意味
「卑怯(ひきょう)」とは、勇気がなく臆病なこと、また心がいやしく、物事に正々堂々と取り組まないことです。
- 卑(ひ):いやしい。身分や品性が低い。
- 怯(きょう):ひるむ。おそれる。勇気がない。
語源・由来
「卑怯」は、もとは「比興(ひきょう)」と書き、後から「卑怯」の字が当てられたとみられています。
「比興」には二つの系統があります。
一つは『詩経』の六義にある「比」(たとえ)と「興」から出た語で、他のものにたとえておもしろく言うことをいいます。
もう一つは「非拠」が変化した語とされ、不合理なこと、いやしいこと、臆病なことを表しました。
今の「卑怯」の意味は、この二つ目の系統につながります。
使い方・例文
「卑怯」は、ルールを無視して勝とうとしたり、責任を他人に押し付けたりする場面で使われます。
ビジネスシーンに限らず、遊びや家族間の些細なやり取りでも、公正さを欠いた振る舞いに対して用いられます。
- 負けそうになったからといって急にルールを変えるのは、あまりに卑怯だ。
- 自分が壊した皿を弟のせいにして黙っているなんて、そんな卑怯なことはしたくない。
- 相手が反論できない場所で悪口を広めるのは、卑怯なやり方と言うほかない。
- 彼は自分のミスを認めず、いつも周囲の環境のせいにする卑怯な癖がある。
誤用・注意点
「卑怯」と似た言葉に「卑劣(ひれつ)」がありますが、使い分けには注意が必要です。
「卑怯」には「臆病(怯え)」のニュアンスが含まれており、弱さゆえに逃げてしまうという文脈で使われることが多いです。
対して「卑劣」は、臆病かどうかに関わらず、品性や言動がいやしいことを表します。
また、「姑息(こそく)」を「卑怯」と同じ意味で使う人が多いですが、本来は「その場しのぎ」という意味です。
現代では「姑息な手段」が「卑怯な手段」に近いニュアンスで使われることも増えていますが、公的な文章では本来の意味(一時しのぎ)を意識した方が無難でしょう。
類義語・関連語
「卑怯」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 卑劣(ひれつ):
品性が卑しく、行動が極めて劣っていること。 - 狡猾(こうかつ):
悪賢く、他人をだますのがうまいこと。 - 臆病(おくびょう):
怖がりで、勇気を持って物事に当たれないこと。 - 不当(ふとう):
道理に合っておらず、正しくないこと。
対義語
「卑怯」とは対照的な意味を持つ言葉は、強さと誠実さを表します。
- 正々堂々(せいせいどうどう):
態度が立派で、少しもやましいところがない様子。 - 公明正大(こうめいせいだい):
公平で、私心を挟まずに堂々としていること。 - 潔い(いさぎよい):
未練がなく、卑怯な振る舞いや迷いがないこと。 - 勇敢(ゆうかん):
恐れず、勇気を持って困難に立ち向かうこと。
英語表現
「卑怯」を英語で表現する場合、その「ずるさ」や「臆病さ」の度合いによって言葉を使い分けます。
Cowardly
「臆病な」「卑怯な」を意味する、最も代表的な形容詞です。
立ち向かう勇気がないことを強調する際に使われます。
It was cowardly of him to avoid the discussion.
(話し合いから逃げた彼の振る舞いは卑怯だった。)
Unfair
「不公平な」「ずるい」という意味で、競技や勝負事、対等であるべき場面で不当な手段を使ったときに最適です。
That’s unfair! You changed the rules in the middle of the game.
(卑怯だよ!ゲームの途中でルールを変えるなんて。)
Sneaky
「こそこそした」「卑怯な」という意味です。
陰でこっそり悪巧みをするような、小賢しいニュアンスが含まれます。
I don’t like his sneaky way of taking credit.
(彼の手柄を横取りするような卑怯なやり方は好きになれない。)
狂言『神鳴』の「卑怯」は臆病のこと
狂言『神鳴』では、空から落ちて腰を打った雷が、通りかかった藪医者を脅して治療をさせます。
医者が針を打つと、雷は「あ痛、あ痛」と大騒ぎします。
そこで医者が言うのが、「雷の、その様な卑怯な事がござらうか」(雷ともあろう者が、そんな意気地のないことがありますか)というせりふです。
雷は痛がりながらも治療を受け、治ったお礼に、八百年のあいだ日照りや大水を起こさないと約束して天へ帰ります。
医者の「卑怯」は、ずるさではなく、針の痛みにひるむ臆病さを責めた言葉です。













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