話題のグルメが翌日には手元に届いたり、旅番組で知られざる土地の魅力を目にしたりする機会が増えました。
このように、国中の至る所や、あらゆる隅々まで行き渡る様子を、
「津々浦々」(つつうらうら)と表現します。
意味
「津々浦々」とは、「全国の至る所」「国中の隅々」という意味です。
単に範囲が広いだけでなく、人の生活がある場所の「隅々まで」というニュアンスを含んで使われます。
- 津(つ):船着き場、港。
- 浦(うら):海辺の入り江、海岸にある村。
「津」と「浦」を重ねることで、「いたるところの港や村」ひいては「人が住むすべての場所」を表すようになりました。
語源・由来
「津々浦々」の由来は、かつての日本の交通事情と深く関わっています。
鉄道や自動車が発達する以前、日本の物流や移動の主役は「船」でした。
物資や文化は海や川のルートを通じて運ばれ、「津(港)」や「浦(海辺の村)」は、地域と地域をつなぐ重要な玄関口(ネットワークの結節点)でした。
そのため、「すべての津や浦に行き渡る」ということは、すなわち「国中に広まる」ことと同義でした。
このことから、港や海辺に限らず、山間部を含めた「全国各地の隅々」を指す言葉として定着したのです。
使い方・例文
「津々浦々」は、単に「全国」と言うよりも、「細かな場所までくまなく」という丁寧なニュアンスや、響きの良さからくる情緒を含ませたい場合に使われます。
演説、商品の普及、放送の到達範囲などを語る際によく用いられます。
例文
- 今回の選挙活動では、津々浦々まで遊説して回る覚悟だ。
- 物流網の発達により、日本全国津々浦々の特産品が手軽に入手できるようになった。
- このラジオ番組の電波は、北は北海道から南は沖縄まで、全国津々浦々に届いている。
類義語・関連語
「津々浦々」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 全国各地(ぜんこくかくち):
国中のあちらこちら。最も一般的で、文脈を選ばず使える表現です。 - 六十余州(ろくじゅうよしゅう):
日本全国のこと。かつて日本が60余りの国に分かれていたことに由来する、歴史的な重みのある表現です。 - くまなく(くまなく):
隅から隅まで、余すところなくという意味。「隈無く」と書きます。
対義語
「津々浦々」とは対照的な意味を持つ言葉は以下の通りです。
- 一部地域(いちぶちいき):
全体ではなく、限られた特定の場所のみを指します。 - 局所的(きょくしょてき):
全体の中のある限られた部分にのみ関係するさま。
英語表現
「津々浦々」を英語で表現する場合、以下のようなフレーズが使われます。
throughout the length and breadth of …
- 意味:「~の至る所で」「~の隅から隅まで(縦横に)」
- 解説:「津々浦々」の持つ「隅々まで網羅する」というニュアンスに非常に近い、やや堅い表現です。
- 例文:
He traveled throughout the length and breadth of the country.
(彼は国の津々浦々を旅した。)
throughout the country
- 意味:「国の至る所で」「全国的に」
- 解説:最も一般的で、ニュースから日常会話まで幅広く使える表現です。
- 例文:
The news spread throughout the country.
(そのニュースは全国津々浦々に広まった。)
地名に残る「津」と「浦」
この言葉に使われている「津」と「浦」は、現代の地名にも数多く残っています。これらは、かつてそこが水運の拠点であった名残です。
「津」がつく地名(港)
- 大津(滋賀県・熊本県など)
- 沼津(静岡県)
- 木更津(千葉県)
- 津(三重県):地名そのものが「港」を意味します。
「浦」がつく地名(入り江・海辺)
- 三浦(神奈川県)
- 松浦(長崎県)
- 土浦(茨城県):海ではありませんが、かつては霞ヶ浦の水運で栄えた地です。
普段何気なく呼んでいる地名にも、「津々浦々」と同じ「水との関わり」が刻まれていることに気づかされます。
まとめ
「津々浦々」は、港や海辺の村々を指す言葉から転じて、全国の隅々までを表すようになった言葉です。
単に「広い範囲」というだけでなく、そこに人々の暮らしや往来があることを感じさせる表現です。
自分の足で各地を巡るときや、広く世の中に情報を届けたいとき、この言葉を使ってみてはいかがでしょうか。









コメント