「一網打尽(いちもうだじん)」という言葉を聞くと、まるで犯人グループが警察によって一斉に捕らえられるような、ドラマチックな場面を想像するかもしれません。
この四字熟語は、もともとは漁師が網を使う様子から来ていますが、現在では「ある集団を一度に残らず捕らえる」という意味で、非常に広く使われています。
「一網打尽」の意味・教訓
「一網打尽」とは、文字通りには「一度の網で、打ち尽くす」と読み解けます。
その意味は、「一度網を入れるだけで、そこにいる魚をすべて捕らえてしまうこと」です。
そして、この意味から転じて、「(犯罪者などの)一味や敵対する者たちを、一人も残さず、一度に全員捕らえること」を指す言葉として使われます。
この言葉には、効率よく、かつ徹底的に対象を制圧する、という強いニュアンスが含まれています。
「一網打尽」の語源

「一網打尽」の語源は、文字通り漁にあります。
魚の群れがいる場所に一度だけ網を投げ入れ、その網を引き上げることで、群れごとすべての魚を捕らえ尽くす様子を「一網打尽」と表現しました。
この、魚を一匹も逃さない徹底した捕獲の様子が、人間、特に犯罪者や敵の集団をまとめて捕らえる様子にたとえられるようになり、現在の意味で定着しました。
「一網打尽」の使い方と例文
警察が犯罪組織を検挙する場面や、戦いにおいて敵を一掃する場面など、特定の集団を「まとめて」「一回で」「全員」捕まえたり、処理したりする状況で使われます。
例文
- 「警察は長年の捜査の末、詐欺グループの拠点を突き止め、一網打尽に検挙した。」
- 「敵の主力部隊が集合したところを狙い、一網打尽にする作戦が立てられた。」
- 「今回のシステム導入で、社内に点在していた古いデータを一網打尽に整理することができた。」(比喩的用法)
類義語・関連語
- 一気呵成(いっきかせい):
物事を中断せず、一息に仕上げること。「一度にまとめて」という点で共通しますが、「一網打尽」が「捕獲」に重点があるのに対し、「一気呵成」は「作業の完了」に重点があります。 - 根こそぎ(ねこそぎ):
残らずすっかり。根っこから抜き取るように、徹底的に取り除くこと。「一網打尽」の「全員」という徹底性に通じます。 - 一挙検挙(いっきょけんきょ):
一度の行動で(一味を)検挙すること。「一網打尽」とほぼ同じ状況で使われる言葉です。
対義語
「一網打尽(一度に全員)」とは対照的に、「少しずつ」「逃してしまう」といった意味の言葉が対義語となります。
- 五月雨式(さみだれしき):
断続的に物事が行われること。一度にまとめてではなく、ポツポツと続く様子。 - 取り逃がす(とりにがす):
捕らえるべき対象を捕まえられずに逃してしまうこと。「一網打尽」が成功した状態なら、これは失敗した状態です。 - 逐次(ちくじ):
順を追って、次々と。少しずつ段階的に行うこと。
英語での類似表現
In one fell swoop
- 意味:「一挙に、一撃で」
- 解説:「all at once(すべて一度に)」や「in a single, decisive action(一回の決定的な行動で)」という意味です。「一網打尽」の「一気にまとめて」というニュアンスをよく表します。
- 例文:
The police raid caught the entire gang in one fell swoop.
(警察の手入れは、ギャング全体を一網打尽にした)
Make a clean sweep of…
- 意味:「〜を一掃する」
- 解説:「a clean sweep」は「(望ましくないものを)完全に取り除くこと」を意味します。「一網打尽」の「すべてを捕らえ尽くす」という徹底性、残らずきれいにするという結果を示します。
- 例文:
The operation was a clean sweep; no one escaped.
(作戦は一網打尽(完全一掃)だった。誰も逃げられなかった)
まとめ – 一網打尽から学ぶ知恵
「一網打尽」は、漁師が網ですべての魚を捕らえる様子から転じて、敵や犯罪者一味を残らず捕らえることを意味する四字熟語です。
この言葉は、物事を解決する際に、問題を部分的に残して後々の憂いとなることを避けるため、一度で徹底的に、効率よく処理することの重要性を示しています。計画を練り、適切なタイミングで実行することの威力を感じさせる言葉ですね。



コメント