愛(アムール)の国であり、芸術と美食の国フランス。
そのことわざには、情熱的な恋愛観だけでなく、人生を楽しむためのエスプリ(機知)や、少し皮肉めいた現実的な視点が詰まっています。
「L’amour est aveugle(愛は盲目)」という有名な言葉から、「Il ne faut pas dire : Fontaine…(決して〜しないとは言うな)」といった処世術まで。
今回は、フランス語学習者はもちろん、フランス文化や文学に興味がある方に向けて、日常会話でも使える有名なフランスのことわざ30選を、意味・由来・カタカナ読み付きで解説します。
【愛・恋愛】アムールを語る言葉
情熱的でありながら、どこか儚(はかな)さや冷めた視点も持ち合わせている、フランス独特の恋愛観です。
遠く離れれば、心も離れる
Loin des yeux, loin du cœur.
(ロワン・デ・ズュ・ロワン・デュ・クール)
「去る者は日々に疎し」
物理的な距離は、心の距離も遠ざけてしまう。「目から遠くなれば、心からも遠くなる」という、遠距離恋愛の難しさを説く切ない言葉です。
愛は盲目
L’amour est aveugle.
(ラムール・エ・アヴグル)
「痘痕もえくぼ」
恋に落ちると相手の欠点が見えなくなり、理性を失ってしまうこと。
情熱的な恋愛を好むフランス人にとって、この言葉は批判というよりは「愛の不可抗力」を認める諦めの言葉でもあります。
愛というものはなく、愛の証拠があるだけだ
Il n’y a pas d’amour, il n’y a que des preuves d’amour.
(イル・ニ・ヤ・パ・ダムール・イル・ニ・ヤ・ク・デ・プルーヴ・ダムール)
詩人ジャン・コクトーの言葉として知られます。
口で「愛してる」と言うのは簡単だが、行動で示さなければ愛は存在しないも同然だ。
言葉よりも行動(プレゼントやスキンシップ、時間の共有)を重視するフランス人の恋愛観を象徴しています。
新しい恋は、前の恋を追い出す(釘は釘で抜く)
Un clou chasse l’autre.
(アン・クルー・シャス・ロートル)
直訳は「一本の釘が、別の釘を追い出す」。
失恋の痛手を癒やすには、新しい恋をするのが一番だということ。
古い釘(恋人)を抜くために、新しい釘(恋人)を打ち込むという、なんとも合理的なアドバイスです。
恋する心は、満たされない
Coeur qui soupire n’a pas ce qu’il désire.
(クール・キ・スピール・ナ・パ・ス・キル・デズィール)
ため息をついている心は、望むものを手に入れていない。
片思いの切なさや、手に入らないものを追い求める恋の苦しみを表現した、詩的な言葉です。
冷たい手、温かい心
Mains froides, cœur chaud.
(マン・フロワッド・クール・ショー)
手が冷たい人は、心が温かい(情熱的だ)。
冷え性の人や、一見冷たそうに見える人をフォローする際や、恋愛の予兆として使われるロマンチックな迷信です。
夫婦の喧嘩は、雨の後のようなもの
Dispute de ménage est comme une pluie d’été.
(ディスピュート・ド・メナージュ・エ・コム・ユヌ・プリュイ・デテ)
「雨降って地固まる」
夫婦喧嘩は夏の通り雨のように激しいが、すぐに止んで空気が澄み渡る(仲直りする)。
喧嘩もコミュニケーションの一部と捉えるフランスらしい表現です。
【人生・教訓】エスプリと現実
人生を賢く、そして優雅に生き抜くための知恵と教訓です。
少しずつ、鳥は巣を作る
Petit à petit, l’oiseau fait son nid.
(プティ・タ・プティ・ロワゾー・フェ・ソン・ニ)
「塵も積もれば山となる」
小さな枝を一本ずつ集めて鳥が巣を作るように、少しずつの努力の積み重ねが大きな成果を生む。
フランス語の授業で必ず習うほど有名な、忍耐と継続を説くことわざです。
生きる者が、見るだろう(時は解決する)
Qui vivra verra.
