愛(アムール)の国であり、芸術と美食の国フランス。
そのことわざには、情熱的な恋愛観だけでなく、人生を楽しむためのエスプリ(機知)や、少し皮肉めいた現実的な視点が詰まっています。
「愛は盲目」のような有名な言葉から、先のことを決めつけるなと戒める処世術まで。
フランス語学習者はもちろん、フランス文化や文学に興味がある方に向けて、日常会話でも使える有名なフランスのことわざ29選を、意味・由来・カタカナ読み付きで解説します。
【愛・恋愛】アムールを語る言葉
恋愛にまつわることわざです。
遠く離れれば、心も離れる
Loin des yeux, loin du cœur.
(ロワン・デ・ズュ・ロワン・デュ・クール)
「去る者は日々に疎し」
物理的な距離は、心の距離も遠ざけてしまう。
「目から遠くなれば、心からも遠くなる」という、遠距離恋愛の難しさを説く切ない言葉です。
愛は盲目
L’amour est aveugle.
(ラムール・エ・アヴグル)
「痘痕もえくぼ」
恋に落ちると相手の欠点が見えなくなり、理性を失ってしまうこと。
愛というものはなく、愛の証拠があるだけだ
Il n’y a pas d’amour, il n’y a que des preuves d’amour.
(イル・ニ・ヤ・パ・ダムール・イル・ニ・ヤ・ク・デ・プルーヴ・ダムール)
もとは詩人ピエール・ルヴェルディの言葉です。
コクトーが雑誌でこれを引き、「詩というものはなく、詩の証拠があるだけだ」と言い換えたことから、コクトーの言葉として紹介されることが多くなりました。
口で「愛してる」と言うのは簡単だが、行動で示さなければ愛は存在しないも同然だ、という意味です。
新しい恋は、前の恋を追い出す(釘は釘で抜く)
Un clou chasse l’autre.
(アン・クルー・シャス・ロートル)
直訳は「一本の釘が、別の釘を追い出す」。
新しいものが古いものに取って代わることのたとえで、新しい恋が前の恋を忘れさせるという意味でも使われます。
恋する心は、満たされない
Coeur qui soupire n’a pas ce qu’il désire.
(クール・キ・スピール・ナ・パ・ス・キル・デズィール)
ため息をついている心は、望むものを手に入れていない。
ため息は、満たされない思いの表れだということです。
冷たい手、温かい心
Mains froides, cœur chaud.
(マン・フロワッド・クール・ショー)
手が冷たい人は、心が温かい(情熱的だ)という言い習わしです。
【人生・教訓】エスプリと現実
人生を賢く、そして優雅に生き抜くための知恵と教訓です。
少しずつ、鳥は巣を作る
Petit à petit, l’oiseau fait son nid.
(プティ・タ・プティ・ロワゾー・フェ・ソン・ニ)
「塵も積もれば山となる」
小さな枝を一本ずつ集めて鳥が巣を作るように、少しずつの努力の積み重ねが大きな成果を生む。
忍耐と継続を説くことわざです。
生きる者が、見るだろう(時が経てばわかる)
Qui vivra verra.
(キ・ヴィヴラ・ヴェラ)
先のことは今はわからず、時が経てばわかるということ。
雨の後には、良い天気
Après la pluie, le beau temps.
(アプレ・ラ・プリュイ・ル・ボー・タン)
「苦あれば楽あり」
辛いこと(雨)の後には、良いこと(晴れ)がやってくるものだ。
落ち込んでいる人を励ますときに使われます。
鉄は熱いうちに打て
Il faut battre le fer pendant qu’il est chaud.
(イル・フォー・バットル・ル・フェール・パンダン・キル・エ・ショー)
「好機逸すべからず」
チャンスが来たら、ためらわずにすぐに行動を起こすべきだという教えです。
フランス人の辞書に不可能という文字はない
Impossible n’est pas français.
(アンポスィブル・ネ・パ・フランセ)
直訳:不可能(という言葉)はフランス語ではない。
1813年、持ちこたえられないと書いてきた将軍に、ナポレオンが「不可能だと君は書いてくるが、それはフランス的でない」と返したことから広まったと伝えられています。
どんなことでもやればできる、という意味で使われます。
待つことができる者には、すべてがうまくいく
Tout vient à point à qui sait attendre.
(トゥ・ヴィアン・タ・ポワン・ア・キ・セ・アタンドル)
「果報は寝て待て」
焦らずに適切なタイミングを待つことができる人には、物事は一番良い形でやってくる。
せっかちな人をたしなめる時によく使われます。
「泉よ、お前の水は飲まない」とは決して言うな
Il ne faut jamais dire : “Fontaine, je ne boirai pas de ton eau”.
(イル・ヌ・フォー・ジャメ・ディール・フォンテーヌ・ジュ・ヌ・ボワレ・パ・ド・トノ)
「二度とするか!」と誓っても、将来どうなるかは誰にもわからない。
困ってその泉の水を飲みたくなる日が来るかもしれないのだから、可能性を完全に否定したり、極端な断言をしたりすべきではないという戒めです。
二兎を追う者は一兎をも得ず
Qui court deux lièvres à la fois n’en prend aucun.
