推敲

故事成語
推敲(すいこう)

4文字の言葉す・ず」から始まる言葉
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レポートや手紙、メールなどを書いた後、
「これで本当に伝わるかな?」「もっと良い言い方はないだろうか?」と、何度も読み返し、言葉を修正した経験はありませんか。

今回は、そんな風に文章をより良くするために練り直す行為を指す「推敲(すいこう)」という言葉について解説します。

「推敲」の意味・教訓

「推敲(すいこう)」とは、詩や文章を作るときに、その字句や表現を何度も考え、練り直して、より良いものに仕上げていくことです。
言葉の一つひとつを吟味し、表現を磨き上げ、文章全体の完成度を高める作業を指します。

この言葉は、良い作品を生み出すためには、じっくりと時間をかけて言葉を選ぶことの大切さを示唆しています。

「推敲」の語源

「推敲」の語源は、中国・唐の時代の詩人である賈島かとうにまつわる有名な故事です。

ある日、賈島は驢馬(ろば)に乗って詩を考えていました。
「僧はす月下の門」(静かな月夜、僧が門を押し開ける)という一句ができましたが、
「推す」の部分を「たたく」にした方が良いのではないかと悩み、
驢馬の上で門を「推す」仕草と「敲く」仕草を繰り返していました。
それに夢中になるあまり、向かいから来た都の高官である韓愈かんゆの行列に気づかず、突っ込んでしまいました。

賈島が事情を説明すると、文学者でもあった韓愈は怒るどころか、
「それは『敲く』の方が、月下の静寂の中に響く音を感じさせて趣があるだろう」
と助言してくれたと言われています。

この故事から、「推す」と「敲く」の二文字を取って「推敲」という言葉が生まれ、「詩文の字句を練り直すこと」を意味するようになりました。

「推敲」が使われる場面と例文

現代では、詩や小説に限らず、レポート、企画書、スピーチ原稿、手紙、メールなど、あらゆる文章作成において、より良い表現を目指して見直しや修正を行う作業全般を指して使われます。

例文

  • 納得のいく文章になるまで、何度も「推敲」を重ねました。
  • この企画書は、提出前にもう一度しっかり「推敲」する必要があります。
  • 彼は自分の詩を「推敲」することに多くの時間を費やしている。

「推敲」の類義語・言い換え表現

  • 練る(ねる):
    文章や構想などを、より良いものにするために十分に検討し、手を加えること。「文章を練る」「表現を練る」など。推敲と近い意味で使われる。
  • 吟味(ぎんみ):
    念入りに調べて確かめること。言葉や表現を一つひとつ慎重に選び出すニュアンス。
  • 添削(てんさく):
    他人の書いた文章や答案などに、不要な部分を削ったり、足りない部分を補ったりして手直しすること。
  • 校正(こうせい):
    文章の誤字・脱字、表記の誤りや不統一などを、元の原稿と比べ合わせながらチェックし、修正すること。
    ※推敲が内容や表現をより良くする作業であるのに対し、校正は主に誤りを正す作業という違いがある。

「推敲」の対義語

  • 書き殴り(かきなぐり):
    考えや推敲をせず、勢いに任せて書くこと。また、乱暴な字で書くこと。
  • 即興(そっきょう):
    その場で、特に準備なく詩や歌、文章などを作ること。
    ※時間をかけて練り上げる「推敲」とは対照的。
  • 走り書き(はしりがき):
    急いで書くこと、または、ぞんざいに書くこと。

「推敲」の英語での類似表現

  • polish:
    意味:磨く、洗練する、推敲する。
    文脈:「polish a draft」(草稿を推敲する)のように使う。
  • revise:
    意味:改訂する、修正する、見直す。文章全体の見直しや修正のニュアンス。
    文脈:「revise one’s writing」(自分の文章を推敲する)のように使う。
  • refine:
    意味:より良くする、洗練する、磨きをかける。質を高めるニュアンス。
    文脈:「refine the wording」(言葉遣いを練る)のように使う。
  • edit:
    意味:編集する。(文章を整えたり、誤りを修正したりする幅広い意味で使われる。)

まとめ – より良い表現を求めて

「推敲」とは、詩や文章の言葉や表現を何度も練り直し、より良いものにしていく作業のことです。
その語源は、唐の詩人・賈島が「推す」か「敲く」かで悩んだという有名な故事にあります。

この言葉は、自分の考えや想いを的確に、そして豊かに伝えるためには、言葉一つひとつを大切にし、表現を磨き上げることの重要性を教えてくれます。
文章を書く際には、この「推敲」のひと手間を意識してみてはいかがでしょうか。

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