(キ・ヴィヴラ・ヴェラ)
「ケ・セラ・セラ(なるようになる)」。
未来のことは誰にもわからない。焦らずに生きていれば、そのうち結果はわかるだろう。
将来を案ずるよりも、時が解決してくれるのを待とうという楽観的な姿勢です。
雨の後には、良い天気
Après la pluie, le beau temps.
(アプレ・ラ・プリュイ・ル・ボー・タン)
「苦あれば楽あり」
辛いこと(雨)の後には、必ず良いこと(晴れ)がやってくる。
どん底にいる人を励ます時の定番フレーズです。
鉄は熱いうちに打て
Il faut battre le fer pendant qu’il est chaud.
(イル・フォー・バットル・ル・フェール・パンダン・キル・エ・ショー)
「好機逸すべからず」
チャンスが来たら、ためらわずにすぐに行動を起こすべきだという教え。
議論好きなフランス人ですが、行動すべきタイミングの重要性も説いています。
フランス人の辞書に不可能という文字はない
Impossible n’est pas français.
(アンポスィブル・ネ・パ・フランセ)
直訳:不可能(という言葉)はフランス語ではない。
ナポレオンの言葉として有名です。
困難に直面した時に、フランス人の誇りとド根性を奮い立たせるための力強い言葉です。
待つことができる者には、すべてがうまくいく
Tout vient à point à qui sait attendre.
(トゥ・ヴィアン・タ・ポワン・ア・キ・セ・アタンドル)
「果報は寝て待て」
焦らずに適切なタイミングを待つことができる人には、物事は一番良い形でやってくる。
せっかちな人をたしなめる時によく使われます。
「泉よ、お前の水は飲まない」とは決して言うな
Il ne faut jamais dire : “Fontaine, je ne boirai pas de ton eau”.
(イル・ヌ・フォー・ジャメ・ディール・フォンテーヌ・ジュ・ヌ・ボワレ・パ・ド・トノ)
「二度とするか!」と誓っても、将来どうなるかは誰にもわからない。
困ってその泉の水を飲みたくなる日が来るかもしれないのだから、可能性を完全に否定したり、極端な断言をしたりすべきではないという戒めです。
二兎を追う者は一兎をも得ず
Qui court deux lièvres à la fois n’en prend aucun.
(キ・クール・ドゥ・リエーヴル・ア・ラ・フォワ・ナン・プラン・オーカン)
欲張って同時に二つのことをしようとすると、どちらも失敗する。
一点集中することの大切さを説いています。
目的は手段を正当化する
La fin justifie les moyens.
(ラ・ファン・ジュスティフィ・レ・モワイヤン)
「嘘も方便」
良い結果(目的)を得るためなら、多少強引なやり方(手段)も許されるというマキャベリズム的な考え方。
議論の場で、倫理的な是非を問う際によく引用されます。
不幸は、何かの役に立つ
À quelque chose malheur est bon.
(ア・ケルク・ショーズ・マルール・エ・ボン)
「人間万事塞翁が馬」、「怪我の功名」
不幸な出来事も、見方を変えれば教訓になったり、別の良いことにつながったりする。
失敗をポジティブに捉え直すための言葉です。
【仕事・生活】美食と職人の国
食や仕事に関する、フランスらしい表現です。
卵を割らずにオムレツは作れない
On ne fait pas d’omelette sans casser des œufs.
(オン・ヌ・フェ・パ・ドムレット・サン・カッセ・デ・ズ)
何かを得るためには、多少の犠牲やリスクは避けられない。
オムレツを作るには卵を割らなければならないように、改革や成功には痛みが伴うという現実的な教訓です。
鍛冶屋は鍛えながらなる(習うより慣れろ)
C’est en forgeant qu’on devient forgeron.
