心地よい「香り」から、不快な「臭気」、そして物事の気配や人の品格を表す比喩としての「匂い」まで。
「匂い」は私たちの感覚に強く訴えかけるだけでなく、日本語の表現において豊かな意味合いを持っています。
今回は、「匂い」というテーマに関連する、主なことわざ、慣用句、四字熟語、故事成語などを紹介します。
「匂い」に関連する言葉 一覧
ことわざ
- 臭いものに蓋をする(くさいものにふたをする):
悪臭が漂わないよう、とりあえず蓋をすること。転じて、都合の悪いことや醜聞(しゅうぶん)が外部に漏れないよう、一時的に隠すことのたとえ。 - 栴檀は双葉より芳し(せんだんはふたばよりかんばし):
(香木である栴檀は、芽生え(双葉)の頃から良い香りがすることから)大成する人物は、幼い時から優れた才能や素質を示しているということのたとえ。
慣用句
- 鼻が利く(はながきく):
匂いを嗅ぎ分ける能力が高いこと。転じて、わずかな兆候から物事(利益や危険など)を察知する能力が鋭いこと。 - 鼻につく(はなにつく):
匂いが強すぎて不快に感じること。転じて、相手の言動が気取っていたり、自慢げだったりして嫌味に感じられること。 - きな臭い(きなくさい):
(何かが焦げるような匂いがすることから)戦争や事件、騒動などが起こりそうな、怪しい気配がすること。 - 胡散臭い(うさんくさい):
どことなく怪しい、油断できない、疑わしい匂いがすること。 - 生臭い(なまぐさい):
(血や生魚などの匂い)転じて、俗世間の欲望(金銭や権力など)が絡んでいるさま。 - 悪臭を放つ(あくしゅうをはなつ):
ひどい臭気を出すこと。転じて、悪名や悪い評判が広まっていること。
四字熟語
- 芳香馥郁(ほうこうふくいく):
(「芳香」「馥郁」ともに、良い香りのこと)良い香りが、あたり一面に漂っているさま。 - 桂馥蘭香(けいふくらんこう):
(「桂」はモクセイ、「蘭」はラン)モクセイやランの良い香りがすること。高貴で素晴らしい香りのたとえ。 - 遺臭万年(いしゅうばんねん):
悪い行いや評判(臭名)が、一万年先までも残ること。ひどく汚れた名声。
故事成語
- 鮑魚の肆に入るが如し(ほうぎょのしにいるがごとし):
干し魚(鮑魚)を売る店(肆)に入れば、最初は臭いが、やがて慣れて匂いを感じなくなること。
悪い環境にいれば、悪に染まりやすいことのたとえ。
(中国の『孔子家語』などより) - 芝蘭の交わり(しらんのまじわり):
「芝」と「蘭」は、ともに良い香りのする植物。
徳の高い優れた人物との交際は、良い香りの部屋にいるようで、自然と良い影響を受けるということ。
(中国の『孔子家語』より) - 一薫一蕕(いっくんいっきゅう):
「薫」は良い香りの草、「蕕」は臭い草。
善人と悪人は相容れないこと、また、一人の善人がいても多くの悪人がいれば、その善が隠れてしまうことのたとえ。
(中国の故事から)
その他の言葉
- 風薫る(かぜかおる):
(主に初夏の季語として)風が若葉の良い香りを運んでくるように、さわやかに感じられること。
まとめ – 匂いが示すもの
「匂い」に関連する言葉を紹介しました。
「芳香馥郁」のような心地よい香りから、「臭いものに蓋をする」ような悪臭、そして「きな臭い」や「生臭い」といった比喩的な気配まで、多くの表現がありました。
「栴檀は双葉より芳し」や「芝蘭の交わり」のように、良い香りは古くから徳の高い人物や才能の象徴とされてきました。
匂いという感覚が、物事の本質や人の品格を見抜く鋭い比喩として使われてきたことがわかりますね。









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