意味
「月下氷人(げっかひょうじん)」とは、男女の縁を取り持つ人、つまり「仲人(なこうど)」を指す言葉です。
主に結婚の仲立ちをしてくれた人を、敬意と風情を込めて言うときに使います。
中国に伝わる二つの縁結びの故事を組み合わせて作られた言葉です。
語源・由来
「月下氷人」は、中国の異なる時代の二つの物語が合わさって生まれました。
- 月下(月下老人)の由来:
唐の時代の小説集『続玄怪録(ぞくげんかいろく)』に登場する老人のエピソードです。
韋固(いこ)という男が月夜の晩、袋によりかかって本を読む老人に出会います。
老人は、袋の中の赤い縄で男女の足を結べば、どんなに離れていても必ず夫婦になると語り、韋固の妻になるのはまだ3歳の少女だと告げました。
14年後、韋固が結婚した相手は、老人の言ったその娘でした。
この「赤い縄」は、日本でいう「運命の赤い糸」のもとになった話とされています。 - 氷人の由来:
歴史書『晋書(しんじょ)』に記された逸話です。令狐策(れいこさく)という人物が「自分が氷の上に立ち、氷の下にいる人と話をする」という不思議な夢を見ました。
占いの名手であった索紞(さくたん)がこれを占い、「氷の上(陽)と下(陰)が語り合うのは、あなたが結婚の仲立ちをする予兆だ」と告げ、実際にその通り縁談がまとまりました。
この「月下老人」と「氷人」という二つの縁結びの象徴が合わさって、仲人を表す「月下氷人」という言葉になりました。
使い方・例文
現代では、主に結婚披露宴のスピーチや、格調高い手紙などで仲人への感謝を述べるときに使われます。
- 恩師にご夫妻で月下氷人を務めていただく。
- 共通の友人が月下氷人となり二人は結ばれた。
- 月下氷人への礼を尽くし無事に式を終える。
類義語・関連語
「月下氷人」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 仲人(なこうど):
結婚の仲立ちをする人。 - 媒酌人(ばいしゃくにん):
結婚式で、新郎新婦の付き添い役や立会人を務める人。 - 恋のキューピッド:
恋愛関係を取り持ってくれる人の比喩表現。
英語表現
「月下氷人」に近い英語には、次のような言い方があります。
matchmaker
意味:結婚の仲介者
「縁を結ぶ人」というニュアンスで広く使われる最も一般的な表現です。
She acted as a matchmaker for the young couple.
(彼女は若いカップルのために月下氷人を務めた。)
go-between
意味:仲介者、間に入る人
結婚だけでなく、あらゆる交渉事の仲立ちをする人を指します。
He played the go-between to settle the marriage proposal.
(彼は縁談をまとめるために月下氷人の役割を果たした。)
「月下氷人」、明治の手紙の文例集は「ムスブノカミ」と言い換え
1905年(明治38年)に出た手紙の文例集『祝祭弔慰文範』(服部撫松編)には、「結婚を祝する文」にこの語が出てきます。
文例は「月下氷人の良媒に依り」(よい仲人の世話によって)と書いて、二人の結婚を祝っています。
文例には難しい語の言い換えも付いていて、「月下氷人」には「ムスブノカミ」、「良媒」には「ヨキナカタチ」と添えられています。
「結ぶの神」は男女の仲を取り持つ神のことで、転じて仲人も指す言葉です。
明治の文例集は、祝いの手紙に「月下氷人」と書く人のために、その意味を和語の「結ぶの神」で示していたわけです。












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