「あの人のやる通りにすれば間違いない」
「口で指示されるより、あの人の背中を見ている方が学べる」
あなたの周りに、そんな風に思わせてくれる、行動そのものが手本となっているような人はいませんか?
このように、自らの行動をもって模範を示すことを「以身作則(いしんさくそく)」と言います。
この言葉が持つ意味、漢字の成り立ち、具体的な使い方、似た言葉、そして英語での表現などを詳しく解説します。
「以身作則」の意味・教訓
「以身作則」とは、「自らの行動や振る舞い(身)をもって(以て)、(他人が従うべき)手本や法則(則)を作る(作す)こと」を意味する四字熟語です。
言葉の核心は、単に行動するだけでなく、その行動自体が「ルール」や「模範」となるという点にあります。
口で細かく指示・命令するのではなく、「私の行動を見なさい」と背中で語るような、強いリーダーシップや指導者のあり方を示す言葉です。
「以身作則」の語源 – 漢字の成り立ち
「以身作則」は、特定の物語に由来する「故事成語」ではなく、漢字の意味を組み合わせて作られた四字熟語です。
- 以(い):~をもって。手段や方法を表します。
- 身(しん):自分自身。ここでは「自分自身の行動・振る舞い」を指します。
- 作(さく):作る、なす。
- 則(そく):法則、手本、模範、のり。
これらが組み合わさり、「自分自身の行動をもって、手本・法則となす」という意味が生まれました。儒教など、指導者の徳や行動を重んじる東洋の伝統的な思想が背景にある言葉です。
使用される場面と例文
「以身作則」は、前に解説した「率先垂範(そっせんすいはん)」とほぼ同じ場面で使われます。
上司、教師、親、先輩など、指導的な立場にある人が自ら行動で模範を示す、ポジティブな状況を評価する際に用いられます。
例文
- 「リーダーたる者、「以身作則」の姿勢で組織を導かなければならない。」
- 「彼は口数こそ少ないが、常に「以身作則」の精神でチームの手本となっている。」
- 「子供の教育において、親が「以身作則」で良い振る舞いを見せることが最も重要だ。」
- 「あのベテラン社員の「以身作則」な働きぶりが、若手社員の良い刺激になっている。」
類義語・言い換え表現
「以身作則」と似た意味を持つ言葉を紹介します。
- 率先垂範(そっせんすいはん):
人の先に立って模範を示すこと。「以身作則」とほぼ同義で、現代では同じように使われます。
※ニュアンス:厳密には、「率先垂範」は「先頭に立つ(率先)」というタイミングに、「以身作則」は「自分自身の行動(身)」そのものに、わずかな焦点の違いがあります。 - 実践躬行(じっせんきゅうこう):
口先だけでなく、自ら実際に行動すること。「他者への模範(則)」という意味合いは「以身作則」の方が強いです。 - 身をもって示す(みをもってしめす):
言葉ではなく、自らの行動で手本を示すこと。「以身作則」の和語表現です。
対義語
「以身作則」と反対の(行動が伴わない、または他人に任せる)状態を示す言葉です。
- 口先介入(くちさきかいにゅう):
行動は起こさず、口だけで指図したり批評したりすること。 - 袖手傍観(しゅうしゅぼうかん):
何もせず、ただ傍らで見ていること。 - 大言壮語(たいげんそうご):
実力以上に大きなことを言うこと。行動(以身作則)が伴わない言葉。 - 机上の空論(きじょうのくうろん):
頭の中だけで考えた、実際には役に立たない理論や計画。
英語での類似表現
「以身作則」の「模範となって導く」というニュアンスに近い英語表現です。
Lead by example
- 意味:「模範によって導く」。
- ニュアンス:「以身作則」や「率先垂範」の最も直接的で一般的な英訳です。
- 例文:
A good parent leads by example.
(良い親とは、以身作則(行動で模範を示す)ものだ。)
Actions speak louder than words.
- 意味:行動は言葉よりも雄弁である。
- ニュアンス:「以身作則」が重要である理由(言葉より行動が伝わる)を示したことわざです。
まとめ – 「以身作則」から学ぶ知恵
「以身作則」は、自らの行動そのものを手本とし、人を導くことの重要性を示す四字熟語です。
私たちは、言葉でいくら立派なことを言っても、行動が伴わなければ人からの信頼を得ることはできません。
特に指導的な立場にある人は、自らが困難なことに取り組み、正しいと信じる行動を続ける姿を見せること(=以身作則)が、何よりのメッセージとなります。
自分の行動が周りの「法則」となるような、そんな責任感ある行動を心がけたいですね。



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