物理的な傷から心に負う深い傷まで、私たちの日常には様々な形をした痛みが存在します。
言葉の世界にも、チクリとした些細な痛みから息もできないほどの激しい苦痛まで、多種多様な痛みを表す表現が数多く残されています。
身体と心で感じる様々な「痛み」にまつわることわざや慣用句、四字熟語をまとめました。
身体的・物理的な痛みを表す言葉
- 痛くも痒くもない(いたくもかゆくもない):
「痛い」「痒い」という肉体的な感覚を精神的な意味に転じて用いた言葉で、批判や非難を浴びせられても、まったく動じずに平然としている様子をいう。 - 身を切るような(みをきるような):
刃物で体を切られるかのような鋭い痛みにたとえた表現で、身を切るような北風というように、肌がひりつくほど厳しい寒さや痛みを強調する。 - 七転八倒(しちてんばっとう):
中国の書物『朱子語類』に見える言葉とされ、七度転げて八度倒れるという誇張した数え方によって、激しい苦痛にもがき苦しむ様子を表す。 - 阿鼻叫喚(あびきょうかん):
仏教が説く「阿鼻地獄」と「叫喚地獄」という二つの地獄を組み合わせた言葉で、責め苦に泣き叫ぶような、悲惨で混乱しきった状況をいう。 - 塗炭の苦しみ(とたんのくるしみ):
中国の古典『書経』の一節に由来する言葉で、泥にまみれ火で焼かれるような、言葉にできないほどむごたらしく苦しい状況を表現する。 - 病膏肓に入る(やまいこうこうにいる):
中国の故事に由来する言葉で、名医でも治せないほど病気が体の奥深くまで進んでしまった状態から、物事にのめり込みすぎる様子もいう。 - 満身創痍(まんしんそうい):
体中が傷だらけであること。転じて、精神的にまいっている状態や、周囲からひどく痛めつけられている状態もいう。
「創痍」は刃物などで体に受けた傷のこと。
精神的・感情的な痛みを表す言葉
- 頭が痛い(あたまがいたい):
実際に頭痛がするわけではなく、解決の糸口が見えない心配事や難題を抱えて、あれこれと思い悩んでいる心境を体の感覚で表した言葉。 - 胸が痛む(むねがいたむ):
他人の不幸な境遇や、自分自身の過ちなどに触れたとき、同情や罪悪感によって胸の奥が締めつけられるような、切ない気持ちを表す。 - 胸が張り裂ける(むねがはりさける):
悲しみや苦痛があまりに強く、まるで胸そのものが真っ二つに裂けてしまうかと思うほどの、耐えがたいつらさを描いた表現。 - 断腸の思い(だんちょうのおもい):
中国の故事で、子を失った母猿の腹を裂くと腸がちぎれていたという逸話に由来し、はらわたが引きちぎられるほどの深い悲しみを表す言葉。 - 耳が痛い(みみがいたい):
他人の言葉が自分の弱点や欠点を突いていて、聞くのがつらい様子をいう。 - 痛いところを突かれる(いたいところをつかれる):
触れられたくない弱点や、隠しておきたい事実をずばりと言い当てられてしまい、思わず返す言葉に詰まってしまう気まずい状況を表す。 - 痛くもない腹を探られる(いたくもないはらをさぐられる):
何もやましいことをしていないのに、あれこれと疑いをかけられること。
腹痛でもないのに、痛い所はどこかと探り回されることから。 - 痛くもない腹を探られる(いたくもないはらをさぐられる):
実際にはやましい点が何ひとつないのに、周囲から根拠のない疑いをかけられてしまう、理不尽で釈然としない状況をあえて強調した言葉。 - 骨身にしみる(ほねみにしみる):
寒さや苦労、あるいは他人からの忠告などが、単なる表面ではなく心と体の芯までじんわりと深く染み込んで感じられる様子をいう。 - 辛酸をなめる(しんさんをなめる):
つらく苦しい経験を重ねること。 - 千辛万苦(せんしんばんく):
数え切れないほど多くのつらさや苦労を、次々と重ねて経験すること。 - 四苦八苦(しくはっく):
非常に苦労し、さんざん苦しみ悩むこと。
もとは仏教で、生・老・病・死の四苦に、愛別離苦・怨憎会苦・求不得苦・五陰盛苦を加えた八苦をいい、人間のあらゆる苦しみを指す。
痛みが重なる状況や教訓を示す言葉
- 泣きっ面に蜂(なきっつらにはち):
泣いている顔をさらに蜂が刺すように、不運が重なって起こる状況をいう。 - 弱り目に祟り目(よわりめにたたりめ):
「目」はここでは状態を表す接尾語で、心身がすっかり弱っているところにさらに災いが重なってしまう、二重に不運な状況を表す言葉。 - 傷口に塩を塗る(きずぐちにしおをぬる):
すでに痛んでいる傷口にわざわざ塩を塗り込んで、さらに痛みを与えることから、弱っている相手を追い打ちするような言動を指す。 - 骨肉相食む(こつにくあいはむ):
「骨肉」は切っても切り離せない親子や兄弟の間柄を指し、その血を分けた者同士が憎み合い、激しく争って傷つけ合う状況を表す言葉。 - 痛い目に遭う(いたいめにあう):
実際の身体的な痛みだけでなく、失敗や無謀な行動の結果として、後になって後悔するようなつらい経験やひどい仕打ちを受ける状況をいう。 - 怪我の功名(けがのこうみょう):
過失や災難と思われたことが、思いがけなくよい結果をもたらすこと。
この「怪我」は負傷ではなく、過ちやしくじりのこと。 - 羹に懲りて膾を吹く(あつものにこりてなますをふく):
中国の古典『楚辞』の一節に由来する言葉で、熱い吸い物にこりて冷たい膾まで吹いてさますように、必要以上に用心深くなる様子をいう。 - 喉元過ぎれば熱さを忘れる(のどもとすぎればあつさをわすれる):
熱い物も飲み込んでしまえば熱さを感じなくなるという生理現象にたとえ、苦しい経験も過ぎ去ってしまえば簡単に忘れてしまう様子を表す。









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