意味
「七珍万宝(しっちんまんぽう)」とは、仏教において尊ばれる「七珍」と、数限りない宝を指す「万宝」を組み合わせた言葉で、あらゆる種類の宝物のことです。
「七珍」は七つの宝のことで、仏教の経典『無量寿経』の宝の木の段では次の七種が挙げられています。
- 金(こん):黄金。
- 銀(ごん):白銀。
- 瑠璃(るり):青色の宝石。ラピスラズリに相当するとされる。
- 玻璃(はり):水晶のこと。
- 硨磲(しゃこ):シャコガイの貝殻。
- 珊瑚(さんご):赤い珊瑚。
- 瑪瑙(めのう):縞模様のある美しい石。
語源・由来
「七珍万宝」の由来は、仏教で語られる極楽浄土の光景にあります。
浄土はこれらの「七つの宝」で飾られ、光り輝いていると説かれました。
この「七珍」は「七宝」とも呼ばれます。
もとは仏教の言葉ですが、『方丈記』(1212年)に「七珍万宝さながら灰燼となりにき」(=あらゆる宝がそっくり灰になってしまった)とあるように、古くから世俗の財宝についても使われてきました。
使い方・例文
「七珍万宝」は、種類も数も多い宝物をまとめて言うときに使います。
『方丈記』のように、それが一度に失われる場面でも使われます。
例文
- 博物館の特別展では、シルクロードを経て伝わった七珍万宝が公開されている。
- 大火で、長者が蓄えた七珍万宝も一夜で灰になった。
- 異国の王宮を訪れると、見たこともない七珍万宝が所狭しと飾られていた。
誤用・注意点
「七珍万宝」は文語的で、格調の高い言葉です。
日常のちょっとした買い物や、単に物が多いだけの様子に使うと大げさに聞こえます。
類義語・関連語
「七珍万宝」と似た意味を持つ言葉には、富や贅沢さを表すものがいくつかあります。
- 金銀財宝(きんぎんざいほう):
金や銀をはじめとする、さまざまな価値の高い宝物のこと。 - 金玉満堂(きんぎょくまんどう):
黄金や宝玉が家の中に満ち溢れている様子。転じて、豊かな才能や知識があることの例え。
対義語
「七珍万宝」とは対照的な意味を持つ言葉は、価値のないものや何も持たない状態を指します。
- 瓦礫(がれき):
価値のない石ころや瓦の破片。転じて、全く値打ちのないものの例え。 - 無一物(むいちもつ):
何一つ持っていないこと。
英語表現
「七珍万宝」を英語で表現する場合、宝がたくさん集まった場所を指す次の表現が近い言い方です。
Treasure trove
直訳は「隠されていて見つかった宝」で、埋もれていた財宝の山や、価値のあるものがたくさん見つかる場所を指す表現。
The museum’s storeroom was a treasure trove of ancient art.
(その博物館の収蔵庫は、古代美術の宝の山だった。)
七珍の七つ、経典ごとに2種が入れ替わる
七つの宝の顔ぶれは、経典によって少しずつ違います。
金・銀・瑠璃・硨磲・瑪瑙の5つは下の経典のどれにも入り、太字の2つが入れ替わります。
- 『無量寿経』の浄土の地:
金・銀・瑠璃・硨磲・瑪瑙・珊瑚・琥珀 - 『無量寿経』の宝の木:
金・銀・瑠璃・硨磲・瑪瑙・玻璃・珊瑚 - 『阿弥陀経』:
金・銀・瑠璃・硨磲・瑪瑙・玻璃・赤珠(赤い玉) - 『法華経』:
金・銀・瑠璃・硨磲・瑪瑙・真珠・玫瑰(赤系の宝玉とされるが、何を指すかははっきりしない)
同じ『無量寿経』の中でさえ、地と木とで顔ぶれが変わります。
「七」という数は決まっていても、中身は一つに決まっていなかったのです。











コメント