(キ・クール・ドゥ・リエーヴル・ア・ラ・フォワ・ナン・プラン・オーカン)
欲張って同時に二つのことをしようとすると、どちらも失敗する。
一点集中することの大切さを説いています。
目的は手段を正当化する
La fin justifie les moyens.
(ラ・ファン・ジュスティフィ・レ・モワイヤン)
「嘘も方便」
良い結果(目的)を得るためなら、多少強引なやり方(手段)も許されるというマキャベリズム的な考え方。
議論の場で、倫理的な是非を問う際によく引用されます。
不幸は、何かの役に立つ
À quelque chose malheur est bon.
(ア・ケルク・ショーズ・マルール・エ・ボン)
「人間万事塞翁が馬」、「怪我の功名」
不幸な出来事も、見方を変えれば教訓になったり、別の良いことにつながったりする。
失敗をポジティブに捉え直すための言葉です。
【仕事・生活】美食と職人の国
食や仕事に関する、フランスらしい表現です。
卵を割らずにオムレツは作れない
On ne fait pas d’omelette sans casser des œufs.
(オン・ヌ・フェ・パ・ドムレット・サン・カッセ・デ・ズ)
何かを得るためには、多少の犠牲やリスクは避けられない。
オムレツを作るには卵を割らなければならないように、改革や成功には痛みが伴うという現実的な教訓です。
鍛冶屋は鍛えながらなる(習うより慣れろ)
C’est en forgeant qu’on devient forgeron.
(セ・タン・フォルジャン・コン・ドゥヴィアン・フォルジュロン)
職人は実践を通じて技術を身につける。
理屈をこねるよりも、実際にやってみて経験を積むことが上達の近道だという教えです。
良い勘定が、良い友人を作る
Les bons comptes font les bons amis.
(レ・ボン・コント・フォン・レ・ボン・ザミ)
「親しき仲にも礼儀あり」
お金の貸し借りをきっちり清算することが、友人関係を長続きさせる秘訣だ。
働くことは、健康だ
Le travail, c’est la santé.
(ル・トラヴァイユ・セ・ラ・サンテ)
働くことは心身の健康に良い。
この後に「Ne rien faire, c’est la conserver(何もしないことは、健康を維持することだ)」とおどけて続けることもあります。
愚かな仕事はない、愚かな人々がいるだけだ
Il n’y a pas de sot métier, il n’y a que de sottes gens.
(イル・ニ・ヤ・パ・ド・ソ・メティエ・イル・ニ・ヤ・ク・ド・ソット・ジャン)
「職業に貴賎なし」
どんな仕事にも価値があり、それを馬鹿にする人こそが愚かである。
【人間関係・社会】人付き合いの機微
人付き合いの機微や、社会生活のルールについての言葉です。
似た者同士が集まる(類は友を呼ぶ)
Qui se ressemble s’assemble.
(キ・ス・ルサンブル・ササンブル)
似たような性格や趣味を持つ人は、自然と集まるものだ。
カップルや親友同士を見て「やっぱり似てるね」と言う時によく使われます。
友達の友達は、友達だ
Les amis de nos amis sont nos amis.
(レ・ザミ・ド・ノ・ザミ・ソン・ノ・ザミ)
友人の友人には、自分も好意と敬意を向けるべきだということ。
服は修道士を作らない(人は見かけによらぬもの)
L’habit ne fait pas le moine.
(ラビ・ヌ・フェ・パ・ル・モワンヌ)
修道士の服を着ているからといって、その人が聖人とは限らない。
外見や肩書きだけで人を判断してはいけないという教えです。
最初の一歩だけが大変だ
Il n’y a que le premier pas qui coûte.
(イル・ニ・ヤ・ク・ル・プルミエ・パ・キ・クート)
何事も、始める時(決断する時)が一番エネルギーを使い、辛いものだ。
一度始めてしまえば後はなんとかなる、という励ましの言葉です。
意志あるところに力あり(為せば成る)
Vouloir, c’est pouvoir.
(ヴロワール・セ・プヴォワール)
「意志することは、できることだ」。
強い意志があれば、不可能なことはない。
英語の「Where there’s a will, there’s a way」と同じ意味です。
誰もが自分の玄関から正午を見る
Chacun voit midi à sa porte.
(シャカン・ヴォワ・ミディ・ア・サ・ポルト)
人は誰でも、自分の視点や都合で物事を判断する(自分の家の玄関から見た太陽の位置で時間を計る)。
「十人十色」「我田引水」に近い意味です。
夜は助言をもたらす
La nuit porte conseil.
(ラ・ニュイ・ポルト・コンセイユ)
「一晩寝て考えよう」
夜寝ている間に良い知恵が浮かんだり、冷静になれたりする。
重要な決断を焦らず、時間を置いて考えることのすすめです。
遅れても、やらないよりマシ
Mieux vaut tard que jamais.
(ミュー・ヴォー・タール・ク・ジャメ)
誕生日のメッセージが遅れた時や、年齢を重ねてから新しいことを始める時の決まり文句。
タイミングを逃しても、実行すること自体に価値があるというポジティブな表現です。
世界の有名なことわざ
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