意味
「率先垂範(そっせんすいはん)」とは、言葉で指図するより先に、自分がやってみせて周りの手本になることをいいます。
上司や親、先輩など、人を導く立場の人のあり方として使われます。
語源・由来
この四字熟語は、二つの熟語が組み合わさって構成されています。
- 率先(そっせん):
「率(ひき)いる」+「先(さき)」。大勢の先頭に立って物事を行うこと。 - 垂範(すいはん):
「垂(た)れる」+「範(はん)」。目上の者が目下の者へ手本(模範)を示すこと。(「垂れる」は、上から下へ示すという意味)
この二つが合わさり、「人の先に立ち、上から下へ手本を示す」という、指導者のあるべき姿を表す言葉となりました。
使い方・例文
ビジネス、教育、スポーツなど、あらゆる組織において、リーダーや先輩のあるべき姿として肯定的に使われます。
旧海軍の山本五十六が語ったとされる「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」も、率先垂範の考え方を表す言葉としてよく引かれます。
例文
- チームの改革を進めるため、部長自らが率先垂範して朝の掃除を始めた。
- 口先だけでなく、率先垂範する彼の姿勢に部下たちは心を動かされた。
- 親が率先垂範して挨拶をすれば、子供も自然と挨拶をするようになる。
類義語・関連語
「率先垂範」と似た、行動を重視する言葉です。
- 実践躬行(じっせんきゅうこう):
口先だけでなく、自分自身(躬)で実際にその理論や道徳を行うこと。「率先垂範」よりも「自ら行う」という点に焦点がある。 - 以身作則(いしんさくそく):
身(自分自身)をもって、則(手本)と成すこと。中国語圏でもよく使われる表現。 - 言行一致(げんこういっち):
口で言うことと、実際の行いが一致していること。 - 背中で語る(せなかでかたる):
言葉ではなく、行動や生き様そのもので相手に思いを伝えること。
対義語
「行動が伴わない」「人任せにする」という意味の言葉です。
- 拱手傍観(きょうしゅぼうかん):
腕を組んで、手出しをせずにただそばで見ていること。 - 有言不実行(ゆうげんふじっこう):
口では立派なことを言うが、実際の行動が伴わないこと。 - 丸投げ:
仕事や責任を、自分では何もせずそのまま他人に任せること。
英語表現
英語でも、リーダーシップの本質として同様の言い回しが使われます。
lead by example
直訳は「手本によって導く」で、「率先垂範する」という意味を表す最も一般的な表現。
She always leads by example.
(彼女は常に率先垂範する。)
practice what you preach
直訳は「説教することを実践せよ」で、「言行一致」「言うだけでなく実行せよ」という意味を表す表現。
人に説くならばまず自分がそれを実行すべきだという戒めのニュアンスを含む。
Parents should practice what they preach.
(親は、子どもに言うことをまず自分で実行すべきだ。)
「率先」は皇帝の命令、「垂範」は詩人への賛辞
「率先」は、前漢の司馬遷が著した『史記』の絳侯周勃世家に出てきます。
前漢の皇帝・文帝は、領地へ帰るよう命じたのに都に残る諸侯がいるのを見て、丞相(= 皇帝を補佐する最高の大臣)の周勃に「丞相吾所重,其率先之」(丞相はわたしが重んじる者だ、まず先に立って帰れ)と言いました。
周勃は丞相を解かれ、手本として真っ先に領地へ帰りました。
「垂範」は、南朝宋の歴史書『宋書』の謝霊運伝で、編者が最後に添えた評に出てきます。
詩人の謝霊運と顔延之について、二人とも先人に肩を並べ、「垂範後昆」(後の世の人々に手本を残した)と評しています。
今では上に立つ人の心得として使われる言葉ですが、「率先」はもともと、皇帝に命じられて先に立つことでした。













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