「みんなで仲良く協力し合うこと」。
学校や職場、地域社会など、人が集まる場所では、しばしばこの「和」の大切さが語られます。
この考え方を象徴する有名な言葉が「和を以て貴しとなす」です。
「和を以て貴しとなす」の意味・教訓
この言葉は、「人々が互いに協調し、仲良くすることが、最も尊いことである」という意味です。
単に表面的な仲の良さを指すのではなく、異なる意見を持つ人々がしっかりと議論を交わした上で、最終的に調和・協力していくことの重要性を説いています。
争いを避け、互いを尊重し合う精神が、社会や組織にとって基本であるという教訓が込められています。
「和を以て貴しとなす」の語源
この言葉は、飛鳥時代の皇族であり政治家でもある聖徳太子(厩戸皇子 うまやどのおうじ)が定めたとされる「十七条憲法(じゅうしちじょうけんぽう)」の第一条の冒頭に出てくる一節です。
604年に制定されたこの憲法は、役人たちが守るべき道徳的な規範を示したもので、その一番最初に「和」の重要性を掲げました。
当時の日本が、豪族間の対立などを乗り越え、国家としてまとまっていくために、協調の精神がいかに重要視されていたかがうかがえます。
「和を以て貴しとなす」が使われる場面と例文
現代でも、組織やチームの団結、人間関係の円滑化、争いごとの平和的な解決などを促す場面で広く使われます。
会議での心構えとして、あるいは対立が生じた際の戒めとして引用されることも多い言葉です。
例文
- 社長は朝礼で、「和を以て貴しとなすの精神で、部署間の連携を強化してほしい」と語った。
- 意見が対立することはあっても、最終的には「和を以て貴しとなす」の心で着地点を見つけるべきだ。
- 地域のお祭り準備では、世代間の考え方の違いを乗り越え、「和を以て貴しとなす」の精神で協力し合った。
「和を以て貴しとなす」の類義語・言い換え表現
- 協心戮力(きょうしんりくりょく):心を一つにして、力を合わせて物事に取り組むこと。目標達成に向けた協力を強調。
- 一致団結:多くの人々が共通の目的のために一つにまとまること。
- 協力一致:互いに協力し、考えや行動が一つになること。
- 相互扶助(そうごふじょ):互いに助け合うこと。特に、生活や経済面での助け合いを指すことが多い。
- チームワーク:集団のメンバーが共通の目標達成のために協力して行動すること。
「和を以て貴しとなす」の対義語
- 対立反目(たいりつはんもく):互いに敵対し、にらみ合うこと。
※「和」とは正反対の、不和や敵対関係を示す。 - 四分五裂(しぶんごれつ):秩序がなくなり、ばらばらに分裂してしまうこと。
※まとまりがなく、協調性が失われた状態を表す。 - 孤立無援(こりつむえん):仲間がなく、助けてくれる人もいないこと。
※協調とは逆の、他者との関係が断絶した状態。
「和を以て貴しとなす」の英語での類似表現
- Harmony should be valued. / Value harmony.
意味:和(調和)は尊重されるべきである。
※直訳に近い表現です。 - Concord is preferable to discord.
意味:不和よりも一致(調和)が好ましい。
※協調や一致を重視するニュアンスが伝わります。 - Unity is strength.
意味:団結は力なり。
※協調することで大きな力が生まれることを示すことわざ。結果としての「力」に焦点があります。
「和を以て貴しとなす」に関する豆知識
十七条憲法の第一条は「和を以て貴しとなし、忤ふこと無きを宗とせよ」と続きます。
これは、「和を大切にし、道理に逆らわないことを根本としなさい」という意味です。
ただし、続く文脈では、上の者が偏った考えを持たず、下の者も不満があればしっかり意見を言うべきであり、議論を尽くした上で合意に至ることの重要性も説かれています。
単なる「事なかれ主義」ではなく、建設的な議論を経た上での「和」を理想としている点が重要です。
まとめ – 「和を以て貴しとなす」から学ぶ現代の知恵
「和を以て貴しとなす」は、聖徳太子が十七条憲法の最初に掲げた、協調と調和の重要性を説く言葉です。
単に仲良くするだけでなく、異なる意見も尊重し、議論を通じて合意形成を目指すことの大切さを示唆しています。
多様な価値観が共存する現代社会において、この精神は、組織運営や人間関係構築、さらには国際社会に至るまで、あらゆる場面で求められる普遍的な理念と言えるでしょう。
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