意味
「花も折らず実も取らず(はなもおらずみもとらず)」とは、二つのものを同時に得ようと欲張った結果、結局はどちらも得られないことのたとえです。
- 花も折らず:観賞用の花を手に入れることもできず。
- 実も取らず:食用の実を収穫することもできない。
語源・由来
「花も折らず実も取らず」の由来は、植物の成長の理(ことわり)と、それを無視する人間の強欲さにあります。
一本の木に対し、「花を折り取って今すぐ楽しみたい」という願望と、「そのままにして秋に実を収穫したい」という願望は、本来両立しません。
花を折れば実はならず、実を待てば花は散ってしまうからです。
使い方・例文
二つのものを両方手に入れようと欲張って、結局どちらも得られなかった状況で使われます。
例文
- デザインと機能の二兎を追い、花も折らず実も取らずの製品に終わった。
- どちらの条件も満たそうと粘ったせいで、花も折らず実も取らずの結果を招いた。
- 競合する二社の両方に八方美人に振る舞った挙句、花も折らず実も取らずで、どちらの契約も逃した。
誤用・注意点
似た字面の「花も実もある」と取り違えないよう注意が必要です。
- 「花も実もある」との混同:
「花も実もある(はなもみもある)」は、外見も実質も優れているという褒め言葉です。意味が正反対ですので、混同しないよう注意が必要です。
類義語・関連語
「花も折らず実も取らず」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 虻蜂取らず(あぶはちとらず):
二つのものを同時に得ようとして、どちらも逃すこと。 - 二兎を追う者は一兎をも得ず(にとをおうものはいっとをもえず):
欲張って二つのことをしようとし、両方とも失敗すること。 - 一も取らず二も取らず(いちもとらずにもとらず):
二つの選択肢で迷い、結局どちらの利益も得られないこと。
対義語
「花も折らず実も取らず」とは対照的な意味を持つ言葉は、以下の通りです。
英語表現
「花も折らず実も取らず」を英語で表現する場合、二つを狙ってどちらにも失敗する状況を表すフレーズが使われます。
Fall between two stools
「二つの椅子の間に落ちる」
二つのもののどちらも選べず、中途半端になって失敗するという意味です。
Trying to be both a singer and an actor, he fell between two stools.
(歌手と俳優の両方を目指した彼は、花も折らず実も取らずに終わった。)
「花も折らず実も取らず」の花は、枝ごと折るもの
花のほうだけ「折る」となっているのは、言葉の綾ではありません。
古くは、花は枝ごと手で折り取るものでした。
『万葉集』巻五の836番に、陰陽師の礒氏法麻呂が詠んだ次の歌があります。
梅の花手折りかざして遊べども飽き足らぬ日は今日にしありけり
(梅の花を手で折り取って髪に挿して遊んでも、まだ遊び足りない日は、今日なのだなあ。)
「手折りかざして」は、手で折り取って髪に挿す、という所作です。
枝を折れば、その枝には実がなりません。
花を折る手つきと実を取る手つきは、はじめから両立しない関係にあります。










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