意味
「天は二物を与えず(てんはにぶつをあたえず)」とは、誰か一人がいくつもの長所や幸運を独り占めすることはないという意味です。
「天」は運命や自然の摂理のことです。
天は一人の人間に、「美貌」と「才能」、「富」と「健康」のような誰もが羨む長所を、二つも三つも与えはしない、ということです。
語源・由来
「二物」は文字どおりには二つのものですが、この言葉では二つに限らず、いくつもの長所や才能を指します。
使い方・例文
「天は二物を与えず」は、誰かの優れた才能を称えつつ、その意外な欠点を見つけた際や、自分自身の不完全さを前向きに受け入れる場面で使われます。
- 彼女は歌声は素晴らしいがひどい運動音痴だ。天は二物を与えずだな。
- 兄は勉強も運動もできるが実は方向音痴だ。天は二物を与えずと家族で笑う。
- 成績優秀な彼が意外にも字が下手なのを見て、天は二物を与えずだと妙に納得した。
誤用・注意点
「天は二物を与えず」は、他人の欠点を指摘する文脈で使うと、皮肉や悪口と取られることがあります。
「彼女は美人だが、天は二物を与えずで頭の方は……」といった使い方は、相手をおとしめる言い方になるので、避けたほうがよいでしょう。
使うのは、「完璧な人はいない」と納得するときや、優れた人に親しみを覚えたとき、自分の苦手を認めて自分を励ますときです。
類義語・関連語
「天は二物を与えず」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 一得一失(いっとくいっしつ):
何かを得れば、必ず何かを失うということ。 - 虻蜂取らず(あぶはちとらず):
二つのものを欲張って得ようとし、結局どちらも失敗すること。 - 一長一短(いっちょういったん):
長所もあるが、同時に短所もあるということ。
対義語
「天は二物を与えず」とは対照的な意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 才色兼備(さいしょくけんび):
優れた才能と美しい容姿の両方を兼ね備えていること。 - 多芸多才(たげいたさい):
多くの才能を持ち、さまざまな技芸に優れていること。 - 鬼に金棒(おににかなぼう):
強い者がさらに強い味方や武器を得て、無敵になること。
「天は二物を与えず」の「は」の無い形と『戯作三昧』
「は」を入れない「天二物を与えず」という形もあり、芥川龍之介の『戯作三昧』(1917年)には「天二物を与へずとは、よく申したものでございます」という台詞があります。
銭湯で馬琴が歌や発句は「性に合はない」と言ったのを、近江屋平吉が言葉どおりに受け取って口にした台詞です。
馬琴は謙遜のつもりの言葉をそのまま受け取られたことが不満で、苦い顔をします。











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