意味


「欲の熊鷹股裂ける」とは、欲深くいっぺんに二つのことをしようとして、かえって災難にあうことのたとえです。
猛禽類の中でも特に力が強いとされる「熊鷹」でさえ、無理な体勢をとれば体が裂けてしまうという描写から、身の丈を超えた強欲さは破滅を招くという教訓を表しています。
- 欲(よく):あれもこれも欲しいと思う心。
- 熊鷹(くまたか):タカ科の大型の鳥。日本国内の森林生態系では最強の猛禽類とされる。
- 股裂ける(またさける):両足が左右に大きく開いて、股の間が裂けること。
語源・由来
「欲の熊鷹股裂ける」の由来は、古くから伝わる民話や、江戸時代の俳諧書『毛吹草』などに見られる逸話です。
あるとき、一羽のクマタカが二頭のイノシシを同時に見つけました。
欲張った熊鷹は、右足で一頭、左足でもう一頭を同時に掴みましたが、二頭のイノシシはそれぞれ反対方向へ逃げ出しました。
熊鷹はそれでも獲物を放そうとせず、無理に掴み続けたため、ついには股が裂けて死んでしまったといいます。このことから、自分の能力を超えて複数を求める愚かさを戒める言葉となりました。
使い方・例文
「欲の熊鷹股裂ける」は、ビジネスでの多角経営の失敗や、日常生活での過度な欲張りなど、何かを狙って「自滅」した場面で使われます。
例文
- 株と不動産の両方で儲けようとして、借金だけが残った。欲の熊鷹股裂けるだ。
- 欲の熊鷹股裂けるだ。二つを中途半端にせず、まず一つを確実に成功させよう。
- 限定品を二つとも狙って列を往復し、どちらも売り切れた。欲の熊鷹股裂けるだ。
誤用・注意点
この言葉は、欲深さが招いた「愚かな失敗」をあざ笑う、あるいは強く戒める言葉です。
- 褒め言葉ではない:
「熊鷹」という勇ましい名前が入っていますが、「チャレンジ精神がある」といった肯定的な意味では使えません。 - 目上の人への使用:
相手の失敗に対して使うと、「欲張ったから自滅したのだ」という強い批判になるため、目上の人には使わないのが無難です。
類義語・関連語
「欲の熊鷹股裂ける」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 二兎を追う者は一兎をも得ず(にとをおうものはいっとをもえず):
二羽のウサギを同時に捕まえようとすると、結局一羽も捕まえられないこと。最も一般的な類語です。 - 虻蜂取らず(あぶはちとらず):
アブとハチの両方を捕まえようとして、どちらも取り逃がすこと。 - 花も折らず実も取らず(はなもおらずみもとらず):
両方を欲張った結果、どちらも得られないこと。
対義語
「欲の熊鷹股裂ける」とは対照的な意味を持つ言葉は、以下の通りです。
- 一石二鳥(いっせきにちょう):
一つの行為で二つの利益を得ること。結果が成功した場合に使われます。 - 無欲恬淡(むよくてんたん):
欲張らず、あっさりとしていて物に執着しないさま。
英語表現
「欲の熊鷹股裂ける」を英語で表現する場合、欲張ることの損失を説くフレーズが適しています。
Grasp all, lose all
「すべてを掴もうとすれば、すべてを失う」という意味を表す表現で、日本のことわざと非常に近いニュアンスで過度な欲が損失を招くことを端的に表す。
Don’t try to control every market. Grasp all, lose all.
(すべての市場を支配しようとするな。欲張るとすべてを失うぞ。)
同じ戒めが「爪」にも「股」にも言い換えられてきた
この句には、いくつかの似た言い回しが伝わっています。「欲深き鷹は爪の裂くるを知らず」「欲する鷹は爪落とす」「欲を引っ張れば股裂ける」などです。
壊れる場所は股だったり爪だったりと一定していませんが、共通しているのは、獲物をつかむための道具そのものが壊れるという構図です。欲が深いと、他人にではなく自分の一番の武器を失う、という組み立てになっています。










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