ことわざ 慣用句

肉を切らせて骨を断つ

(にくをきらせてほねをたつ)

自分も犠牲を払い、相手に致命傷を与えて勝つこと。


12文字の言葉」から始まる言葉
肉を切らせて骨を断つ ことば
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意味

「肉を切らせて骨を断つ(にくをきらせてほねをたつ)」とは、自分も相応の痛手を受けることを覚悟して、相手に致命的な打撃を与えて勝つことを指します。

自分の被害を「肉」、つまり浅い傷の範囲に留め、その代わりに相手の「骨」、つまり急所を確実に砕いて決着をつける。
大きな目的を達成するためには、小さな犠牲を恐れないという「選択と集中」の知恵が込められています。

ただし、これは無謀な突撃や共倒れを意味するものではありません。冷静に状況を見極め、自分の損害を最小限に抑えながら、相手に最大の打撃を与える。そんな計算された戦略を表す言葉です。

語源・由来

「肉を切らせて骨を断つ」の由来は、日本の剣道や古武術の極意にあります。
真剣勝負において、強敵を無傷で倒すことは至難の業です。
守りに徹すればいずれ力尽きます。
そこで武芸者は、「自分の腕や肩の一枚を切らせる瞬間こそ、相手が最も無防備になる好機である」と考えました。
あえて自分から斬られにいくような極限の間合いに踏み込み、その一瞬にすべてを懸けて相手を斬り伏せる精神性が、この言葉として定着しました。

使い方・例文

「肉を切らせて骨を断つ」は、ビジネスの大きな商談から、趣味の対戦ゲーム、あるいは家庭内での心理戦まで、リスクを承知で大きなリターンを狙う場面で使われます。

例文

  • 将棋で飛車を捨てて勝利を掴む、まさに肉を切らせて骨を断つ一手だ。
  • 短期的な赤字を覚悟でシェアを奪いにいく、肉を切らせて骨を断つ戦略だ。
  • 肉を切らせて骨を断つつもりで、趣味の時間を削って試験勉強に集中する。

誤用・注意点

この言葉を使う上で最も注意すべきは、最終的な「勝利」が前提であるという点です。
自分も相手も再起不能になる「痛み分け」や、ただ単に損害を出しただけの失敗を指して使うのは誤りです。
また、感情に任せた復讐劇も、この言葉の持つ「冷静な戦略性」というニュアンスとは異なります。
あくまで、目的達成のための「計算された犠牲」がある場合に用いるのが適切です。

類義語・関連語

「肉を切らせて骨を断つ」と似た、覚悟や戦略を表す言葉には次のようなものがあります。

  • 身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ(みをすててこそうかぶせもあれ):
    命を捨てるほどの覚悟があってこそ、初めて窮地を脱して成功を掴めるということ。
  • 死中に活を求める(しちゅうにかつをもとめる):
    絶体絶命の状況の中で、捨て身の覚悟でわずかな生き残る道を切り開くこと。
  • 乾坤一擲(けんこんいってき):
    運命を賭けて、のるかそるかの大勝負をすること。
  • 捨て身(すてみ):
    自分の地位や命を顧みず、全力で物事にあたること。

対義語

「肉を切らせて骨を断つ」とは対照的な、慎重さや安全を重視する言葉は以下の通りです。

  • 無傷の勝利(むきずのしょうり):
    一点の犠牲も払うことなく、完璧に勝利を収めること。
  • 石橋を叩いて渡る(いしばしをたたいてわたる):
    非常に用心深く、確実なことしか行わない様子。
  • 君子危うきに近寄らず(くんしあやうきにちかよらず):
    教養のある者は、自ら危険な場所や争いごとに近づかないということ。

英語表現

「肉を切らせて骨を断つ」を英語で表現する場合、戦略的な取引や犠牲を意味するフレーズが適しています。

lose a battle to win the war

意味:戦争に勝つために、一つの戦いに負ける
解説:最終的な大きな勝利を得るために、目先の小さな敗北や犠牲を受け入れることを指します。

sacrifice a pawn

意味:ポーン(歩兵の駒)を犠牲にする
解説:チェスにおいて、より価値の高い駒を取ったり勝利を確定させたりするために、あえて自分の駒を差し出す戦術のことです。

I had to sacrifice a pawn to put his king in checkmate.
(王を詰ませるために、駒を犠牲にする必要があった。)

皮・肉・骨の三段階

この言葉には、さらに踏み込んだ「三段階」の表現が存在します。

皮を切らせて肉を断ち、肉を切らせて骨を断つ

本来は、「自分の皮を斬らせる間合いで相手の肉を削ぎ、肉を斬らせる間合いで相手の骨を断つ」という段階的な極意を指しています。

これは、自分が負うリスクが大きくなるほど、相手に与えるダメージも劇的に増大するという、武術における「対価」の冷徹な法則を説いたものです。

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