意味
「一筋縄ではいかない(ひとすじなわではいかない)」とは、普通のやり方では思い通りにならず、解決や攻略に特別な工夫や多大な努力を要するという意味です。
単に「難しい」というだけでなく、相手に一癖あったり、物事が複雑に絡み合っていたりする場合に使われます。
普通のやり方(一筋縄)では通用しない手強い状態を指します。
語源・由来
「一筋縄」は、もとは一本の縄のことで、転じて普通のやり方、尋常一様の手段という意味でも使われます。
「一筋縄ではいかない」は、この普通のやり方では思うように運ばない、という意味の言い方です。
使い方・例文
「一筋縄ではいかない」は、攻略が難しい問題、手強いライバル、あるいは一癖ある人物の性格などを描写する際に使われます。
ありきたりの解決策が通用しない場面に合う表現です。
例文
- あの先生が出題する数学のテストは、一筋縄ではいかない。
- 実家の物置の片付けは、荷物が多くて一筋縄ではいかない。
- 優勝候補のチームだけあって、その固い守備は一筋縄ではいかない。
- 今回の取引相手は、こちらの条件をすぐに見抜く一筋縄ではいかない人物だ。
誤用・注意点
「一筋縄ではいかない」を、単に「時間がかかる」という意味だけで使うのは不十分です。
この言葉の核心は、対象が持つ、単純な策では通用しないほどの複雑さや強かさにあります。
また、相手の能力を評価する言葉ではありますが、「ひねくれている」「扱いづらい」といった、ややネガティブなニュアンスを含んでしまうことがあります。
※本人に向かって使うと「扱いづらい人だ」と評したことになるため注意が必要です。
類義語・関連語
「一筋縄ではいかない」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 曲者(くせもの):
一癖あって、一筋縄ではいかない油断できない人物。 - 難物(なんぶつ):
扱いにくく、処理や解決が非常に困難な物事や人。 - 海千山千(うみせんやません):
世間の裏表を経験し尽くして、一筋縄ではいかないほど悪賢いこと。 - 手強い(てごわい):
相手の力が強くて、容易には太刀打ちできない。
対義語
「一筋縄ではいかない」とは対照的な意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 御しやすい(ぎょしやすい):
自分の思い通りに動かすことが簡単である。 - 扱いやすい(あつかいやすい):
素直であったり構造が単純だったりして、苦労せずに扱える。 - 朝飯前(あさめしまえ):
非常に簡単で、わずかな時間でできてしまうこと。
英語表現
「一筋縄ではいかない」を英語で表現する場合、以下の定型表現が使われます。
a tough nut to crack
手強い問題、または扱いにくい人。
「割るのが難しい硬い木の実」という直訳から転じて、解決の難しい問題や、一筋縄ではいかない手強い人を指します。
The new project turned out to be a tough nut to crack.
(新しいプロジェクトは、一筋縄ではいかないものだと分かった。)
not a pushover
容易には屈しない人。
「プッシュオーバー(簡単に倒せる相手)」ではないという意味から、一筋縄ではいかない人物であることを表します。
Our opponent in the next match is not a pushover.
(次の試合の相手は、一筋縄ではいかない。)
「一筋縄」の用例、浄瑠璃から泉鏡花『義血侠血』まで
「一筋縄では行かぬ」の形は、江戸時代の浄瑠璃『関取千両幟』(1767年)に「一筋縄では往かぬ奴」として出てきます。
人をさして、普通のやり方では思うようにならない相手だと言う使い方です。
明治の作家泉鏡花は『義血侠血』(1894年)で、乗合馬車に乗り込んできた若い女を初めて描く場面に「世磨れ、場慣れて、一条縄の繋ぐべからざる魂を表わせり」と書きました。
(世間にもまれ、人前に慣れていて、一本の縄ではつなぎ止められない気性が表れていた)
作品では「一条縄」と書いて「ひとすじなわ」と読ませています。
この女がのちに水芸の太夫と分かる主人公の滝の白糸で、「一筋縄」ではつなげない手強さが、登場の場面から示されています。









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