「歯」「舌」「喉」は、口や、その奥にある部位であり、食事や会話といった基本的な生命活動やコミュニケーションに深く関わっています。
「歯」は強さや対抗意識、「舌」は味覚や言葉遣い、「喉」は切実な欲求や声の調子を表すなど、それぞれが独特の比喩として用いられています。
「歯が立たない」「歯に衣着せぬ」「喉から手が出る」「歯亡びて舌存す」など、現代でも日常的に使われる表現が豊富で、歯・舌・喉にまつわる言葉は人間の感情や状態を巧みに表現しています。
ここでは、「歯」「舌」「喉」に関連する、主なことわざ・慣用句・故事成語を紹介します。
「歯・舌・喉」に関する ことわざ
- 舌は災いの元(したはわざわいのもと):
うっかりした一言が思わぬ災いを招くという戒め。中国の高官・馮道が「舌は身を斬る刀」と詠んだ故事に由来するとされる。 - 喉元過ぎれば熱さを忘れる(のどもとすぎればあつさをわすれる):
熱い物を飲み込んでも喉を通ればすぐに忘れるように、苦しい経験も過ぎ去れば忘れがちだというたとえ。受けた恩を忘れる戒めとしても使う。 - 歯亡びて舌存す(はほろびてしたそんす):
中国の老子が、歯を失っても舌が残る知人を見て説いたという故事から。堅いもの(歯)は早く滅び、柔らかくしなやかなもの(舌)は後まで残ることのたとえ。
「歯・舌・喉」に関する慣用句
歯に関する表現
- 歯が立たない(はがたたない):
硬い物を歯で噛み切れない状態がもとの意味で、そこから転じ、相手の力が強すぎてまるで歯が立たないほど無力に感じられる状態を表す。 - 歯が浮く(はがうく):
歯の根が緩んでぐらつくような不快な違和感を、軽薄な言動や見え透いたお世辞を耳にしたときの居心地悪さにたとえた表現。 - 歯に衣着せぬ(はにきぬきせぬ):
歯を衣で隠さないという意から、思ったことを遠慮なくはっきり言う姿勢を表す。衣には言葉を飾る意味もあり、率直な物言いを示す。 - 歯を食いしばる(はをくいしばる):
強い痛みや悔しさに耐えるとき、無意識のうちに歯を強く噛みしめてしまう体の反応から生まれた、必死に耐え抜こうとする姿。 - 歯がゆい(はがゆい):
物事が思い通りに進まず、いらだたしいもどかしさ。歯がかゆいのに掻けずすっきりしない感覚になぞらえたという説がある。 - 歯ぎしりする(はぎしりする):
上下の歯を強くこすり合わせて音を立てるしぐさになぞらえ、悔しさや怒りを抑えきれずに耐え忍ぶ強い感情を表す。 - 歯を見せる(はをみせる):
白い歯をのぞかせてにっこり笑う様子から、心を開いた明るい笑顔を指す言い回し。江戸時代の洒落本にもすでに見られる。 - 奥歯に物が挟まったよう(おくばにものがはさまったよう):
奥歯に物が挟まって発音がはっきりしなくなる様子になぞらえ、思ったことをそのまま言わず、思わせぶりに話す言い方を表す。
舌に関する表現
- 舌を出す(したをだす):
人前で失敗した気恥ずかしさをごまかす仕草、あるいは陰でひそかに相手をあざ笑う気持ちを示すしぐさ。 - 舌打ちする(したうちする):
舌を上あごに当てて「チッ」と鋭い音を鳴らすしぐさ。不満や苛立ちを言葉にせず、態度だけで示したいときに使われる。 - 猫舌(ねこじた):
熱い食べ物や飲み物が苦手なこと。汗腺を持たず体温調整が苦手な猫が、冷めた餌しか口にしなかった様子から生まれた呼び方とされる。
喉に関する表現
- 喉から手が出る(のどからてがでる):
欲しさのあまり、喉から実際に手が伸びてきそうなほど強い欲求を表すたとえ。江戸時代の飢饉の記憶を背景に生まれたとされる。 - 喉を鳴らす(のどをならす):
おいしそうな食べ物を前にしたときや猫が甘えるときにも使われ、思わずごくりと喉を鳴らすほど強く欲しがるさまを表す。 - 喉に詰まる(のどにつまる):
食べ物ではなく、こみ上げる感情に妨げられて、言おうとした言葉がすぐには声にならず出てこなくなる様子を指す言い方。 - 喉を潤す(のどをうるおす):
水やお茶などの飲み物で、渇いた喉をしっとりと湿らせること。運動の後や暑い日など、渇きをいやす場面で使われる。 - 喉がかれる(のどがかれる):
声帯に炎症が起きて振動がうまく伝わらなくなり、声がしわがれてガラガラになること。歌い過ぎなどが原因になりやすい。
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