意味
「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ(しょうをいんとほっすればまずうまをいよ)」とは、大きな目的を達成するには、直接本命を狙うのではなく、まずその周囲にあるものから攻略していくのが早道であるという意味です。
敵の将軍を倒すには、まずその乗っている馬を射落として動きを封じるべきだという軍事的な例えです。
真正面からぶつかっても勝算が薄い場面で、搦め手からアプローチする冷静な判断を促す際に使われます。
語源・由来
中国唐代の詩人である杜甫が詠んだ連作詩『前出塞』の第六首にある、次の一節が基になっています。
射人先射馬、擒賊先擒王
(人を射んとせば先ず馬を射よ、賊を擒えんとせば先ず王を擒えよ)
杜甫の詩では「人」ですが、ことわざでは敵の軍勢を率いる大将を指す「将」の形で使われています。
『前出塞』第六首は、この句のあとに次のように続きます。
殺人亦有限、列國自有疆
苟能制侵陵、豈在多殺傷
(人を殺すにも限りがあり、国にはそれぞれ境がある、侵略を抑えられさえすれば、多く殺し傷つけることに意味はない)
詩は、要所を押さえて相手を制する戦い方を述べたあと、侵略を抑えられれば多く殺し傷つける必要はない、と結んでいます。
使い方・例文
「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ」は、目上の人物や影響力のある相手に対し、直接的な交渉を避けて周囲から外堀を埋めていく場面で使われます。
- 社長を説得するため、将を射んと欲すれば先ず馬を射よで専務に根回しをする。
- 強力なライバル企業を崩すため、将を射んと欲すれば先ず馬を射よの策に出た。
類義語・関連語
「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 外堀を埋める(そとぼりをうめる):
目的を達成するために、周辺の障害や問題から順に片付けていく様子。 - 搦め手から攻める(からめてからせめる):
正面からではなく、裏側や相手の死角など、間接的な方法でアプローチする戦術。 - 布石を打つ(ふせきをうつ):
将来の目的達成のために、あらかじめ必要な準備や手配をしておくこと。
対義語
「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ」と反対の意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 単刀直入(たんとうちょくにゅう):
前置きや遠回しな手順を省き、すぐに本題や核心へ切り込むこと。 - 直球勝負(ちょっきゅうしょうぶ):
小細工や駆け引きを一切せず、正面から堂々と事にあたる様子。
英語表現
He that would the daughter win, must with the mother first begin
直訳は「娘を手に入れたい者は、まず母親から始めなければならない」で、目的の人物に近づくには、まずその身近な人を味方につけるべきだという意味の英語のことわざ。
He that would the daughter win, must with the mother first begin, so I brought a gift for her family.
(将を射んと欲すれば先ず馬を射よというように、彼女の家族に贈り物をした。)
将を射んと欲すれば先ず馬を射よは「根回し」と同じ手順
この言葉が示す「周辺から攻略する」という構造は、日本のビジネス文化に根付いた「根回し」の考え方と重なります。
重要な会議や決裁の場でいきなりトップに提案をぶつけるのではなく、事前に担当者や中間管理職の賛同を得ておくプロセスは、馬を射て相手の態勢を崩す戦術と共通します。
意思決定が複数の階層に分かれている組織では、正面突破は摩擦を生みやすく失敗のリスクが高まります。
そのため、ターゲットの周囲にいるキーパーソンを見極め、先に味方につけていく間接的なアプローチが、根回しの手段として用いられています。










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