テレビのお笑い番組や友人の失敗談を聞いて、お腹がよじれるほど笑い転げた経験。息ができなくなるほど笑い、涙まで出てきてしまうような、そんな最高に楽しい瞬間を表す言葉が「抱腹絶倒」(ほうふくぜっとう)です。
日常会話から書籍の紹介文まで、爆発的な笑いを表現する際によく使われるこの言葉。単に「面白い」と言うよりも、その場の熱気や激しさを生き生きと伝えることができます。
意味
「抱腹絶倒」とは、腹をかかえて、ひっくり返るほど大笑いすることです。
あまりのおかしさに立っていられなくなり、お腹を押さえて転げ回るような激しい笑いの様子を指します。
この四字熟語は、動作を表す2つの言葉が組み合わさってできています。
- 抱腹(ほうふく):おかしくてたまらず、お腹を両手でかかえること。
- 絶倒(ぜっとう):激しく笑って、転げ倒れること。気絶して倒れることではありません。
つまり、「お腹を抱える動作」と「倒れ込む動作」がセットになった、全身を使った大笑いを表現しています。
語源・由来
「抱腹絶倒」の語源は、古代中国の歴史書や古典にさかのぼります。
本来、この言葉は「捧腹絶倒」と書くのが正式でした。
「抱腹(捧腹)」という言葉は、中国の歴史書『史記』の日者列伝(にっしゃれつでん)に登場します。
昔、司馬季主(しばきしゅ)という賢者が、あるにせの占い師たちの愚かな様子を見て、「腹を捧(かか)えて大笑いした」という記述があります。
一方の「絶倒」も、『書経』などの古典に見られる言葉で、あまりに笑いすぎて倒れてしまう様子を表します。
これら2つの言葉が組み合わさり、現在ではより一般的な漢字である「抱」を使った「抱腹絶倒」として定着しました。
そのため、「捧腹絶倒」と書いても間違いではなく、むしろこちらが本来の形です。
使い方・例文
「抱腹絶倒」は、単に「面白い」というレベルを超えて、
「呼吸困難になるほど笑った」
「腹筋が痛くなるほど笑った」
という最大級の笑いを伝えたいときに使われます。
友人同士の会話はもちろん、コメディ映画や小説のキャッチコピー(宣伝文句)としても非常に重宝される言葉です。
例文
- 昨夜のバラエティ番組は、出演者の掛け合いが最高でまさに「抱腹絶倒」だった。
- 彼の話術は巧みで、会場中が「抱腹絶倒」の渦に巻き込まれた。
- 高校時代の修学旅行での出来事は、今思い出しても「抱腹絶倒」の騒ぎだ。
書評やメディアでの使用例
この言葉は、コメディ作品の面白さを保証する「売り文句」として、多くの書評や紹介文で使われてきました。
明治時代の評論家、内田魯庵の『社会百面相』には、以下のような一節があります。
「まだまだ捧腹絶倒な話がある」
また、現代でも東野圭吾のエッセイ集や、森見登美彦の小説などが紹介される際、「抱腹絶倒のコメディ」「抱腹絶倒の青春小説」といった表現が頻繁に用いられています。
読者に対して「間違いなく笑える作品である」と太鼓判を押す際に、最も効果的なフレーズの一つと言えるでしょう。
誤用・注意点
誤変換に注意
パソコンやスマホで変換する際、「報復絶倒」としてしまうミスが多く見られます。
「報復」では「仕返し」という意味になり、非常に物騒な言葉になってしまいます。必ず「腹を抱える」の「抱腹」であることを確認しましょう。
使う相手と場所
基本的にはポジティブな意味で使われますが、厳粛な式典や、真面目な会議の場で使うと「ふざけている」と捉えられる可能性があります。あくまで「笑っても良い場」での使用に留めるのが無難です。
類義語・関連語
「抱腹絶倒」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 捧腹絶倒(ほうふくぜっとう):
「抱腹絶倒」の本来の表記。意味は全く同じです。 - 呵呵大笑(かかたいしょう):
口を大きく開けて、高笑いすること。「呵呵」は笑う声の形容です。 - 破顔一笑(はがんいっしょう):
顔をほころばせて笑うこと。こちらは大笑いというより、にっこりと笑う穏やかなニュアンスが含まれます。 - へそで茶を沸かす(へそでちゃをわかす):
おかしくてたまらないことの例え。ただし、「バカバカしくて笑ってしまう」という嘲笑のニュアンスが含まれる場合があるため、使い分けが必要です。
対義語
「抱腹絶倒」とは対照的な意味を持つ言葉は、以下の通りです。
- 意気消沈(いきしょうちん):
元気がなくなり、しょげ返ってしまうこと。 - 悲憤慷慨(ひふんこうがい):
運命や世の中の理不尽さを悲しみ、憤って嘆くこと。 - 仏頂面(ぶっちょうづら):
不機嫌で、少しも笑わない無愛想な顔つきのこと。
英語表現
「抱腹絶倒」を英語で表現する場合、動作を具体的に描写するフレーズがよく使われます。
rolling on the floor laughing
- 直訳:床を転げ回って笑う
- 意味:「大爆笑する」
- 解説:インターネットスラングの「ROFL」の元になった表現です。文字通り、立っていられないほど笑う様子を表します。
- 例文:
The joke was so funny that I was rolling on the floor laughing.
(その冗談があまりにおかしくて、私は抱腹絶倒した。)
sidesplitting
- 直訳:脇腹が裂けるほどの
- 意味:「腹の皮がよじれるほどおかしい」
- 解説:”split one’s sides”(脇腹が裂ける)というイディオムから来ており、日本語の「腹を抱える」「腹がよじれる」と非常に近い感覚の言葉です。
- 例文:
It was a sidesplitting comedy.
(それは抱腹絶倒のコメディだった。)
漢字の豆知識
「抱腹」の本来の字である「捧」という漢字。
「捧げる(ささげる)」と読むのが一般的ですが、この熟語においては「両手で大切にかかえ持つ」という意味で使われています。
お腹を神様に捧げているわけではなく、笑いすぎて痛くなったお腹を「落とさないように両手で支えている」とイメージすると、その滑稽な必死さがより伝わってくるのではないでしょうか。
笑いは健康に良いと言われますが、お腹を抱えるほどの笑いは、まさに全身運動と言えるかもしれません。
まとめ
「抱腹絶倒」は、立っていられないほどの激しい大笑いを表す、エネルギーに満ちた言葉です。
単に「面白い」と伝えるだけでは物足りないとき、この言葉を使えば、その場の熱狂や楽しさを相手に鮮明にイメージさせることができるでしょう。ユーモアのある会話や、最高に楽しい時間を共有した際の感想として、ぜひ活用してみてください。






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