日本語には、「体全体」や「身体(からだ)」、あるいはその人自身を指す「身(み)」を使った表現が数多く存在します。これらは、その人の全存在や、どうにもならない状況、多大な努力などを象徴する言葉として用いられています。
「全身全霊」「五体満足」「身から出た錆」「粉骨砕身」など、現代でも日常的に使われる表現が豊富で、身体にまつわる言葉は人間の存在や状態を巧みに表現しています。
ここでは、「体」や「身体」に関連する、主なことわざ・慣用句・四字熟語・故事成語を紹介します。
「体・身体」に関する ことわざ
- 名は体を表す(なはたいをあらわす):
名前はその実体や本質をよく反映するという考え方。念仏「南無阿弥陀仏」を仏そのものとする仏教の「名体不二」に由来する説もある。 - 身から出た錆(みからでたさび):
元は刀身の手入れ不足で生じる錆のこと。自分の身から生まれた錆になぞらえ、災いは自分自身の言動が招いた結果だと戒める表現。 - 健全なる精神は健全なる身体に宿る(けんぜんなるせいしんはけんぜんなるしんたいにやどる):
古代ローマの詩人ユウェナリスの風刺詩が原典。本来は「健全な身体と精神を神に祈るべき」との一節で、体が丈夫なら心も健やかという解釈は後世の誤読による。 - 肉を切らせて骨を断つ(にくをきらせてほねをたつ):
自分の身を切らせつつ相手の骨に届く一撃を放つ剣術由来の戦法。多少の犠牲を払ってでも致命傷を与える捨て身の戦い方を表す。
「体・身体」に関する慣用句
感覚・実感
- 身に染みる(みにしみる):
液体がしみ込むように、感動や教訓が心の奥深くまで届く様子。人の情けや厳しい忠告を実感した場面のほか、冷気が強く堪える場合にも使われる。 - 身の毛がよだつ(みのけがよだつ):
「よだつ」は古語「弥立つ」で、毛が逆立つという意味。恐怖や強い不快感で全身の毛が逆立つ様子を表し、『平家物語』にも見える古い言い回し。 - 五臓六腑にしみわたる(ごぞうろっぷにしみわたる):
漢方で肝・心・脾・肺・腎などの内臓全体を指す「五臓六腑」から。おいしい飲食物や深い感動が体の隅々まで染み渡る、満ち足りた感覚を表す。
自己認識・立場
- 身の程知らず(みのほどしらず):
自分の身分や能力の限界をわきまえず、分不相応な望みや行動に出ること。謙虚さを欠く態度をたしなめる際の戒めとして使われる。
努力・行動
- 身を粉にする(みをこにする):
自分の体が粉々に砕けるほど働く様子から生まれた表現。実際に砕けるわけではなく、犠牲もいとわず尽くす強い献身を意味する。
人生・生活
- 身を固める(みをかためる):
元は身の守りを固くし品行を慎むという意味だった言葉。結婚の「固めの杯」にも通じ、家庭を持ち安定した生活に入ることを指す。 - 身を立てる(みをたてる):
身を起こし元気にやっていくには生計の確立が要るという発想から。職に就いて生計を立てる意と、出世する意の両方で使う。
困難・限界
- 手も足も出ない(てもあしもでない):
圧倒されて萎縮し、身動きが取れなくなる様子から生まれた表現。強すぎる相手や難局を前に、施す手立てが全くない状態を指す。
「体・身体」に関する四字熟語
- 全身全霊(ぜんしんぜんれい):
「全身」は肉体的な力、「全霊」は精神力や意志を指す言葉。物理・精神を問わず、自分の持てる力のすべてを注ぎ込む姿勢を表す。 - 五体満足(ごたいまんぞく):
頭・両腕・両足など体全体に欠けたところがない状態。古代中国では「五体満足でなければ成仏できない」という死生観もあった。 - 五体投地(ごたいとうち):
両手・両膝・額を地に伏せる、仏教で最も丁寧な礼拝の形。古代インドに起源を持ち、チベット仏教の巡礼でも今なお行われる。 - 満身創痍(まんしんそうい):
「満身」は体全体、「創痍」は傷や怪我を意味する言葉。元は戦で全身が傷だらけになった様子を表し、今は精神的な疲弊にも使う。 - 粉骨砕身(ふんこつさいしん):
唐代の禅の書物に由来し、骨を粉にし身を砕くほど尽くしても釈迦の恩に報いきれないという謙虚な教えから生まれた四字熟語。 - 弱肉強食(じゃくにくきょうしょく):
唐の文人・韓愈が僧を見送る文章に記した「弱の肉は強の食」が原典。自然界の食物連鎖になぞらえ、強者が弱者を制する理を表す。
「体・身体」に関する故事成語
- 身体髪膚、これを父母に受く(しんたいはっぷ、これをふぼにうく):
(『孝経』より)体も髪も皮膚も、すべて父母からいただいたものであるから、これを傷つけないように大切にすることが親孝行の始まりであるという教え。
【特集記事】
体の部位のことば集(ことわざ・慣用句・故事成語・四字熟語)
「体の部位」に関係する有名なことわざ・慣用句・故事成語・四字熟語の総合一覧です。










コメント