意味
「親しき仲にも礼儀あり(したしきなかにもれいぎあり)」とは、非常に親密な間柄であっても、守るべき最低限の礼儀や節度があるという意味です。
「仲」は「中」とも書きます。
遠慮がなくなるほど親しい関係になると、相手への配慮が欠けたり、プライバシーに踏み込みすぎたりしがちです。
しかし、良好な関係を長く続けるためには、相手を一人の独立した人間として尊重し、礼儀をわきまえた態度で接することが不可欠であるという教訓を含んでいます。
語源・由来
「親しき仲にも礼儀あり」は中国の故事のようにも聞こえますが、日本で生まれたことわざとみられます。
古くは「親しき仲に礼あり」の形で、安土桃山時代のことわざ集に収められています。
今の「親しき仲にも礼儀あり」の形は、古典落語の『二十四孝』(= 中国の親孝行の手本24話を題材にした噺)に出てくる程度で、古い言い方ではないようです。
中国の古典『荘子』にも、似た考え方があります。
「君子の交わりは淡きこと水の如し」という言葉で、優れた人物同士の付き合いは水のようにさっぱりとしているからこそ長続きする、という意味です。
使い方・例文
相手との親密さに甘えて、失礼な振る舞いをしそうになった時や、実際にトラブルになりそうな場面での戒めとして使われます。
例文
- 親友だからと借りた本を返しそびれていたが、親しき仲にも礼儀あり、約束の日までに返そう。
- 夫婦とはいえ、相手宛ての手紙を勝手に開けてはいけない。親しき仲にも礼儀ありだ。
- 幼なじみの家でも、連絡なしに夜中に押しかけるのはやめよう。親しき仲にも礼儀ありだ。
誤用・注意点
この言葉における「礼儀」とは、儀式のような堅苦しい作法ではなく、相手を不快にさせないための「節度」や「マナー」を指します。
そのため、親友に対して常に敬語を使ったり、過度に距離を置いたりすることを推奨するものではありません。
あまりに形式にこだわりすぎると、かえって他人行儀で冷たい印象を与えてしまうため、相手との関係性に合わせた「親しみの中のけじめ」を見極めることが重要です。
類義語・関連語
「親しき仲にも礼儀あり」と似た意味を持つ言葉には、境界線や距離感の大切さを説く次のようなものがあります。
- 親しき仲に垣をせよ(したしきなかにかきをせよ):
親しい間柄でも、互いのプライバシーや領域を尊重し、踏み込みすぎないようにせよという教え。 - 心安いは不和の基(こころやすいはふわのもと):
気安くなりすぎて遠慮を忘れると、それが仲たがいのもとになるということ。
対義語
「親しき仲にも礼儀あり」とは対照的に、形式を抜きにする場面や、配慮が欠けた状態を指す言葉には、次のようなものがあります。
- 無礼講(ぶれいこう):
身分や立場を気にせず、形式を抜きにして楽しむ宴会のこと。 - 無遠慮(ぶえんりょ):
相手への配慮がなく、慎みのない態度や振る舞い。
英語表現
「親しき仲にも礼儀あり」を英語で表現する場合、境界線の重要性や、親しみがもたらす弊害に着目した表現が選ばれます。
Good fences make good neighbors
「良いフェンスが良い隣人を作る」
適切な境界線があるからこそ、隣人(身近な人)との関係が円滑に保たれるという意味です。
We respect each other’s privacy. Good fences make good neighbors, after all.
(私たちは互いのプライバシーを尊重している。結局、親しき仲にも礼儀ありだ。)
Familiarity breeds contempt
「親しすぎると軽蔑が生まれる」
あまりに慣れ親しみすぎると、相手への敬意を失い、軽んじるようになるという意味です。
Don’t take your friends for granted. Remember, familiarity breeds contempt.
(友人に甘えすぎてはいけない。親しき仲にも礼儀あり、だよ。)
「礼儀」でなく「垣」と言う形も
このことわざには、「礼儀」の代わりに「垣」を使う言い方がいくつもあります。
「親しき仲に垣をせよ」「思う仲に垣を結え」などで、どれも明治より前から使われてきた形です。
隣の家との境に作る垣根を、親しい人との間にも設けよというたとえです。
生け垣や竹垣なら境を作っても向こうが透けて見えるので、つながりを保ったまま一線を引く、とも読めます。

(写真:サフィル、Wikimedia Commons/CC BY-SA 4.0)
明治時代のかるたには、「親しき仲にも垣をせよ」という札もあります。
英語の「Good fences make good neighbors(よい垣根がよい隣人をつくる)」も垣根の話ですが、こちらは文字どおり隣人との境のことで、親しい相手との間にまで垣を求めているわけではありません。















コメント
己に克ちて礼にかえるを仁となす。孔子。礼は忠信の薄にして乱の首なり。と老子にはいう