意味
「二兎を追う者は一兎をも得ず(にとをおうものはいっとをもえず)」とは、同時に二つのことを成し遂げようと欲張ると、結局どちらも失敗に終わるという意味のことわざです。
一度に二匹の兎を捕まえようと追いかけても、力が分散してどちらにも逃げられてしまう様子が語源となっています。
欲を出しすぎることへの戒めや、一つの物事に集中することの大切さを説いています。
語源・由来
「二兎を追う者は一兎をも得ず」の由来は、
西洋のことわざ(英語:If you run after two hares, you will catch neither.)です。
このことわざは、ルネサンス期のオランダの人文学者エラスムスが編んだ『格言集』にも、ラテン語の形で収められています。
日本へは、幕末にオランダ語・フランス語・英語などから翻訳されて入ってきたとみられています。
使い方・例文
「二兎を追う者は一兎をも得ず」は、欲張ってキャパシティを超えた計画を立てている人への忠告や、失敗した時の反省の弁として使われます。
- 二つの習い事に手を出し、二兎を追う者は一兎をも得ずの結果になった。
- 同時に二人の人を追いかけても、二兎を追う者は一兎をも得ずで終わるよ。
- 複数の投資に手を出したせいで、二兎を追う者は一兎をも得ず、資金をすべて失った。
誤用・注意点
この言葉は、単に「複数のことを並行して行う」ことを否定するものではありません。
間違えやすいポイント
- 対象:計画的に効率よく複数の作業をこなしている人に対して使うのは不適切です。
- 文脈:あくまで「欲張った結果、力が分散してどちらもダメになる」という否定的な結末が予想される場合に使います。
類義語・関連語
「二兎を追う者は一兎をも得ず」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 虻蜂取らず(あぶはちとらず):
虻も蜂も両方捕まえようとして、結局どちらも逃がしてしまうこと。 - 欲の熊鷹股裂ける(よくのくまたかまたさける):
欲張りすぎると、かえって自分の身を滅ぼすというたとえ。 - 花も折らず実も取らず(はなもおらずみもとらず):
欲張ったり迷ったりした結果、どちらの利益も得られないこと。
対義語
「二兎を追う者は一兎をも得ず」とは対照的な、効率の良さや集中を説く言葉には以下があります。
- 一石二鳥(いっせきにちょう):
一つの行為で、同時に二つの利益を得ること。 - 一点突破(いってんとっぱ):
一つの箇所に全力を集中させて、困難な状況を切り開くこと。
英語表現
「二兎を追う者は一兎をも得ず」を英語で表現する場合、以下の定型句が使われます。
If you run after two hares, you will catch neither
直訳:「二匹の兎を追いかければ、どちらも捕まえられない」
日本語の訳そのものと言える、最も一般的な英語のことわざです。
Don’t try to study for two exams at once; if you run after two hares, you will catch neither.
(二つの試験を同時に勉強しようとするな。二兎を追う者は一兎をも得ずだ。)
「二兎を追う者は一兎をも得ず」、明治の修身と入試に
明治33年(1900年)に普及舎が出した『新編修身教典』の、尋常小学校の教師用書にこのことわざが出てきます。
授業で子どもに問う項目として、二兎を追う者はなぜ一兎も得られないのか、という問いが挙げられています。
同じ年に出た東京府の学校の入学試験問題集にも、「二兎を追ふ者は一兎をも得ず」を解釈させる問題が収められています。
「二兎を追う者は一兎をも得ず」は、明治の後半には、修身の授業で理由を考えさせたり、入学試験で意味を問われたりする句になっていました。















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