意味
「依怙贔屓(えこひいき)」とは、自分の気に入った者や関係の深い者だけを特別に扱い、他に対して不公平な差をつけることを指します。
正当な理由や基準に基づかず、主観的な「好き嫌い」によって待遇を変える、否定的な意味合いの強い言葉です。
- 依怙(えこ):一方にかたよってひいきすること。本来は「頼ること」「頼りにするもの」の意。
- 贔屓(ひいき):特定の人に目をかけ、力を添えて助けること。
語源・由来
「依怙贔屓」は、もともと異なる背景を持つ二つの言葉が結びついて生まれました。
「依怙」は、もとは「頼りにする」「頼りにするもの」を表す漢語です。
日本ではこの意味から転じて、「一方にかたよってひいきすること」や「自分の利益(私利)」の意味で多く使われるようになりました。
「贔屓」は、本来「ひき」と読み、「力をふりしぼる」「盛んに力を出す」ことを表す漢語です。
「ひいき」はこの「ひき」が変化した読みで、「大いに力を入れること」の意味が、力を入れる対象が限られることで「自分の気に入った者に特に力添えすること」へと移りました。
中国には、竜の子の一つに「贔屓」という名の、亀に似た生き物がいるという言い伝えもあります。
「依怙」と「贔屓」がどちらも「自分の気に入った者の肩をもつ」意味に転じてほぼ同じ意味になったため、二つを重ねて「依怙贔屓」と言うようになったと考えられています。
「贔屓」は「贔屓のチーム」のように好意的な引き立ての意味でも使われますが、「依怙贔屓」は不公平な肩入れを非難する意味で使われます。
使い方・例文
「依怙贔屓」は、公平な立場にあるべき人物が、私情を挟んで特定の誰かを優遇し、周囲の不満を招いている状況で使われます。
組織の規律を乱す行為や、不当な評価に対する批判的な文脈で用いられるのが一般的です。
例文
- 指導者が特定の人物だけを依怙贔屓すれば、集団の士気は必ず下がる。
- 自分の感情を抑え、依怙贔屓のない公平な判断を下さなければならない。
- 第三者から見て、その判定は明らかに依怙贔屓だと感じられた。
- 依怙贔屓が横行する環境では、正当な努力が報われにくい。
類義語・関連語
「依怙贔屓」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 肩を持つ(かたをもつ):
対立している一方の味方をする。 - 身贔屓(みびいき):
自分の身内や関係者だけを特別に可愛がり、便宜を図ること。 - 偏愛(へんあい):
特定の人や物だけを、他と比べて極端に愛すること。 - 不公平(ふこうへい):
判断や扱いに偏りがあり、公平でないこと。
対義語
「依怙贔屓」とは対照的な意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 公平無私(こうへいむし):
自分の感情や利益を交えず、誰に対しても平等に接すること。 - 公明正大(こうめいせいだい):
公平で、隠し事がなく、堂々と正しい道を通すこと。 - 中立(ちゅうりつ):
どちらの側にも偏らず、中間の立場を保つこと。
英語表現
「依怙贔屓」を英語で表現する場合、以下の言葉が適しています。
favoritism
最も一般的で、特定の人を不当に優遇することを指す名詞です。
「お気に入り(favorite)」という言葉に由来し、好き嫌いによる偏りを表します。
Management was criticized for its favoritism.
(経営陣は依怙贔屓をしていると批判された。)
partiality
「部分(part)」を語源とする形容詞 partial(一方に偏った)の名詞で、一方への肩入れや偏りを指します。
判断が偏っているニュアンスが含まれます。
The award was given without any partiality.
(その賞は一切の依怙贔屓なしに授与された。)
幕府の誓いの文書や『坊っちゃん』の「依怙贔負」
江戸幕府では、役目に就く役人が、守ることを書き連ねた誓いの文書(起請文)を差し出しました。
1614年(慶長19年)の、訴訟を裁く役人の起請文には「雖為親子兄弟、無依怙贔負有様可申付事」とあります。
(たとえ親子兄弟であっても、依怙贔屓をせず、ありのままに申し付けること)
このころから明治にかけては「依怙贔負」とも書きました。
夏目漱石の『坊っちゃん』でも、語り手の「おれ」が、なぜ自分にだけ物をくれて兄にはくれないのかと下女の清に聞く場面で使われています。
清が、兄さんにはお父様が買ってくれるからと答えると、「おれ」は「おやじは頑固だけれども、そんな依怙贔負はせぬ男だ」と父をかばいます。
「おれ」は続けて、清の目から見るとそう見えるのだろう、「贔負目は恐ろしいものだ」と言います。
「おれ」ばかりをひいきする清の目には、父のほうが依怙贔屓をしているように映っていた、という場面です。









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