを含む。
「率先」は史記に、「垂範」は宋書に由来する組み合わせ語
「率先垂範」は、出どころの異なる二つの言葉が組み合わさってできた四字熟語です。
「率先」は人より先に立って物事を行うことを表す言葉で、前漢の歴史を記した『史記』の絳侯周勃世家に見えます。
「垂範」は自ら模範を示すことを意味し、南朝宋の歴史を記した『宋書』の謝霊運伝に見えます。
この二つの言葉が結び付き、「人の先頭に立ち、自ら手本を示す」という意味の四字熟語として定着しました。
近代日本では、旧海軍の山本五十六が語ったとされる「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば、人は動かじ」という言葉が、率先垂範の精神をよく表す例として広く知られています。












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