縁の下の力持ち

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ことわざ 慣用句
縁の下の力持ち
(えんのしたのちからもち)

11文字の言葉」から始まる言葉
縁の下の力持ち 【個別】ことわざ・慣用句・四字熟語

華やかな舞台で喝采を浴びる主役がいる一方で、その成功を陰で支え続ける人々がいます。
縁の下の力持ち」は、まさにそのような、目立たない場所で懸命に努力し、他者を支える存在を称える言葉です。

「縁の下の力持ち」の意味

「縁の下の力持ち」とは、人目につかないところで他人のために努力や苦労をすること、またはその人のことです。

他者からの賞賛や注目を求めることなく、陰ながら支える姿勢に対する最上級の褒め言葉として使われます。

  • 縁の下(えんのした):家の床下のこと。普段は人目に触れない場所。
  • 力持ち(ちからもち):重いものを持ち上げたり、力を発揮したりすること。

「縁の下の力持ち」の語源・由来

この言葉の由来には、主に2つの説があります。いずれも「見えない場所で行われる行為」が語源となっています。

1. 大阪・四天王寺の「椽の下の舞」説

最も有力とされるのが、大阪の四天王寺で行われる重要な法要「聖霊会(しょうりょうえ)」に由来する説です。
この法要では舞楽(ぶがく)が奉納されますが、その際、舞台の上だけでなく、人目につかない舞台の下(縁の下)でも、同時に舞が舞われていました。
これを「椽の下の舞(えんのしたのまい)」と呼びます。

この舞は、表舞台の成功を祈って神仏に捧げるものであり、観客には一切見えません。
この「誰にも見られない場所で、重要な役割を果たす」様子が、現在の意味につながったとされています。

2. 報われない「力持ち芸」説

もう一つの説は、江戸時代に流行した大道芸「力持ち」に由来するものです。
米俵や酒樽などの重いものを持ち上げるこの芸は、観客の前で披露してこそ喝采を浴びるものです。
しかし、もしこれを誰も見ていない縁の下で行ったとしたらどうでしょう。
どれだけ怪力を披露しても誰にも評価されないことから、かつては「無駄な努力」「報われない苦労」という意味で使われていました。

「縁の下の力持ち」の歴史と変遷(豆知識)

実はこの言葉、昔と今とでは意味が180度異なっています

前述の「力持ち芸」説のように、明治・大正時代頃までは、「他人のために苦労しても誰にも知られず、甲斐がないこと」というネガティブな意味(徒労)で使われることが一般的でした。
「縁の下の力持ちなんてやるものではない」と否定的に捉えられていたのです。

しかし、近代化が進み、会社やチームなどの「組織的な活動」が重視されるようになるにつれ、「裏方の支えがあってこそ、全体が成功する」という価値観が定着しました。
その結果、現在のような「陰の功労者」を称えるポジティブな言葉へと変化を遂げたのです。

「縁の下の力持ち」の使い方・例文

現代では、ビジネス、スポーツ、学校生活など、あらゆる組織活動において「なくてはならない存在」を評価する際に使われます。

例文

  • 「今回のプロジェクトが成功したのは、彼が縁の下の力持ちとして事務処理を完璧にこなしてくれたおかげだ。」
  • 「ゴールを決めた選手だけでなく、守備で走り回った縁の下の力持ちたちにも拍手を送りたい。」
  • 「母は家庭において、まさに縁の下の力持ちとして私たちを支えてくれている。」

「縁の下の力持ち」の誤用・注意点

目上の人への使用は避ける

基本的に「褒め言葉」ですが、「力持ち(労働者)」というニュアンスが含まれるため、目上の人に対して直接使うのは避けたほうが無難です。「陰で支える」という表現が、相手を「脇役」扱いしていると受け取られるリスクもあります。
目上の人には、「〇〇さんのおかげで」「多大なるご支援のおかげで」と表現するほうが礼儀に適っています。

「縁の下の力持ち」の類義語・関連語

似た意味を持つ言葉ですが、それぞれにニュアンスの違いがあります。

  • 内助の功(ないじょのこう):
    家庭内で妻が夫を支え、出世や成功に導くこと。
    主に「夫婦間(特に妻から夫へ)」のサポートに使われる点が「縁の下の力持ち」と異なる。
  • 黒衣(くろご):
    歌舞伎で、黒い衣装を着て役者の介添えをする人。
    転じて、陰で主役を支える人。意図的に「姿を消す(黒子)」という職人的なニュアンスが強い。
  • 陰徳(いんとく):
    人に知られないようにこっそりとする善行。
    「陰徳あれば陽報(ようほう)あり(隠れて良いことをすれば、必ず良い報いがある)」と続くことが多い。道徳的な意味合いが強い。
  • 屋台骨(やたいぼね):
    家屋を支える骨組み。転じて、一家や組織を支える中心人物。
    「縁の下」よりも、組織の存続に関わる「大黒柱」に近いニュアンスを含む場合がある。

「縁の下の力持ち」の対義語

  • 花形(はながた):
    歌舞伎で、最も華やかで人気のある役者。転じて、組織や活動の中で最も注目を浴びる人や位置。
  • スタンドプレー
    チームの勝利よりも、自分が目立つことを優先した演技や行動。

「縁の下の力持ち」の英語表現

unsung hero

  • 直訳:歌われない(称賛されない)英雄
  • 意味:「称賛されるべき功績があるのに、世間に知られていない英雄」
  • 解説:最も一般的で、「縁の下の力持ち」のニュアンスに非常に近い表現です。”unsung” は詩や歌で褒め称えられていない状態を指します。
  • 例文:
    The lighting technicians are the unsung heroes of this stage production.
    (照明スタッフは、この舞台制作における縁の下の力持ちだ。)

behind the scenes

  • 意味:「舞台裏の」「秘密の」
  • 解説:表舞台には出ないが、裏で活動している様子を表します。”work behind the scenes”(裏方として働く)のように使います。
  • 例文:
    She works hard behind the scenes to support the team.
    (彼女はチームを支えるために、縁の下の力持ちとして懸命に働いている。)

まとめ – 縁の下の力持ちから学ぶ知恵

「縁の下の力持ち」という言葉は、私たちの社会が目に見える成果だけで回っているわけではないという事実を教えてくれます。

かつては「徒労」とされたこの言葉が、今では「称賛」の言葉へと変わったように、「誰かが見てくれている」と信じて誠実に役割を果たす姿勢は、いつの時代も信頼という形で報われるのかもしれません。
自分が光を浴びない時こそ、この言葉を思い出して、誇りを持って取り組んでみてはいかがでしょうか。

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