(セ・タン・フォルジャン・コン・ドゥヴィアン・フォルジュロン)
職人は実践を通じて技術を身につける。
理屈をこねるよりも、実際にやってみて経験を積むことが上達の近道だという教えです。
良い勘定が、良い友人を作る
Les bons comptes font les bons amis.
(レ・ボン・コント・フォン・レ・ボン・ザミ)
「親しき仲にも礼儀あり」
お金の貸し借りをきっちり清算することが、友人関係を長続きさせる秘訣だ。
フランス人は個人主義的な面があり、金銭トラブルを避けることを重視します。
働くことは、健康だ
Le travail, c’est la santé.
(ル・トラヴァイユ・セ・ラ・サンテ)
働くことは心身の健康に良い。
しかし、この後には「Ne rien faire, c’est la conserver(何もしないことは、健康を維持することだ)」というジョークが続くこともあり、フランス人の労働観(バカンス重視)を垣間見ることができます。
愚かな仕事はない、愚かな人々がいるだけだ
Il n’y a pas de sot métier, il n’y a que de sottes gens.
(イル・ニ・ヤ・パ・ド・ソ・メティエ・イル・ニ・ヤ・ク・ド・ソット・ジャン)
「職業に貴賎なし」
どんな仕事にも価値があり、それを馬鹿にする人こそが愚かである。
自分の仕事に誇りを持つ職人(アルチザン)の国らしい言葉です。
【人間関係・社会】類は友を呼ぶ
人付き合いの機微や、社会生活のルールについての言葉です。
似た者同士が集まる(類は友を呼ぶ)
Qui se ressemble s’assemble.
(キ・ス・ルサンブル・ササンブル)
似たような性格や趣味を持つ人は、自然と集まるものだ。
カップルや親友同士を見て「やっぱり似てるね」と言う時によく使われます。
友達の友達は、友達だ
Les amis de nos amis sont nos amis.
(レ・ザミ・ド・ノ・ザミ・ソン・ノ・ザミ)
フランス社会はコネクション(人脈)が非常に重要です。
友人の紹介であれば、初対面でも信頼して仲良くするという、社交的なフランス人のネットワーク作りを表しています。
服は修道士を作らない(人は見かけによらぬもの)
L’habit ne fait pas le moine.
(ラビ・ヌ・フェ・パ・ル・モワンヌ)
修道士の服を着ているからといって、その人が聖人とは限らない。
外見や肩書きだけで人を判断してはいけないという、中世から伝わる教訓です。
最初の一歩だけが大変だ
Il n’y a que le premier pas qui coûte.
(イル・ニ・ヤ・ク・ル・プルミエ・パ・キ・クート)
何事も、始める時(決断する時)が一番エネルギーを使い、辛いものだ。
一度始めてしまえば後はなんとかなる、という励ましの言葉です。
意志あるところに力あり(為せば成る)
Vouloir, c’est pouvoir.
(ヴロワール・セ・プヴォワール)
「意志することは、できることだ」。
強い意志があれば、不可能なことはない。英語の「Where there’s a will, there’s a way」と同じ意味です。
誰もが自分の玄関から正午を見る
Chacun voit midi à sa porte.
(シャカン・ヴォワ・ミディ・ア・サ・ポルト)
人は誰でも、自分の視点や都合で物事を判断する(自分の家の玄関から見た太陽の位置で時間を計る)。
「十人十色」「我田引水」。主観の違いを認め、他人の意見に寛容になるための言葉です。
夜は助言をもたらす
La nuit porte conseil.
(ラ・ニュイ・ポルト・コンセイユ)
「一晩寝て考えよう」
夜寝ている間に良い知恵が浮かんだり、冷静になれたりする。
重要な決断を焦らず、時間を置いて考えることのすすめです。
遅れても、やらないよりマシ
Mieux vaut tard que jamais.
(ミュー・ヴォー・タール・ク・ジャメ)
誕生日のメッセージが遅れた時や、年齢を重ねてから新しいことを始める時の決まり文句。
タイミングを逃しても、実行すること自体に価値があるというポジティブな表現です。








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