意味
「津々浦々(つつうらうら)」とは、いたるところの港や海岸、また「全国の至る所」「国中の隅々」という意味です。
「つづうらうら」と読むこともあります。
- 津(つ):船着き場、港。
- 浦(うら):海辺の入り江、海岸にある村。
「津」と「浦」をそれぞれ重ねて「いたるところの港や海岸」を表し、そこから海辺に限らず全国いたるところを指すようになりました。
語源・由来
「津々浦々」は、文字どおりには各地の港や海岸を指す言葉です。
その使い方は、森鷗外の『山椒大夫』(1915年)に出てきます。
人買いの宮崎の三郎が、買い取った安寿と厨子王を舟に乗せて「越中、能登、越前、若狭の津々浦々を売り歩いた」と書かれており、北陸の海沿いの港を次々に回ったことを表しています。
使い方・例文
「津々浦々」は、単に「全国」と言うよりも、「細かな場所までくまなく」という丁寧なニュアンスや、響きの良さからくる情緒を含ませたい場合に使われます。
演説、商品の普及、放送の到達範囲などを語る際によく用いられます。
例文
- 今回の選挙活動では、津々浦々まで遊説して回る覚悟だ。
- 物流網の発達により、日本全国津々浦々の特産品が手軽に入手できるようになった。
- このラジオ番組の電波は、北は北海道から南は沖縄まで、全国津々浦々に届いている。
類義語・関連語
「津々浦々」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 全国各地(ぜんこくかくち):
国中のあちらこちら。最も一般的で、文脈を選ばず使える表現です。 - 六十余州(ろくじゅうよしゅう):
日本全国のこと。かつて日本が60余りの国に分かれていたことに由来する、歴史的な重みのある表現です。 - くまなく(くまなく):
隅から隅まで、余すところなくという意味。「隈無く」と書きます。
対義語
「津々浦々」とは対照的な意味を持つ言葉は以下の通りです。
- 一部地域(いちぶちいき):
全体ではなく、限られた特定の場所のみを指します。 - 局所的(きょくしょてき):
全体の中のある限られた部分にのみ関係するさま。
英語表現
「津々浦々」を英語で表現する場合、以下のようなフレーズが使われます。
throughout the length and breadth of …
直訳は「~の至る所で」「~の隅から隅まで(縦横に)」で、「津々浦々」の持つ「隅々まで網羅する」というニュアンスに非常に近い、やや堅い表現。
He traveled throughout the length and breadth of the country.
(彼は国の津々浦々を旅した。)
throughout the country
直訳は「国の至る所で」「全国的に」で、最も一般的で、ニュースから日常会話まで幅広く使える表現。
The news spread throughout the country.
(そのニュースは全国津々浦々に広まった。)
『太平記』の「津々浦々」、嵐で散った船団の行き先
南北朝時代を描く『太平記』の巻二十に、延元3年(1338年)、後醍醐天皇の皇子を乗せた五百余艘の船団が、伊勢から奥州(東北地方)へ向かう場面があります。
船団は遠江の天竜灘を過ぎたあたりで大風に襲われ、ばらばらに吹き流されました。
『太平記』は、伊豆の大島などの地名を挙げたうえで、「津々浦々の泊に船の吹寄せられぬはなかりけり」(あちこちの港や浜の船着き場に、船が吹き寄せられないところはなかった)と書いています。
ここでの「津々浦々」は、海沿いのいたるところの港や浜という、この言葉のもとの意味で使われています。










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