触らぬ神に祟りなし

スポンサーリンク
ことわざ 慣用句
触らぬ神に祟りなし
(さわらぬかみにたたりなし)

12文字の言葉さ・ざ」から始まる言葉
触らぬ神に祟りなし 【個別】ことわざ・慣用句・四字熟語

近所づきあいや親戚の集まり、あるいは友人同士の会話の中で、ふと不穏な空気を感じ取ることがあります。
何かに深入りすれば、自分までトラブルに巻き込まれてしまうかもしれない。
そんな予感がしたとき、あえて距離を置いて静観するのは賢明な判断の一つです。
余計な手出しをして災いを受けるのを避ける。
こうした処世術を、「触らぬ神に祟りなし」(さわらぬかみにたたりなし)と言います。

意味・教訓

「触らぬ神に祟りなし」とは、その物事に関わり合いさえ持たなければ、余計な災いを招くことはないという意味です。

自分にとって面倒なことや、手に負えないような厄介な存在には、最初から近づかないのが一番であるという教訓が含まれています。

「祟り(たたり)」とは、神仏や霊魂などが人間に災いを与えることを指します。
本来は敬うべき対象であっても、中途半端に触れたり無礼を働いたりすれば恐ろしい報いがあることから、転じて「厄介なものには手を出さないのが無難だ」という今の意味で使われるようになりました。

語源・由来

「触らぬ神に祟りなし」の由来は、古くからの日本人の信仰心に基づいています。

かつて人々は、神様を慈悲深い存在として敬う一方で、粗相(そそう)があれば恐ろしい災いをもたらす荒々しい存在としても畏(おそ)れていました。
神聖な場所や祠(ほこら)に無闇に近づいたり、不作法に扱ったりすれば、その怒りに触れて病気や天災といった「祟り」を被ると信じられていたのです。

敬して遠ざける」という言葉があるように、信仰心があっても下手に干渉せず、そっとしておくことが身を守る知恵でした。
この「神様の領域を侵さなければ不幸は起きない」という考え方が、江戸時代には庶民の間で生活の知恵として定着しました。
『江戸いろはかるた』の読み札の一つに採用されたことで、日本中に広く知れ渡る言葉となったのです。

使い方・例文

「触らぬ神に祟りなし」は、波風を立てたくない場面や、リスクを回避したい心理を表現する際によく用いられます。
主に日常生活での人間関係や、組織内での立ち振る舞いにおいて使われます。

例文

  • 隣の家から怒鳴り声が聞こえてきたが、「触らぬ神に祟りなし」と考えて関わらないことにした。
  • クラスで一番の気難しい先生が機嫌を損ねている時は、「触らぬ神に祟りなし」で遠くから見守るのが一番だ。
  • 「あのグループの揉め事に首を突っ込むのはやめなよ。触らぬ神に祟りなしと言うじゃないか」

誤用・注意点

「触らぬ神に祟りなし」を使う際には、いくつか注意すべき点があります。

まず、この言葉は「面倒なことから逃げる」という消極的なニュアンスを含むため、使う相手や場面を選びます。
例えば、困っている人を助けるべき場面や、自分の責任が問われる仕事の場面でこれを使うと、「無責任だ」「冷淡だ」という印象を与えかねません。

また、対象を「祟りをもたらす神」に例えているため、目上の人や尊敬すべき人物に対して直接使うのは非常に失礼にあたります。
あくまで第三者の立場から状況を判断する際や、自分自身の振る舞いを律する際の言葉として留めるのが適切です。

類義語・関連語

「触らぬ神に祟りなし」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 君子危うきに近寄らず(くんしあやうきにちかよらず):
    教養があり徳の高い人は、自分の行動を慎んで、危険な場所や事態には近づかないということ。
  • 藪をつついて蛇を出す(やぶをつついてへびをだす):
    余計なことをしたせいで、かえって悪い結果を招いてしまうこと。
  • 寝た子を起こす(ねたこをおこす):
    せっかく収まっている物事に余計な手出しをして、再び問題を蒸し返してしまうこと。

対義語

「触らぬ神に祟りなし」とは対照的な意味を持つ言葉は、以下の通りです。

  • 虎穴に入らずんば虎子を得ず(こけつにいらずんばこじをえず):
    危険を冒さなければ、大きな成果を得ることはできないということ。
  • 当たって砕けろ(あたってくだけろ):
    結果がどうなるか分からなくても、成功を信じて思い切ってやってみよということ。

英語表現

「触らぬ神に祟りなし」を英語で表現する場合、以下の言い回しが一般的です。

Let sleeping dogs lie.

  • 意味:「寝ている犬は寝かせておけ」
  • 解説:眠っている犬をわざわざ起こして噛まれるような愚を犯すべきではない、というイギリスの古いことわざです。日本語のニュアンスに最も近い表現です。
  • 例文:
    I know you want to ask him about the mistake, but it’s better to let sleeping dogs lie.
    (彼にミスのことを聞きたいのはわかるけど、触らぬ神に祟りなし、そっとしておいたほうがいいよ。)

知っておきたい豆知識

「触らぬ神に祟りなし」という言葉を聞くと、どこか冷たい処世術のように感じるかもしれません。
しかし、この言葉の背景には、古来から続く「境界線」を重んじる日本文化の知恵が隠れています。

古来、日本人は村境や山の入り口など、日常と非日常(神の領域)の境目に強い意識を持っていました。
その境界を越えるには覚悟が必要であり、中途半端な気持ちで踏み込むことは自分にとっても、また相手にとっても良くないことだと考えられていたのです。

現代の人間関係においても、相手のプライバシーや守るべき領域に土足で踏み込まないことは、円滑なコミュニケーションを保つための大切なマナーです。
「触らぬ神に祟りなし」は、単なる逃げの言葉ではなく、お互いの領域を尊重し合うための、一歩引いた「礼儀」の一種であると言えるかもしれません。

まとめ

「触らぬ神に祟りなし」という言葉は、私たちの生活において、冷静にリスクを判断し、自分を守るための指針となります。
何でも首を突っ込むことが必ずしも正解ではなく、時には静かに見守る勇気も必要です。

もちろん、大切な局面で逃げ腰になるのは考えものですが、自分にはどうしようもないトラブルを予見したとき、この言葉を思い出すことで、余計な摩擦を避け、穏やかな日常を守ることができるようになることでしょう。

スポンサーリンク

コメント