栴檀は双葉より芳し

ことわざ
栴檀は双葉より芳し(せんだんはふたばよりかんばし)
短縮形:栴檀は双葉

14文字の言葉せ・ぜ」から始まる言葉
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将来、大物になる人は、子供の頃からどこか違う。
そんな風に感じさせる子供に出会ったことはありませんか?
今回は、そのような早期の才能を示すことわざ「栴檀は双葉より芳し」について、その意味や背景、使い方を紐解いていきましょう。

「栴檀は双葉より芳し」の意味・教訓

このことわざは、「将来大成するような優れた人物は、幼い頃から非凡な才能や素質を発揮する」という意味を表します。

「栴檀(せんだん)」は香りの良い木(香木)の名前です。
その栴檀が、芽を出したばかりの「双葉」の頃からすでに良い香りを放っている、という様子にたとえています。

才能ある人物が幼少期からその片鱗を見せることへの期待や、将来性を褒める肯定的なニュアンスで使われる言葉です。

語源 – 香り高き木の伝説

「栴檀」が具体的にどの木を指すかについては諸説あります。
インド原産の香木「白檀(びゃくだん)」を指すという説が有力ですが、日本の古典文学などでは、日本にも自生するセンダン科の落葉高木「栴檀」を指している場合もあります。

いずれにしても、古くからその芳香で知られ、仏像や仏具の材料としても用いられてきた貴重な木でした。

このことわざの明確な初出は分かっていませんが、平安時代の『今昔物語集』などにも栴檀の香りを讃える記述が見られることから、その香りの高さが古くから知られており、優れた才能の比喩として用いられるようになったと考えられます。

使われる場面と例文 – 才能の早期発現を讃える時

「栴檀は双葉より芳し」は、主に子供や若者が持つ才能や、将来有望であることを褒め称える際に用いられます。
早くから特定の分野で頭角を現した人に対しても使われます。

例文

  • 「彼女のピアノ演奏は小学生とは思えない表現力だ。まさに栴檀は双葉より芳しだね。」
  • 「彼は幼い頃から難しい数式を解いていたそうだ。栴檀は双葉より芳しというが、将来が本当に楽しみだ。」
  • 「あの若さで画壇にデビューするなんて、栴檀は双葉より芳しだなあ。」

文学作品やメディアでの使用例

世にまさらむ人は。かたち有様心ざまよかるべきぞ。さては栴檀は二葉より香ばしと申すぞや

(出典:『源氏物語』桐壺)

これは、光源氏の幼少期、高麗こまから来た人相見がその類いまれな才気と容貌を見て、帝に将来性を語る場面の一節です。
「優れた人物は、生まれつき容姿や心映えが良く、栴檀が双葉の頃から香るように、幼いときからその非凡さが現れるものです」といった意味合いで使われています。

「栴檀は双葉より芳し」の類義語 – 若くして現れる才能

  • 竜は一寸にして昇天の気あり
    竜は体が小さくても天に昇ろうとする気概を持っている。英雄や豪傑は幼い時から普通の人とは違うところがある、というたとえ。
  • 蛇は寸にして人を呑む(じゃはすんにしてひとをのむ):
    蛇は小さくても人を呑み込もうとする気迫がある。非凡な人物は幼少時から人並み外れた才能や気性を示すことのたとえ。

「栴檀は双葉より芳し」の対義語 – 遅れて花開く才能

  • 大器晩成:大きな器が完成するまでに時間がかかるように、真に偉大な人物も大成するには時間がかかるということ。「栴檀は双葉より芳し」が才能の早期発現を示すのに対し、こちらは才能が開花するまでに時間を要することを示すため、対照的な意味を持つ。

「栴檀は双葉より芳し」の英語での類似表現

  • Genius displays itself even in childhood.
    意味:天才は子供時代にすでにそれ自身(才能)を示す。
    解説:「栴檀は双葉より芳し」の「幼い頃から才能を見せる」という点に非常に近い表現です。
  • The child is father of the man.
    意味:子供は大人の父である。
    解説:イギリスの詩人ワーズワースの詩の一節。「三つ子の魂百まで」にも通じ、幼少期の性質や経験がその人の将来の人間性を形作る、という意味合いで使われます。
    才能の早期発現を直接示すわけではありませんが、幼少期の重要性を示唆する点で関連があります。
  • As the twig is bent, so grows the tree.
    意味:小枝が曲げられたように、木は育つ。
    解説:幼い頃の環境や教育が、その後の成長に大きく影響するという意味のことわざ。
    「A good tree bears good fruit.(良い木は良い実をつける)」と似ていますが、こちらは幼少期の重要性をより強調しています。

「栴檀は双葉より芳し」を使う上での注意点

このことわざは、人の才能や将来性を肯定的に評価する際に使われますが、いくつか注意したい点があります。

  • 決めつけは避ける:幼い頃に特別な才能が見られなくても、後になって素晴らしい能力を発揮する人はたくさんいます(まさに「大器晩成」です)。このことわざをもって、人の可能性を早期に判断しすぎないようにしましょう。
  • 過度な期待:特に子供に対して使う場合、周囲の過度な期待がプレッシャーにならないよう配慮が必要です。
  • 文脈に注意:才能を妬むような文脈で使うと、皮肉や嫌味に聞こえてしまう可能性もあります。相手や状況を考えて使うことが大切です。

まとめ – 輝く才能の芽を大切に

「栴檀は双葉より芳し」は、将来有望な人物が幼い頃からその才能の片鱗を見せることを、香木の若芽にたとえた美しいことわざです。

若くして現れる才能を称賛するポジティブな言葉ですが、一方で人の成長は様々であることも心に留めておきたいですね。
才能の芽が現れる時期は人それぞれ。焦らず、決めつけず、それぞれの可能性を見守る視点も大切でしょう。

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