「肝(きも)」と「胆(たん)」は、どちらも内臓の名称ですが、古くから「度胸」や「勇気」の源泉、物事の「中心」を象徴する言葉として使われてきました。
一方、「腸(ちょう・はらわた)」は、激しい怒りや深い悲しみといった、抑えきれない感情を表すのに用いられます。
「肝を冷やす」「肝胆相照らす」「断腸の思い」など、現代でも日常的に使われる表現が豊富で、肝・胆・腸にまつわる言葉は人間の度胸や感情を巧みに表現しています。
ここでは、「肝」「胆」「腸」に関連する、主な言葉を紹介します。
「肝・胆・腸」に関する慣用句
肝・胆に関する表現
度胸・胆力
- 肝が据わる / 胆が据わる(きもがすわる / たんがすわる):
度胸があり、物事に動じない落ち着いた気性。古来「肝」は精神の宿る場所とされ、それがどっしり定まった状態を表す言い方。 - 肝っ玉が太い(きもったまがふとい):
些細なことでは動じず、度胸があるさま。「肝っ玉」は精神の器を玉にたとえた言葉で、その玉が大きく太いほど豪胆とされる。 - 胆を練る(たんをねる):
厳しい経験を重ねて、精神を鍛え度胸をつけること。金属を打って鍛える「鍛練」のように、胆力を磨き上げる過程にたとえた言葉。 - 胆力がある(たんりょくがある):
困難な事態に直面しても慌てず、冷静に判断し行動できる精神力。「胆」は決断を司る器官と考えられてきたことに由来する。 - 肝試し(きもだめし):
恐ろしい場所へあえて出向き、度胸を試すこと。江戸時代には百物語やお化け屋敷が流行し、庶民の娯楽としても親しまれた。
驚き・恐怖
- 肝を冷やす(きもをひやす):
非常に驚いたり、恐ろしい思いをしたりすること。肝は感情の宿る場所とされ、それが冷える感覚に恐怖を重ねた古くからの表現。 - 肝が潰れる / 胆を潰す(きもがつぶれる / たんをつぶす):
非常に驚き、動揺すること。古くから勇気や元気の源とされてきた肝が、押しつぶれるほどの衝撃を受けたさまにたとえた言い方。 - 肝を抜かれる(きもをぬかれる):
非常に驚き、我を失うほどの衝撃を受けること。「度」は程度を強める接頭語で、精神の核である「肝」を抜き取られる意から生まれた。 - 胆を落とす(たんをおとす):
ひどく驚き、気力までもが抜けてしまうこと。度胸や気力の源とされる胆が、身体から抜け落ちるほどの衝撃を表した言葉。
記憶・決意
- 肝に銘じる(きもにめいじる):
心に深く刻みつけて、決して忘れないこと。「銘じる」は石や金属に文字を刻む意で、それほど強く心に刻みつける覚悟のたとえ。
腸に関する表現
- 腸が煮えくり返る(はらわたがにえくりかえる):
怒りが激しく、腹の底から煮え立つように感じること。古代中国の五行思想で、怒りの感情は内臓の状態と結びつくと考えられていた。 - 腸がちぎれる(思い)(はらわたがちぎれる(おもい)):
はらわたがちぎれるほどの、耐えがたい悲しみやつらさ。激しい感情の痛みを、内臓が引き裂かれる感覚にたとえた言い方。
その他の内臓表現
- 五臓六腑に染み渡る(ごぞうろっぷにしみわたる):
体中に染み渡るほど、飲食物が深くしみじみとおいしいこと。漢方医学でいう内臓全体を指す言葉を借りた、江戸期からの言い回し。
「肝・胆・腸」に関する四字熟語
- 肝胆相照らす(かんたんあいてらす):
互いに心の奥底まで打ち明け合い、親しく付き合うこと。肝と胆はどちらも生命に関わる大切な臓器であることから、真心の象徴とされる。 - 肝心要(かんじんかなめ):
最も重要で、中心となる事柄を指す言葉。「肝心」に、扇の骨をまとめる要の意を重ねて、大切さをいっそう強調した言い方。 - 大胆不敵(だいたんふてき):
度胸があり、何ものも恐れないこと。「大胆」は肝っ玉が大きい意、「不敵」は相手を対等な敵とすら見ない意から成る言葉。 - 驚天動地(きょうてんどうち):
天を驚かし地を動かすほど、世間を大きく驚かせること。中国唐代の詩人・白居易が、李白の才能を称えた詩の表現に由来するという。
「肝・胆・腸」に関する故事成語
- 断腸の思い(だんちょうのおもい):
(『世説新語』より)腸(はらわた)がちぎれるほどの、非常につらく悲しい思い。 - 臥薪嘗胆(がしんしょうたん):
(『史記』などより)将来の成功(特に復讐)のために、苦労を耐え忍ぶこと。(「薪(たきぎ)の上で寝て、苦い胆(きも)を嘗(な)める」意)
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