意味
「歯に衣着せぬ(はにきぬきせぬ)」とは、相手に対して遠慮をせず、思ったことをはっきりと口に出すことです。
言葉を飾ったり、遠回しな言い方をして内容を濁したりしない、率直な態度を指します。
- 歯(は):ここでは「言葉が発せられる場所」や「言葉そのもの」を象徴しています。
- 衣(きぬ):衣服、つまり「包み隠すもの」や「飾り」を意味します。
- 着せぬ(きせぬ):着せない。覆い隠さないということ。
語源・由来
「歯に衣着せぬ」は、言葉を包み隠すことを、歯に衣服を着せることに例えた比喩表現で、「衣」は衣服のことです。
言葉が出てくる出口である歯に、覆い隠すための布(衣)を被せないという情景から、自分の意見を加工せずにそのまま外へ出す様子を表すようになりました。
使い方・例文
相手との関係性が近く、建前よりも本音を優先すべき場面でよく使われます。
単に失礼なことを言うのではなく、誠実さや潔さが含まれるニュアンスで用いられることも多い表現です。
例文
- 親友の歯に衣着せぬ忠告のおかげで、自分の間違いに気づくことができた。
- 祖父は誰に対しても歯に衣着せぬ物言いをするが、不思議と嫌われない。
- 会議では、新入社員の歯に衣着せぬ意見が事態を打開するきっかけになった。
誤用・注意点
「歯に衣着せぬ」は、あくまで「率直に言う」ことであり、相手を深く傷つけるための「暴言」や「単なる悪口」とは異なります。
また、「衣」を「ころも」と読んで「歯に衣(ころも)着せぬ」とするのは誤りです。
正しくは「きぬ」と読みます。
さらに、「歯に衣着せない」という形も使われますが、慣用句としては「着せぬ」という古風な形が本来の姿です。
類義語・関連語
「歯に衣着せぬ」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 単刀直入(たんとうちょくにゅう):
前置きや遠回しな表現を省き、いきなり本題や核心に入ること。 - 忌憚のない(きたんのない):
遠慮やためらいを捨てて、ありのままの考えを述べること。 - 明け透け(あけすけ):
包み隠すところがなく、すべてを露骨にさらけ出す様子。
対義語
「歯に衣着せぬ」とは対照的な意味を持つ言葉は、以下の通りです。
- 奥歯に物が挟まったよう(おくばにものがはさまったよう):
言いたいことをはっきり言わず、何かを隠しているようなもどかしい言い方。 - オブラートに包む:
相手を刺激しないよう、直接的な表現を避けて穏やかな言い方に変えること。 - 婉曲(えんきょく):
遠回しに、それとなく表現すること。
英語表現
「歯に衣着せぬ」を英語で表現する場合、以下の表現が適しています。
Not mince matters [words]
意味:遠慮せずに、はっきりと言う。
He does not mince his words even when speaking to his boss.
(彼は上司に対しても歯に衣着せぬ物言いをする。)
Call a spade a spade
意味:スペードをスペードと呼ぶ(=ありのままを言う)。
Let’s call a spade a spade. The plan is a total failure.
(はっきり言おう。その計画は完全な失敗だ。)
「歯に衣着せぬ」の反対の「オブラートに包む」は薬を包む膜から
反対の意味で使う「オブラートに包む」の「オブラート」は、でんぷんから作る薄い食べられる膜です。
語はオランダ語のオブラートからで、もとはキリスト教のミサに用いる小型の薄いパンを指しました。
日本では1902年(明治35年)に、三重県の医師・小林政太郎が柔らかいオブラートを製品化しています。
1914年(大正3年)には、これで包んだ菓子も売り出されました。
薬を飲みやすくする道具の名が、言い方を和らげるという意味に移っています。













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